第19話 飛行船墜落
「先輩!! これなんか変なブザー鳴ってます!! なんかやばそうですよ?!」
慌てふためく様子で季佳はそう叫ぶ。
「はぁ......俺たちもうここで死ぬんだ......。あきらめろよ季佳。最後くらい静かにいようぜ......」
進はすでに大人しくシートベルトをした状態で席についている。
「先輩?! なーにやってんですかー?! このままじゃホントに死んじゃいますよ!!」
「だからいいって......。それともあれか? なんかくれんのか?」
「ハぁ?! こんな一大事に何言ってるんですか?! 先輩死んじゃったら妹さんたちに会えなくなっちゃいますよ?!」
季佳がそういうと、進はピンと背筋を伸ばした。
「妹!! そうだ妹だ!! はやく地球に帰ろう!!!」
「はい! じゃあまずは死なないことが重要ですね!! 何とかしてください!」
「おう! 任せろぉ!!」
進は操縦席に着き、ブザーの原因を探り始める。
「えーーー....これをこうしてー......こっちかな?....あっこれかもしれないな」
ポチポチとそこらへんのボタンを押しまくっていると、
【警告!警告!今すぐ緊急避難装置を起動してください!警告!警告!】
と大音量でアナウンスが機内に鳴り響いた。機内中が赤い警告画面に変わる。
「きゃああああぁぁぁぁー----!!!!! 何してるんですか?!」
それに気づいた季佳が叫ぶ。
「慌てても仕方ない。うん。今度こそ無理だ。二人で死のう。うん」
「もうすぐ海に着いちゃいますよ!! 早く緊急脱出しましょう!! 先輩魔法で何とかしてください!!」
「え......?あっ魔法ね....はいはい」
「わかってるんですか?! 早く!!」
機体がぐるぐると回って感覚がおかしくなってくる。
「えーと、レボーン」
進がそう唱えた途端、季佳と進の位置がさっきとはまるで違うところに飛ばされた。
着いた先はフランス。そこの丁度海の見える町まで来ていた。
「先輩......ここは一体......?」
ついさっきまで機内にいた季佳が混乱している。
「季佳が魔法使えって言ったから使ったらこんな所に飛ばされてしまった訳だ」
「は......?」
季佳はまだ話についていけておらず、イマイチ状況が掴めてない様子だ。
顔を見ても眉をひそめて、両手で頭を抱えている。
「信じられないか? けどまぁ魔法なんてこれぐらいしか使い道ないんだから」
「......」
「季佳?」
「......えっ?! なんですか?!」
「大丈夫か....?」
「えぇ....ちょっとびっくりしすぎてボケッとしてました」
「それは何より。じゃあ早速行くか」
「え? 行くってどこに?」
「決まってんだろ? 『マスターベース』だよ」
「はぁぁぁぁ?!?!?!」
季佳が鼓膜が破けるぐらい大きな声で叫ぶ。
「うるせー!! もう、うるせー!! 」
「だだだだだだだだって!! あのマスターベースですよ?!」
「そうだよ! あのマスターベースだよ!!」
「そんなところに私たちみたいな一般人が行けるわけないでしょ?!」
「行ってみないとわかんないだろー!! 事情を説明したら送り返してもらえるかもしれねえだろ!!」
「もーどうなっても知りませんよー?」
何とか季佳を説得してマスターベースに行くことに決めた。
〇●〇●〇●〇●〇●〇●
「ダメでしたね......」
「ああ......話すら聞いてくれなかったな......」
2人は肩を落として公園のベンチに座った。
「これからどうしよう......」
「ほんとですね....これじゃ日本に帰れるのはまだ先かな......」
季佳は上を見上げてそうつぶやく。
「しばらくは、この国で暮らすことになりそうだけど大丈夫か?」
「正直、日本に帰りたい気持ちが強いです....けど先輩がいるから......もうちょっと頑張れそうです!!」
そう言って笑顔をこちらに見せてくる季佳。
「そうか......まずは仕事を探さな。あの連中のポケットに入ってた金じゃあまともに暮らせねえよ」
「エッチな奴はやめてくださいね?! 私そういうのホント無理なんで!!」
「はいはい。わかってますよ」
「何ですかその言いかた」
「家がない......」
進が頭によぎった言葉を口に出す。
「ん......? どうかしましたか? 先輩」
「そこに段ボールがあるな......」
「じょ、冗談ですよね......?」
「フランスジョークに決まってんだろ。今のうちに覚えておくんだな! はっ!」
あざ笑うようにして会話を終わらせて、段ボールを広げて寝そべる。
「ジョークって言ったじゃないですか!! なんで段ボールに寝そべってるんですか?!」
「今日だけ我慢してくれ、ずっと起きてるわけにもいかないだろ」
「うーー......仕方ない......」
苦い顔をしてそう言って段ボールに飛び込む季佳。
『お隣いいかい?』
すると突然まったく知らないおじさんに話しかけられた。
彼はフランス語を話しており、何も聞き取れなかった。
『何も返答がないね......まあいいや。俺は君たちと同じホームレスさ。国から見放された廃棄物だよ......』
季佳は居心地悪そうに上を向いている。自分の服の裾を季佳が左手で引っ張ってるが、関わりたくないので反対側に体を向ける。
『お嬢ちゃん、なんでこんなところに来たんだい? 見たところいい服を着てるようだが。家出でもしてきたのかい?』
ひたすらにフランス語で話しかける一人の男。
「......」
「......」
『......無視か。まあいいよこういう扱いには慣れてる』
そこでその男の話声は途絶え、3人とも眠りについた。
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