第16話 動き始める不穏な風
『今日は6月1日です! 天気は一日中曇りです! 少し肌寒いかもしれないので薄めのコートなど着て対策しましょう!』
朝のニュースを途中で見止め、学校に行く支度をする。
すると、母親からこんなことを言われた。
「今日は学校は休みですって....。話は以上よ」
言い終わると同時に母は部屋から出て行った。
「はあ....今日は学校はないのか....。朝からあのクソババアの顔見るとか最悪....カギ閉めとこ」
伊藤はさっさとカギを閉め、さっき見ていたニュース番組をもう一度つける。
『昨日、カージェ探索から戻った探索員がカージェに制服の布切れが数枚落ちていた。と証言しており、これに関してその学園は我々の制服ではないと断言しています。取材班を投入しましたが、断られたそうです』
「ふーん....どうせ噓でしょ。ニュース番組もここまで落ちぶれたのか」
私は少々呆れ、テレビを消そうとした。すると、目を見張るものが映し出された。
『その探索員は例の制服の布切れを持ち帰ってきたそうです。その写真がこちらです』
番組のスタジオのモニターに冥創学園の制服の一部が映し出されている。
「えっ?!本気?!あっ......」
思わず声が出てしまい、手で口をおおう。
『この服は~、冥創学園の制服ですね~。こりゃーたまげた!』
解説員の一人が驚いた様子で声を上げた。
『冥創学園ってあの世界トップクラスに名高い超名門校じゃないですか?!スキャンダルゥゥーー!!』
『ははは、これは大ニュースですねー。今まで数々の名高いマスターたちを生み出してきたあの学園にも裏がある。なんてあったりしないですかー?』
冗談交じりに学園をネタにする解説者たち。
「とりあえず今井さんに電話....」
私は急いでバッグに入れていたスマートフォンを取り出して電話を掛ける。
『プルルルル,プルルルル......はーい?もしもし?』
「もしもし?美雷ですけど、朝のニュース見た?」
「ニュース?そんなの見てる暇ないよ。早く起きてー、肌のお手入れとかで時間溶けて学校だよー。あっ!そういえばなんで今日待ち合わせ場所来なかったの?!私何度もメールしたのに!!切れちゃうよ???」
「は....?今日は学校休みじゃないの?」
「なーに言ってんの?!そんなメール一切来てないじゃん!今からでも来た方がいいよ!」
「わかった。今日行けなくてごめん。けどなんか今日嫌な予感がするから、気を付けてね」
「なにそれー?わかったよー。じゃあまた学校でね」
「ん」
そうして今井との通話は切れた。
「なるべく早く行こう....」
バッグを持ち、急いで玄関の扉を開けた。走っていこうと思い、靴を履きながら外に出ようとしたとき、目の前に白スーツにサングラスをかけた大男待ち構えていた。
「だ、誰?」
「動くな。我々はスペースステーション社ワシントン部の者だ。お前を始末するように命令された。よって今からそれを実行する」
スペースステーション社?!マスターたちの活動拠点じゃん!ってことはこいつらもマスター?
「スペースステーション社の社員が私を殺す....?言ってる意味がよくわかりません....」
伊藤が睨みつけて問う。
「言ったとおりだ、気の毒だがここで死んでもらおうか」
そう言って、白スーツの大男2人は同時に飛びかかってきた。
「ふんっ!!!」
大男が拳を伊藤へ叩き込む。
それを伊藤は軽く避けて、カウンターを打ち込む。
「ぐっ!」
片方がよろめいているうちにもう片方の男の相手をする。
「せいやぁ! せいやぁ! せいやあ!!」
大男は無造作に高速連打を繰り出す。
「そんな雑な打撃、当たるわけないでしょ....」
伊藤は可憐に拳を避けていき、徐々に間合いを詰めていく。
「っ?!」
大男が気づいたころには伊藤との距離数センチ。
その超近距離で伊藤は打撃を繰り出す。
ドドドドドドド!!!!!!!
伊藤の武術は大男を圧倒した。
大男ども二人は地面に這いつくばって苦痛に耐えている。
「マスターってこんな弱いんだ....」
と少々憐れんでる伊藤。
その発言を聞き、さっきの痛んでる姿などまるでなかったかのように立ち上がる大男たち。
「今、何と言った....?」
「聞き間違いだろうが、念のためもう一度聞いておこう。貴様、今何と言った?」
2人の声色が低くなり、雰囲気がガラッと変わる。
「いや、だからマスターってこんなに弱いんだなって落胆したの」
伊藤が目を大男たちの方へ向けると、さっきまでの場所にいたはずの奴らが消えていた。
「一体どこへ?」
伊藤が首を回して辺りを見渡す。
どこからどんな攻撃をされるかわからない緊張感のある空気の中、伊藤は汗を垂らしながら集中していた。
「来る!!」
後ろから気配を察知した伊藤は素早く背後へ打ち込む。
案の定大男どもは背後から襲ってきて、伊藤の拳をまともに食らった。
「「ぐはっ?!?!」」
しかし、いくら攻撃を加えても大男2人組は倒れない。
「やっぱり殺すか気絶させなきゃいけないのか....」
伊藤は仕方ないとため息をついて、
「アクセル!」とバフの呪文を掛けた。
伊藤は片方の白スーツの頭を思い切り蹴り上げる。
すると、そいつは地面に顔が埋まり動けなくなった。
「ッ!? 大丈夫か?!」
もう一人の男はそいつの状態の心配をし、隙だらけだった。
そこへまた重い蹴りを入れて膝をつかせた。
「くはっ!!....」
「身体能力では君の方が上か....。まさか魔法を使う羽目になるとは思わなかった」
さっきまで地面に埋まっていた奴が起き上がって、服に着いた汚れをはらいながら言ってきた。
「無傷....? なんでさっきから全然倒れないの....?」
「驚いたかい? でもね、俺たちは魔法のエキスパートなんだ。生身で戦うのは本職じゃない」
「そんなに言うってことは相当魔法に自信があるってことだよね? 見せてよ」
「随分と余裕そうだな。どこからそんな自信が出てくるのか....」
「フレア・ブレイジング!!」
ボワアァァーーー!!!!!
天空から猛スピードで迫ってくる炎のレーザー。
「なにこれ....?!」
「これは5000度の熱が凝縮された炎のレーザーだ。当たったら一生治らない火傷ができるだろうな」
量が多すぎて...! 避けれない....!!
シュゥゥーーー!!
「うっ?!」
レーザーが肌にかすった痛みで頭がクラつき、バランスを崩す。
その隙を突かれ、魔法で拘束されてしまった。
「今のうちにやれ!!」
「ああ!ファイア・クリメイト!!」
雲よりも大きな爆炎が伊藤目掛けて降ってくる。
そして太陽のようなものが町の建物を溶かしていく。
「こんなの....勝てるわけない....」
伊藤は目を瞑り、その場に膝をついた。
「死ね!!!!」
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