第2話 いざ!GUILD委託調査員説明会へ

GUILD委託調査員募集のページには、先ほどのアイドルが白銀に輝く鎧に身を包み吹き出しには「あなたの力を貸してください」などと書いてある。

「募集要項」と書かれた部分をタップすると、様々な福利厚生の説明や報酬について、ダンジョン内でのケガや病気、死亡については保険が効かない事など、読めば読むほど不安になるような事ばかりが書かれていた。


「委託とはいえ、社員は社員・・・これで陽乃が納得してくれれば良いけど・・・」


GUILD委託調査員募集のページを読みながら悠生はつぶやいた。


「もう残された時間は1か月、この時期にまだ募集をしているような会社なんかどうせブラックだろうし、一攫千金を夢見ても良いよな」


そして、悠生は募集ページの必要事項を埋めると、最後に「応募」のボタンをタップするのであった。


応募した次の日には「GUILD委託調査員説明会」の案内メールが届いていた。

案内メールには、会場の場所や応募者番号、当日持参する書類などについて事細かに説明されており、日時は今週末となっている。

説明会は午前10時からはじまり、終了予定時間は、なんと夕方5時!ほぼ一日消化されてしまう計算である。

お昼ご飯は支給されるようだけど、さすがに1日かけて説明会をするなんて会社は聞いたことが無い。


「おいおいマジかよ・・・完全に1日仕事じゃないか、まあ申し込んじゃった以上は行かないって選択しは無いにしろ・・・」

悠生は相変わらず独り言を言いながら、案内メールを読み進めると、メールの最後に少しだけ気持ちを軽くしてくれる一言を見つけた。


「おおおお、”説明会参加者には日当1万円を支給します” だって? さすが一流企業は太っ腹だな!」

先程の独り言とは打って変わった陽気な声でその一文を読み上げる。まあ独り言には変わらないのだが。


GUILD委託調査員説明会当日

朝の10時に指定された会場である元新宿都庁前のGUILD本社前に悠生の姿があった。

肩に背負ったリュックには、必要書類と書かれていた履歴書や直近3カ月以内の健康診断書、筆記用具などが入っており、特技などを披露できる人は必要な道具と書かれていたので、竹刀を一本背負ってきた。

悠生は小学校1年の頃から、目を見張るような戦績は無いものの、先日大学を卒業するまで15年以上も剣道をやっていたからである。


「たいした戦果も無いけど、俺にはこれしか自慢できる事も無いし」

と、相変わらずの独り言を漏らしつつ、GUILD本社へと入っていく。

GUILD本社はビルのほぼ全面がガラス張りになっており、入り口の自動ドアを抜けると3階まで吹き抜けの開放的な受付フロアとなっていた。


受付を見ると、「説明会へご参加の方は、こちらで受付をお願いします」との張り紙があり、さすが一流企業と言わんばかりに魅力的な容姿の受付嬢が3人並んでいた。

2人は他の参加者の対応をしていたため、空いていた真ん中の受付嬢へ近づくと、メールで届いた参加証のQRコードを差し出した。


「すいません、今日の説明会へ参加予定なのですが」

悠生が、スマホを操作しつつ近づくと

「はい、ご来場ありがとうございます!QRコードを読み取りさせていただきますね。」

と、満面の営業スマイルで元気に返事が返ってきた。

胸に付けた社員証を見ると、「柊風音」と書いてある。

「確認できましたので、先行書類はこちらで受け取らせていただきます」

悠生はリュックからクリアファイルにまとめた書類を手渡すと

「内容を確認させていただきますので、少々お待ちください」


書類も渡して、手持無沙汰になった悠生は、何となく柊風音ひいらぎかざねの観察を始めた。

身長は165㎝くらいだろうか、太っても無く痩せすぎてもなく、ちょうどいい体型とはこういうものであろうと思われる体型で、いわゆる出るところは出ていると思える。

少しタイトなスカートからはストッキングに包まれた健康的な足が伸びている。

制服は近未来的なデザインで全体的にタイトに作られており、体の線がかなり目立つ気がする。

胸は陽乃より大きいように思える。

などと胸を凝視していると


「あー、女の子はそういう視線には敏感ですよ?」

と言われた。


気づかれていたようである・・・


「いや、けっしてそういう意味では・・・」

と、弁解めいた事を言いかけると

「やっぱり見てたんですね」

と、半笑いで返された。


「はい、必要書類は確認できましたので、後ろの階段から2階へ行っていただき、正面の大会議室へお願いします、それとこちらは入館証兼、身分証明書になりますので、無くさない様にしてください。」

入館証を受け取り、首から下げると

「帰りにこちらへお寄りいただき返却をお願いします」

と、告げられた。


見ていたことに気づかれたやましさから、挙動不審になりつつも

「ありがとうございます」

とだけ、告げて立ち去ろうとしたところ

「ご武運を」と言われた。


悠生は「ただの説明会にご武運をもなにも」と心の中で思いつつ、案内された通り階段を使い2階の大会議室へと向かった。


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