第8話
翌朝
「とーくーたーいー!!!!」フロア内にドスの利いた重たい声が響く。
「やあ~
東江が左手をヒラヒラと振って応える。
「『昨日ぶり!』じゃねえ!!!河合修の件、勝手に接触しやがって!!!!」
あまりの剣幕に東江が
「いやぁ、まあ~僕らホラ、独立部署じゃない?捜査本部にも入れないしさ。でも捜査はするように指示があるしさ。」
「そう!それだ!!!」
筬島の怒号は続く。
「鹿取補佐官も仙田も明らかに異常な死に方だ!」
「能力者じゃなきゃ無理なんだよ!」
「わかってますよ。だから俺らが・・・」
「わかっっっってねぇえええ!!!!」
天目の返答を遮りながら筬島は捜査資料を机に叩きつける
「河合修は非能力者だ!!!殺せないんだよ!!!!あいつは!!!!!」
そこにある顔写真は昨日2人が会った”河合修“とは別人だった。
ホリは深いが鼻筋は丸みがあり、左目の下にホクロが2つ。
「もう一度聞く!!!お前らが会ったのは本当に河合修だったのか!!!!!!」
特対は大きな思い違いをしていた。
“被疑者は能力者である”ことが大前提であると。
東江が眉をひそめながら反論する。
「確かに我々は犯人像を見誤っていたけど、河合の顔写真が入ってきたのも、彼が非能力者だって判明したのも今朝になってからでしょう?」
「そこまで言うならコチラにも最初から捜査資料を回してくれてもいいんじゃない?ウチには優秀な
「ちっ・・!」
筬島が悪態をつきながら去った後、片桐が目に涙を溜めたて、か細い声でつぶやく。
「・・・ごめんなさい。」
「ごめんなさい。私がもっと・・・もっと迅速に情報収集できていれば、もっと正確に伝えることができていれば・・・・。」
「・・・お前のせいじゃねえよ。」
うつむく片桐に天目が声をかける。
「そうだよ、筬島くんが置いてった資料見てみなよ?昨日愛李ちゃんが報告してくれた内容がほとんどだ。そこにわずかに肉付けされた程度。あの時はまだ河合の顔も非能力者だってことも、誰も知らなかった。君の仕事は素晴らしいものだ。誇っていいよ。」
東江が優しく頭をなでる。
片桐も目尻に涙を溜めたままではあるが、先ほどより落ち着いた様子でほんの少し東江のほうに体を傾けた。
「おっと、これはセクハラかな?」
まじめな空気が苦手な東江はすぐに頭から手を放しおどけた態度を取る。
片桐が少しだけ不機嫌そうに東江を見る。
ただそれだけだが、フロアに漂う沈んだ空気が少しだけ軽くなった。
その日の夕方
令状を持った筬島たち一係が河合修の自宅を家宅捜査した結果、キッチンの床下収納からモルタルまみれの河合修が遺体で発見された。
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