第20話 仕事探し
『いい朝だぁ......! 君たち、見たところ学生だろう。だったら仕事もないんだろう? だったら仕事を紹介してやるよ』
男は朝になっても隣におり、話しかけてくる。
「先輩......私寝起き最悪なんですけど......この段ボール固すぎ......」
「ねちがえたー!!! イタタタァァー!!」
『ははっ!! 朝から賑やかな奴だぜ!! 嫌いじゃねえ。朝食も食いてえだろ。ついてきな』
男はジェスチャーで招くように手を動かす。
「えっ......? あれってこっちに来いって意味ですよね......?」
「だろうな......」
季佳と進は涙目になりながらその男についていくしかなかった。
『ついたぜ。ここは安月給だが昇進すれば普通の職場だ。まあそんなことは奇跡でも起きない限り無理だけどな』
着いた先は工事現場で、大勢の社員が働いてる。中には指揮をとる者もおり、その人を中心に作業が回っている感じがする。
「なんでここに連れてこられたんでしょう私たち......?」
「ここで働けてきな......?」
「無理無理無理!!! 絶対いやです!!」
「俺も!」
『なんだー? どうやらあんまりお気に召さなかったようだな。まったく仕方ねえぜ。もう一個紹介してやるよ』
男はまた手招きをし、二人をある場所へと連れていく。
『ついた。ここは傭兵所だ。言っておくがここはおすすめしねーぜ。俺もここで働いてるが、仕事中は常に死と隣り合わせだ。命が何個あっても足りねえぜ』
建物の中に入ると、ガラの悪そうなゴロツキどもが光線銃を持っていたり、酒を飲んで喧嘩してる状況だった。
「うぇ......なんか臭ぁーー......」
「季佳よ、鼻をつまむんだ」
『ははっ!! 匂いも強烈だろう? だがここで働くにはそれぐらいの覚悟が必要なのさ。こっちも昇進すれば一般人の収入どころかそこら辺の会社の社長より稼げるぜ。だから同業者も多いんだろうな』
するとその時、進たちが入り口付近で立ち止まっていると、ぞろぞろと武装した傭兵たちが後ろの扉から帰ってきた。
『ういぃー!! 今日も大収穫だったぜ!!』
一人の荒くれものが先頭を歩きながら集団がカウンターの方へとモンスターの死体などを運ぶ。
『おっ!! バニッシュじゃねぇかー。今日もたっぷり虐めてやるから覚悟しとけよ?』
帰ってきた男は進たちを案内してくれていた男の方を向いて言葉を掛ける。
『はい......ありがたく受けさせて......いただきます』
男は腰を低くして敬うかのような姿勢になる。
「先輩......あの人.......」
「季佳、俺から離れるなよ」
進がそう言うと、季佳は黙ってうなずいて腕をがっしりと掴んでくる。
悪くない気分だ......。
『で? お前ら見ない顔だなー。新人か?』
『彼らは私が連れてきました......』
バニッシュが答えると、男は急にバニッシュの首をつかむ。
『......俺が発言をいつ許可した......? あぁ? 俺は今あいつらに聞いてんだよぉ? そのくらいわかってくれないとさぁー......殺すぞ!!』
男は言い終わるとバニッシュを投げ飛ばし、進たちの方へと歩いてくる。
『俺の名前はキラーだ。名前を聞こうか? まずは女の方から言え』
キラーという男は季佳の方を指さしてそう言う。
しかし言語が分からないので、二人は無言のまま貫く。
『おい......名を名乗れっつってんだよ。耳ついてんのか?』
「「......」」
『おい......おめえら立場わかってんの? お前ら!! この女捕まえて好きにしていいぜ!! あっ! くれぐれも最後までするなよ? したやつ全員殺す!!』
キラーがそういった途端、傭兵たちは一斉に季佳目掛けて突撃してきた。
「先輩......!」
「
そう唱えると進の指先からあらゆる方向へと光の速さで糸が飛び出し、傭兵たちの全身を貫通させ突き刺さった。
糸の一本一本に細かな雨粒が付いており、その中には一滴でも体に入ればゾウをも即死するレベルの毒が大量に溶けている。
その糸で貫かれた傭兵たちは次々と倒れこんでいき、キラーも膝をついて汗を流して焦っていた。
『なんじゃ......この大量の血は....? 俺のなのか......? ははっ!! 馬鹿言ってんじゃねえー!!』
キラーは何とか進に攻撃を加えようとしたが、体に毒が回っていき思うように動けなくなってきた。
『なんでだっ?!?! 思うように体が動かねえ?! テメエ何しやがった!!』
顔をこちらへ向け、強烈な顔で睨みつけてくるキラー。
「こわっ!......」
「先輩私の後ろに隠れるのやめてください」
『おめえらゼッテエ許さねえぞ!! 俺が死んだらどうなるか思い知らせてやる!! クソがァァァ!!!』
最後にそう叫び、キラーは毒に侵され死んでいった。
先ほどまでゴロツキで埋まっていた傭兵のアジトはバニッシュと他数名だけだった。
『おい......あんた大丈夫か? 見たところケガはなさそうだが......』
「おい季佳、こいつらの財布からすべての金盗め! 早くしないともっと来るぞ!」
「えぇ?! わ、わかりました!! 集めてきます!!」
『おもしれー奴じゃねーか兄ちゃん。しかもあのキラーをぶっ倒しちまうなんてよ!! 傭兵やりゃぁ絶対成功するぜ!! 兄ちゃんやってみないか! 傭兵』
「えーっと......アイムジャパニーズソーアイキャントスピークフレンチ。これであってるよな......?」
「あはははっ!! 何その変な英語ー!! 先輩って面白いですよねー!! あははっ!!」
こいつは後でシバく......!!
『なんだよ?! 日本人なのか?! そりゃああんだけ強えわけだ!! 日本っていえば世界トップレベルのマスターがゴロゴロいるんだろ?』
「よし!! 金集めたな?! 撤収ぅ!!」
「ちょっと待ってくださいー!!」
『おっ! そろそろどっか行くんだな? ついて来いってか? わかったよ仕方ねえ!!』
「おい!! なんであのオッサン付いてきてんの?!?! 怖いんだけどマジで!!」
「先輩!! 私を前にしてくださいー!! このおじさんの目が危ないです!!」
『急に走り出すんじゃねえよまったく......。まあいいぜ!! 俺を試してるんだろ? 悪いがそう簡単には諦めねえぜぇ!!』
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