第10話 2位の生徒

「私に言ってます?」


 一応別の人に言ってる可能性があるから聞き返す。


「はい、ランキング5位の伊藤美雷さんで間違いないですよね?」


 にっこりとした顔でこちらへ話しかけてくる彼女に少しの恐怖をいだく伊藤。


「そうです。あなたは?」


 彼女は聞き返されると、ハッとした様子で自己紹介を始めた。


「私、向井桜といいます。どうぞよろしくお願いします」


 きれいな90度のお辞儀をし、またニコッと笑う。


「それで?私に何か用ですか?」


「はい!聞きましたよ!あの機械を壊して見せたんですって!素晴らしいです!それを聞いて是非あなたの魔法を私に見せてほしいなと思いまして声を掛けさせてもらいました!」


 目を輝かせながらジリジリと伊藤に近寄っていく向井。


「わかりました、じゃあ見ててくださいねー」


 伊藤は早く終わらせようと、さっそく威力測定器の方へ向かう。


 彼女が現れると、今までやってた人たちがどいていく。


「どうぞ!ご自由にお使いください!」


そう言ってさっきまで使用していた生徒が、機械を差し出してきた。


「ありがと....」


威力を測定する機械は上のモニターに数値が出るようになっており、数値が大きいほど威力も大きい。


『10で一般人レベル、50で中学生レベル、100で高1トップレベル、500で教員レベル、1000でマスターレベル。それ以降は別物となっている』



 なるほどね。説明を読む限り300行けばいい方か....。



ドゴォォォー-!!!!



 伊藤が魔力をぶつけると、爆発音が部屋中に響き渡り、機械の部品がぽろぽろ落ちてきている。


「バケモンか!!!!」

「どうやったらあんな風になるんだよ?!?!」


 周囲は相変わらず伊藤の魔力に圧倒されてるようだ。


「素晴らしい!これがあなたの魔力なんですね!!私が見込んだだけのことはあります!!」


 向井はモニターの数値を目視し、震えあがった。



 

 その数値は、驚異の『532』




「ご、ご、ごごご、532?!?!」


「ははっ、無理じゃねえかこんなもん!!」



 生徒たちが絶望するのも無理もない。逆にこれを見て希望を見いだせる人の方が少ないだろう。



 すると、奥にいた向井が例の機械の方へと歩いていく。


「私もやってみますね!」


 向井はニコニコしながら手から魔力を流しこむ。彼女の魔力は白く煌びやかな色をしており、神秘的なものを見ているかのような感情に包まれる。


「えいっ!!」



ゴオォォォォー-!!!



『873』


 向井が放った魔力は隣の部屋の壁まで貫いた。


まさに魔法界の宝石。


 彼女は世界中のマスターの注目の的となっており、なんといってもこの絶大な威力が彼女、向井桜のとびぬけている才である。


その魔力を見た者はこうなってしまった。



「帰ろうか!みんな!」

「おう!!早く教室に戻って次の授業の準備をしよう!!」

「そうね!ちょっと訓練のし過ぎで幻覚見えてきちゃった!早く休憩しましょ!!」


 クラスの半分はそう言ってクラスに戻っていった。そいつらの顔は色んな表情があった。笑ってる顔、泣いてる顔、感情を失ってる顔、怒ってる顔。


「皆さん行っちゃいましたね...私たちも帰りましょうか!」


「うん!!これからよろしくねー!桜!」


 今井は向井を歓迎した。だが伊藤は少しの胸糞悪さを抱えたまま、二人の後ろについていった。



〇●〇●〇●〇●〇●〇●


放課後の学園


 伊藤は向井の数値に圧倒され、敗北感を味わった。

 今まで一度もなかったこの気持ち。こんなに胸糞が悪い感情だとは思わず、伊藤は苛立ちを隠せなかった。



そして、伊藤が今いるのは職員室前。

 


 久本先生ならば、強くなる方法を知っているはず。

 


 伊藤は職員室の扉をノックし、しばらくすると知らない女性の先生が出てきた。


「1年Aクラスの伊藤美雷です。久本先生いますか」


「久本先生?そういえば今日はもう早く帰ったって言ってましたよ」


「そうですか......ありがとうございました」


「あっ!良ければ私が聞いておきましょうか?久本先生に伝えておきますよ?」


「じゃあ強くなる方法.....教えてくださいと伝えてください」


「ん?.....」


女性教師は一瞬キョトンとした顔をして、動かない。


「強くなる方法?あなたは.....確かランキング5位の伊藤美雷さんですよね?はっきり言いますけどあなた、久本よりお強いのでは?聞きましたよー。なんでもあの機械で532という驚異的なスコアをたたき出したそうじゃないですか。そんな生徒高1で見たことないですよ。うーん...どうしようかなー.....。そうだっ!強くなりたいんなら、3年のクラスに見学でも行ってみますか?」


と一つの提案を切り出してきた教師。


「3年生....ですか?」


「そう。3年生。すごいわよー、うちの3年は」


 その教師はにやりと顔に笑みを浮かべると、私の手を引っ張り、別の階へのエレベーターへと連れてきた。


 そのエレベーターは自身の魔力を流し込まないと動かず、並みの生徒や教員ではピクリとも動かない。


「ちょっ......?!ちょっと?!まだ心の準備がっ!.....」


「まあまあ。これも何かの縁です。ぜひ見ていきましょう」


 そう言って教師は魔力を流し込み始める。時間が経つにつれエレベーターの魔力メーターの部分が一番はじに行き、動く状態へとなった。


「それじゃあ行くわよ?3年の世界に」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る