第2話 俺、推しと会う。(そして泣く。)
「もう、やっぱりここにいたっ」
「……え?」
唐突に声がして、思わず間抜けな声が出てしまった。
ーーそりゃそうだ。
だって、ーーその鈴の様な綺麗な声はーー僕が何千何百と聞いてきたものだったから。
「何かあるとすぐ河川敷に来るんだから」
いきなり声をかけられたけれど。
僕は、この
「……ほら、何があったの? 少しずつでいいから、言ってみて」
僕はその声にも、返事ができなかった。
「どうしたの? もしかして、何もない訳?」
顔を顰め、怪訝そうに訊いてくる。
「っていうか・・・・・・ねぇ、なんか言ったらどう?」
一度、オタク友達ーー畑田ーーから、こんなことを訊かれたことがある。
『なぁなぁ、もしもさ、「推し」が目の前にいたら、どうする?』
『そんな、いる訳ないじゃん』
『だから「もしも」だって!
現実にある訳ないだろ!
・・・・・・まぁ、僕だったら抱きしめるけどなぁ』
『いや変態か。
ーーうーん、俺だったら』
『俺だったら?』
「だから、ねぇってば・・・・・・って、わぁっ?!」
ビクッとして、驚きに顔を染める彼女。
そして、さっきまでの態度は消えて、オロオロし始めた。
「えっと、ほら! と、取り敢えず拭きなよ! それ!」
そう言って、ハンカチを取り出す。
「・・・・・・え?」
俺も、驚いた。
それは、彼女の反応にもだけど、
何よりも、顔を流れる涙に。
「お、俺・・・・・・えっと」
「あぁーもう! ほら!」
そう言うと、彼女は僕の顔を持っていたハンカチで拭き始めた。
迚もくすぐったくて、気持ちいい。
「何が何だかわからないけどっ、取り敢えず話しなよ、全部聞くから」
「うん……
ーーありがとう、栞ちゃん」
『俺だったら、泣くわ』
『ぎゃははっ、なんだそれ、可笑しい』
『いやいや、お前が言うなやっ』
拝啓、
俺は今、推しの前で、泣いています。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢
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