第3話 自分の身体って、あんまり見ないよね
「ふぅ・・・・・・やっと泣き止んだ」
そう言う彼女ーー栞はほっとした表情でそう言った。
「ご、ごめん」
俺は目を掻きながら、目の前の推しに謝る。
いやー。本当に申し訳なか〜。
あと、夢をありがとうよ!
「もう、いきなりどうしたの? そんなに嫌なことがあったの?」
俺の顔を覗き込んで、心配そうな顔をする推し殿。
「それかもしかして、私の顔見て安心しちゃったとかぁ?」
直後、ニヤける推し殿。
俺の顔もふにゃふにゃしちゃう。
「・・・・・・ん?」
「ど、どうしたの?」
急に黙る栞。
ニヤニヤしてたのが一変、疑いの色に変わる。
「ーー本当に、あっくん?」
「えっ・・・・・・」
一体どうしたのだろうか。
なんか、他の奴と疑われてるー。
俺は俺なんだけど?
「いや、うん。あっくんだけど」
「・・・・・・本当に本当?」
「うん。本当の三乗だよ」
首を上下上下にぶんぶん振る。
「ふ〜ん? ーーまぁ、いっか」
彼女は、訝しげな顔をしながらも信用してくれた。
「あっくん、帰ろう」
「うん」
良かったー。
なんだかんだで「どうしたの?」の答えを回避できたわ。
内容考えてなかったし、あのままだったらやばかった・・・・・・
こっそりと胸を撫で下ろす鈴木でした。
※
二人で一緒に、他愛もない会話をしながら帰って、途中で何度か道を間違えて、やっと家まで帰ってこれた。
まぁ、ゲームで二人の帰り道が載ってる訳ないし、分かんないよね。
「じゃあ、また明日ね。あっくん」
「じゃあね〜えへへへ」
「・・・・・・?」
栞は不思議な顔をしながらも、俺の家の隣の風間宅に帰って行った。
いや、まじで至福でした。ギャルゲー、神様、有り難う。
「ふぅ、なんか色々あったけど・・・・・・」
息を思い切り吸い込んでーー
「生きてて良かったァァ!
Whoooooo!」
本日2回目のシャウト。
そこら中から聞こえてくる「うるせぇ!」って空耳も無視。
嗚呼、なんて幸福ッ!
見たか畑田ァ!
ヒキニート鈴木は「ギャルゲーキャラ」にまで進化したぞ!
ーーそんなこと思いながらガッツポーズしてると。
頭の中に不思議な感覚。
ーーなんか、忘れてる様な・・・・・・?
うーん、と唸り、取り敢えず家に入るかぁ、と扉を開けると。
「あ、おかえり〜」
美味しそうな匂いと共に、温かい声が聞こえた。
ーーん? この声は聞いたことないぞ?
「え、あ、ただいま」
「今日も栞ちゃんと帰ってきたの?」
「うん」
「そっか。あんたたちほんとに仲良いわね〜
母さん嬉しいわ」
(あ、そっか)
この声はーーこの世界での俺の母だろう。
匂いから察せるに、今は台所で料理をしているのだろうか。
「取り敢えず、風呂入ってきなさい」
「あい」
俺は元気に返事を返すと、何処にあるかも分からない風呂場を探しに出掛けた。
♢♢♢♢♢
風呂場は、入り口のすぐ右だった。
・・・見つけるのに十分くらいかけたことは内緒。
「さて・・・・・・シャンプーはどれだ?」
友達の家に泊まった時のあるある、
【ボトルがいっぱいあるけど、何が何だかわからん!】。
取り敢えず、端から試していく。
「おっ、もしかしてこれか? ーーなんだ、コンディショナーかいっ」
って感じで。
結局、シャンプーは5本目で見つかった(最後のボトルだった)。
手にぶちゃっと出して、頭をシャコシャコ。
ーーところで、俺は風呂が好きだ。
どっかの特務機関の人が言ってたみたいに、
『風呂は命の洗濯』で、体に付いてた嫌なものがとれる感じがするから。
ーーま、それは置いといてと。
「そういえば、俺ってどんな感じでこの世界に来たんだ?」
栞と会って、『あ、俺ギャルゲーの中入ったんだな』っていうのは大体わかった。
けど、俺の手が違う人のみたいになってて、転移した俺って、現実と違う姿なんじゃ? って思ったのだ。
曇りきった鏡を擦る。
本当なら、そこには【身長165㎝、体重87kgの豚】が映るーー筈だった。
ーーしかし。
「ぺ…」
鏡に映った俺の身体は。
「ぺ…ぺ…」
身長174cm、体重66kgのスタイリッシュボーイ、【井口 新】のものだった!
「ぺぎゃぁぁぁッッ!!」
♢♢♢♢♢♢♢♢
【Tommyからのお願いです】
『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます