第21話 全国統一魔法テスト
「それではまず初めに筆記試験を行う! 試験時間は60分! では、はじめ!」
久本の合図とともに生徒たちは配られたテストを開き、解き始める。
緊張感のあるこのテストは、日本での高校生1を決めるためのテストでもある。ランキング変更だけではなく、そういう意味も込められてるのだ。
「クソォ......全然わかんねえ!!」
20分ほど時間が経過したとき、ペンを進める者がいなくなり始めた。それはすべて解き終わったからではなく、分からずに諦める方の意味である。
Aクラスの最下層は大問8まであるテストで、大問5でペンを置いていた。
一方、ランキング上位陣はすでに大問7まで書き終え、大問8に手を伸ばそうとしてるところだった。
「試験終了まで残り5分となった。名前が書いてあるかどうか確認しておけ」
ほとんどの生徒がペンを置き、余裕の表情の者や絶望の表情をしてるなどいろんな様子の者がいた。
「試験終了! 次は魔力測定に移る! そのまま番号順に並んで廊下に出ろ」
ぞろぞろと他のクラスも生徒たちが出てくる。
「あれが噂のAクラスかよ。すげーな」
「私もあそこに行きたい......」
というようなヒソヒソ話が他のクラスから聞こえてくる。
「おい聞いたか? 俺らが他人に敬われてるぞアントニオ」
「そうだね。なんかテンション上がってきたぁ」
吐息を漏らすアントニオを見た他クラスは、憧れの目から気持ち悪いの目へと変わった。
「おいアントニオ! お前のせいで視線の意味が変わっちゃったじゃねえか!」
「そんなこと言われても......上がっちゃうものは上がっちゃうんだよなぁー。はははぁぁぁ......」
「やめろアントニオォォ!! それ以上気持ち悪いを見せびらかさないでくれぇぇ!!」
「あはあはあはぁぁぁぁーーーー。上がるぅぅ」
「おい!! 鈴木たち! こっちに来てこいつを隠してくれ!! 目線が痛すぎる」
「「「「任せろ!」」」」
そう言って、アントニオを人影で見えなくさせた。
「おいおい見せもんじゃねえぞ!! とっとと立ち去れぇ!」
それでもまだ見てくる生徒たちがいたから鈴木が大きい声で注意する。
そんなとき、前で様子を見ていた久本先生がやってきた。
「お前たち......はあ......なるべく静かにな」
「「「「はい......」」」」
〇●〇●〇●〇●〇●〇●
「ではまずは魔力度。魔力の威力を測定していく。じゃあ一番のアントニオから!」
Aクラスは他のクラスと違い別室で行われた。
着々と測定を進めていく生徒たち。
「アントニオ 130」
「今井 200」
「加藤 434」
「向井...... 1395」
久本がパソコンに映った数値を表に呟きながら書いていく。
全員の測定を終え、また次の項目へと移動させる。
「次は魔体力の測定だ。では始め!!」
この測定は魔力を出し続けて、タイマーで時間を図るという、成績の良いものほど時間がかかる測定だ。
「もう......魔力でん......」
一人の生徒がくたびれた様子で計測器から離れていく。
「私ももう無理ー」
そして次々と脱落者が増えていき、五分もしないうちに残った生徒は5名しかいなかった。
「これは最大で30分測る! 30分を過ぎると強制終了とする!」
「えぇ?! これ30分間もやるの?!」
まだ耐えてるメンバーの一人である今井奈菜がそう言う。
「さきほどからずっと黙ってますけど大丈夫ですか? 加藤さん」
「な、なんですか?? 私は余裕すぎてつまらなかったところですよ?!」
「そうなんですか?! ではお話でもしましょうか?」
「いえ......遠慮しておきます」
「そうですか......それは残念」
「おい向井......お前、随分と余裕そうだな......」
向井に向かってそういったのはランキング6位の季佳
「そうですか? それに関してはあなたも余裕そうに見えますけどねー?」
「......正直きついが、お前に負けるわけにはいかない......。だからなんとしても30分間耐えしのぐ」
「向井ちゃん誰と話してんのー?」
そこで会話を聞いていた今井が話しかける。
「ランキング6位の季佳くんですよー?」
「へー! すごいね!! 私、今井奈菜って言います! どうぞよろしく」
「知ってる」
「えっ? どうして?」
「いつもクラスで騒いでてうるさかったから覚えた」
「あははー......それは失礼しました」
会話はそこで途切れ、皆集中し始めた。
ギャラリーたちはAクラスだけでなく、ガラス板ごしから見る他のクラスメイトもいた。
「10分経過! 残り20分だ!」
ここで顔色が変わっていく生徒が3名いた。
季佳、加藤、今井の3人だ。
「もう限界ーー!!」
そう言って今井はその場にしゃがみ込む。
立て続けに加藤、季佳の順に脱落していく。
「なんであんな平然としていられるんだよっ......?!」
季佳はよろよろの状態で残ってる二人を見ながらそうつぶやいた。
ギャラリーも二人の争いを見て、興奮しまくっていた。
「よーし! 後藤!! もっとやれー!! 目指せ30分!!」
「負けるな!! 向井ちゃーん! 男子なんかに負けるな!!」
男子全員の応援に、今井の一人で対抗する女子。
「20分経過!! 残り10分!」
ガラス板の向こうには教員や、二年生も増えてきた。ガラスに両手をついて目を大きく開けて驚いてる人もおり、ギャラリーにとっては偉業そのものなのだろう。
「はぁ....はぁ....はぁ....そろそろ疲れてきたのでは? 後藤さん」
「いや......もう少し! ネバーギブアップだ!」
そう言って、後藤は不屈の精神で何とかしのいでいく。
一方の向井はもう限界のようで、膝に片手をついてそのままの態勢で続けている。
「向井さーん!! 頑張れー!!」
「後藤! 最後まで逃げ切れー!!」
Aクラスの生徒たちからの応援声がはびこる中、訓練室の外でも大盛り上がりを見せていた。
「あの二人化け物すぎじゃないか??!! あんなタイムだせんのえぐいわー!」
「あの子たち誰?! 二年生の私でもあんな規格外のタイムは出せないのに!」
「残り1分!! 最後まで気を抜くな!」
久本がそう忠告すると、向井と後藤はお互いの顔を見合い、敵意をむき出しにしていた。
「早く......脱落してください」
「そっちこそ......強がるなよ」
刻一刻と時間が過ぎ、ギャラリーにとっても二人にとってもえげつないほどの濃厚な時間だった。
すると、
向井が地べたに倒れこんだ。
そして、それと同時にギャラリーの熱い声援が送られる。
「よく頑張ったよ!! 小娘!」
「ああ! お前はすごかった!」
向井はうつ伏せになりながら久本の方を見ると、久本はにやりと笑ってグッドポーズをした。
「なんじゃそりゃ......? ははは......」
そんな久本のギャップに笑いが漏れる向井。
「向井! 29分14秒!」
「後藤! 29分32秒!」
「「「「うおぉぉぉーーーーー!!!!!!!」」」」
2人の熱い競い合いに観衆は大盛り上がり。二人の競い合いが終わると、訓練室の外から、大きな歓声が聞こえてきた。
「どうやらギャラリーたちが集まってきてしまったようだ......。俺は向井を保健室まで送るから、各自で教室に戻ってくれ。これでテストは全科目終了だ。立てるか? 向井」
「......ちょっと難しいです」
「じゃあ仕方ない......よっこらせっ!」
そう言って久本は向井をおんぶする。
「先生......保健室までよろしくお願いします......」
向井は疲れ切った様子で、久本にそう頼んだ。
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