第12話 エピローグ

ノリス「やあ、原田さんこんにちは。」

眼を開けると蛇と目が合った。


「うおぉ!?」


思わず飛び退く。


「ここは・・?」


転がる救急車とパトカー。


ここでいったい何が??


左右を振り返り、立ち上がろうとして体に激痛が走り、座り込む。


「ぐっ・・・!」


「あぁ、無理は禁物ですよ。いまあなたの体、ボロボロですし。」


そうだ、思い出した。

あの大男に自分は負けたのだ。


「いやー警察にもいい能力者がいますね。」

感心感心、と蛇がつぶやく。


「ノリス・・・?」

「おや?覚えていてくださいましたか!」

蛇が嬉しそうな声色で答える。


やはりこの蛇はノリスらしい。


「こいつか?お前のお気に入りってのは。」


急に後ろから声がして痛みも忘れて慌てて振り向く。


巨大で武骨な両腕。あの大男よりも二回り以上大きい。

巨大な黒い虫はこちらを見下ろしながら蛇と会話をしている。


何を言っているのかわからない。

「■■■――――。」

「♢♢♢――――。」


外国語なんだろうか。


「気持ち悪い。」


破砕しようとして手が止まる。

指がない。

おれのゆび!


「あああああああああああ!!!!!!!!」


「あぁ、すいません原田さん。あなたの指、とても気に入ったので戴いちゃいました。」

「一応、持ち主だった原田さんにはお伝えしておくのが礼儀かと思いまして、わざわざ起きるのを待っていたんですよ?」


「ゆび!!おれのゆび!!!」


蛇がシュルシュルと鳴きながら嬉しそうに瓶を頬ずりしている。

瓶の中には俺の指が入っていた。


「ノリスゥウ!!!!」


怒りのまま蛇に詰め寄る。



―――――パキッ


乾いた音がして転ぶ。


「?????????」


両足が曲がっていた。


「おーおー、おっかねぇなぁ。危ないから膝、砕かせてもらったぜ。わりぃな!」


巨大なクマゼミがジジジジと鳴きながら顔を近づけてくる。


「くるなぁ!!よるなぁ!!!」

両腕を振り回して抵抗する。


「はぁあー、だめだこりゃ。」

「おい、ノリス!これどうすんだぁー!」


「あぁ、ダイヤは手に入ったので、削りカスにはもう興味ないですね。ドリスさんのお好きにどうぞ?」


ドリスはため息を一つついてから原田の方に振り向き話しかける。

「んじゃ、ばいばいハラダちゃん。正義じゃメシは食えねぇって天国の弟クンにおしえてやりな?」





原田逃走の一報が入ったのは連行から僅か12分後だった。

あのケガの状態で逃走したのかと天目と井出は驚いたが、捜査一課おさじまに動揺はなく、的確な報告・指示を出したことにより、迅速に道路の封鎖や検問などが行われた。延べ200人以上を動員して捜索した結果、2日経ってようやく原田の遺体が発見された。


発見された原田は上半身が潰れており、残った下半身も膝が粉々に砕け、ねじ切れる寸前の状態だった。


ようやく回ってきた捜査資料に目を通したあと、井出は天井を見上げる。


「きっと原田を殺したヤツと監視カメラ壊したヤツって同一人物っすよね。」

「・・たぶんな。」


2人は片桐からの忠告を思い出す。

―――――――――――――――――――――――――――――――

「あぁ、おふたりに忠告です。」


「「ん?」」

二人の返事が重なる。


「監視カメラですが、鹿取補佐官が殺害された現場周辺もカメラが機能していなかったことが分かっています。おそらくこの故障は意図的に行われたものです。」

「カメラの故障の仕方から、殺人犯の能力とは異なる能力なのは明らかです。複数犯による犯行。これを念頭に置いて捜査をお願いします。」


―――――――――――――――――――――――――――――――


原田は凶悪犯だった。

特対として捜査に関与こそすれそれも僅か3日ほど。

しかし警察内部の汚職や第三者の影、いろいろな情報が目まぐるしく回った3日間だった。


「仇、取ってやりましょうね」

「・・そうだな。」



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