第17話 特殊部隊アルファ

「先輩! あとちょっとで来ますよ!! 救助!! 遂にこの原始人生活とはおさらばです!! テレビで取り上げられちゃいますよね?! あー! 言うこと考えてたのに忘れちゃった!! まいっか」


「うるせー....とてもうるさいね。俺は寝不足なの、これからのこともあるんだから、その止まらない口を閉じろ」


「寝不足なんですか? なんで? 楽しみで眠れなかった的な?! ですよねー! わからなくもないです」




「なあ、季佳」




「どうしましたー?」




「もし、救助隊が俺たちを殺しに来たとしたらどうする?」




「えっ......」




「答えてくれ、冗談じゃなくて本気で」




「ど、どうしたんですか..?!急に....」




「いやー、今まで言ってこなかったけど普通に考えて化け物の巣窟に未成年2人行かせる高校なんて存在しないんよ」




「でもっ! あそこは特別な学園ですから! そういうのもあるんじゃないですか?」




「で?殺しに来たらどうする?」




「うーん......逃げるしかないんじゃないですか? 敵わないだろうし」




「なるほどねーーー。じゃあ、あっちに隠れて」


進は奥にある洞窟の方を指さして、そう言った。


「えっ....は....?意味わかんないです」


話を切り出し始めてから呆然としている季佳。


「今から俺たちを殺しに来る奴らが来る。だから季佳は隠れてて」


「なんで....私たちを殺しに....?」


「後始末でしょ。こんなとこに送り込んだなんて世間にバレたらあの学園は終わりだからねー。そういうこと」


進は体慣らしにストレッチを始める。


「先輩は戦うんですか?」


青ざめた顔で聞いてくる季佳。


「当り前だろー!! 俺が戦わなかったら誰が戦うんだよー」


「............です」


「ん?なんか言った?」


「........イヤです!」


「嫌ってなんだよ....心配してくれてんの?ありがと」


季佳の頭を優しく2回叩く。


「そういうのじゃなくて! 二人で逃げればいいじゃないですか!! しかもなんで今まで話してくれなかったんですか?! もっと早く言ってくれてたら......」




季佳が泣きそうになりながら話していると、上から特殊部隊のジェット機が飛んできた。


「季佳!!!! 隠れろ!!」


進は急いで季佳に命令する。


季佳は進の命令を大人しく聞き、洞窟の中へと走っていった。



約30台のジェット機と、飛行船が10台、そこに乗ってる隊員たちの総数が500人か......。


どんだけ力入れてんだ?あの学園は....。



すべての重機が一斉に着陸し、進を中心に円を囲むようにぞろぞろと武装した戦闘員が現れた。


銃口をこちらに合わせ、全方位から殺気を浴びせられる。


「射撃開始!!」


 隊長の掛け声がかかると、一斉に魔力弾が放たれる。



ババババババァァァァァー-----!!!!



「うおっ?! はははっ!! この数を避け切るのは初めてだ!!」


一つ避けると、別角度から100発ぐらい来る。それを躱すと、また別角度から魔力弾の雨、学生に対しての仕打ちじゃあねぇわ....。


「なぜ当たらない?! 近接魔術格闘に変更!! 全員でやれ!!」


「グランドハイ!!」

「ファイアカノン!!」

「ポイゾンハスク!!」

「アイスガーデン!!」

「メカドロー!!」


こいつらマジで学生に対しての仕打ちじゃないな....。それとも俺のを知ってんのか?


彼らの魔法はすべて超級魔法であり、人がかすっただけで殺めることができるレベルの魔法だ。


「エレクトロニック・ハンマー」


進は半径50メートルの巨大ハンマーを出現させ、思い切りの力で振り下ろす。


振り下ろされた場所にはさっきまで平地だったのに今はクレーターほどの穴ができており、そこには粉々になった骨と流れる血がある。


「バカな?! おい! 最終手段だ!! 増援を呼べ!!」


「え?! 増援呼ぶの?!」



「ウォーターダイブ!!」

「グランドクロウ!!」

「ゴールドスマッシュ!!」

「ハイパーレーザー!!」

「グレートダウン!!」

「ダークネスゴスペル!!」



まさに地獄絵図。高レベルの魔法が休みなく襲い掛かる。隊員一人ひとりが違う魔法を打ってくるから、それを読み切るのに脳をめちゃめちゃ使う。


「エレクトロニックレイ」


そう唱えると、進の手先から光線が放出され、それを奴らにぶつけていく。その威力はまさに化け物。光線が通った地面には深い渓谷になった。



「あぁ....あああ......おかしい! おかしいぞ!! もう半数しかいないじゃないか!!」


いつの間にか特殊部隊の総数は200人くらいしかいなくなっていた。


「もう半分か....。なんだ、徹夜で対策した意味が全くないじゃないか」


進はあきれた様子を見せ、敵たちを煽る。


「クソが!! 行け!! 総動員で潰せ!!」


「エレクトロニックボム」




ドゴオオオォォォォーーー!!!!!



進は最後に異次元規模での爆発を発動させ、特殊部隊の全員をいとも簡単に壊滅させた。


「先輩やっば....」


距離が離れていた洞窟からでも爆風が来て、地面が振動する。


「やぁ、季佳」


季佳が口をあんぐり開けてると、進が隣にいた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁー-----!!!!!!!」


「うるせーーー!!!!」


「ほんとに先輩ですか?! じゃああそこで固まってる人は....?」


季佳の指さした向こうには確かに進がいた。しかし、あれは本物の進ではない。


「あれはなー、俺が作り出したクローンです。いざとなった時の為にね、ずっとあいつに戦わせてたんだよ。すごいでしょ?すごいよな?すごくないって言ったら殺す」


「先輩....ちょっとかっこよかったですよ!! 惚れちゃいそうになりましたよ!!」


「んー! 惚れてもいいよ!」


「じゃあ早く帰りましょう!! あの飛行船で帰れるんじゃないですか?! ねえねえ!!」



鼻息を荒くして、今にも走り出しそうな季佳。


「でも操縦の仕方なんてわかんないし、やめといたほうがいいんじゃないか」


「なんとかなりますよー!! ほら!! 早く帰りましょう!!」


季佳に引っ張られながら、飛行船の方へと向かう。


その飛行船には『アルファ』という文字が刻まれており、組織の名前か何かだろうか。


「先輩、これ車とあんまり操縦変わらないですよ!! すごーい!!」


「へー、じゃあ運転よろしく。俺は疲れたから寝る」


「ダメです!! これ2人じゃないと操縦できません」


「はあ? なんだそれ?!」


「はーやーくー!! 私はいち早く帰りたいんです!!」



もういいや....。増援が来ちゃう前に出発しちゃおう。


『操縦者を確認。エンジンを起動します....』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る