第6話 難しすぎるAクラス
「まずはこれだ。この機械は魔法のブレや発動位置を安定できるようにするための機械だ。魔法の命中率を上げる機械だな。操作方法だが俺のを見て学べ」
そんなめちゃくちゃな.....
「次、この機械は魔法の威力を増加させるための機械だ。ノックバックさせたりうまいことによっては壊せる場合もある。もっとも今のお前らじゃ無理だろうがな」
「あれぶっ壊してやろうぜ!クスクス」
「いいなあそれ!見せつけてやろうぜ」
魔法訓練の機械を見て昂ってる生徒たちを無視して次々と機械の説明をしていく。
「はい次ー..........................」
説明が終わると、いよいよ実践訓練が始まった。
「なんだこれ?!まともに動かねえぞっ!!」
しかし、中等部の頃から魔法が扱えた奴らでも機械はまともに動かなかった。
だが操作方法は至ってシンプル。
手をかざすところがあり、そこに手をかざし自分の魔力を流し込んで前にあるメタルの立方体を前進させるというもの。
「どうしたの?もうリタイアなんて情けないわね。あなたたち」
何人もの生徒が音を上げる中、一人余裕の表情の女がいた。
「加藤!お前そこまで言うなら動かしてみろよ!」
「まあまあ落ち着いて。自分がクリアできないからって私に当たらないでほしいわ」
「良い心掛けだな加藤。お前なら少し動かせるかもな」
Aクラス8番 加藤愛 ランキング7位
彼女はカージェ探索機関『サーチャー』の社長の令嬢である。『マスターベース』とはまた違ったことをしている。
「ふふっ、Mr久本が言うならやっても構わないわ」
加藤は機械の前へと行き、手をかざす。
「では、行きます!!」
加藤がそう、彼女の手から通常の高校生ではあり得ないほどの魔力が放出された。
その大量の魔力は訓練室の空気をしびれさせるほどに圧があった。
ゴゴゴォォォー--!!
皆が魔力の方に気を取られてると、メタルの立方体が前進し始めた。
「おいおいマジかよ....!俺らがやってもピクリとも動かなかったあの物体を動かしやがった....!」
「なんで動かせるんだよぉぉぉー--!!」
それを見ていた立方体を動かせなかった生徒たちは気を落とした。また彼女のすごさを改めて理解した。
また、こうも思った。
【これがランキングの判定】なんだと。
彼女の化け物じみた魔力と魔力体。まだ見せてない部分も含め、それを凌駕する存在が残り7名いることに絶望するクラスメイト。
「大丈夫!!まだ3年間あるんだから!!血のにじむ努力で頑張ろうぜ!」
Aクラス40番の山田龍雅が絶望してるクラスメイトを察して励ましの言葉をかける。
それを聞いて一旦落ち着いた様子を見せるクラスメイト達。
「そんな落ち込むことないだろう?俺らは1年の中で上位40名に入ってるんだから安心していけば大丈夫だ」
「そうだよな!!俺だって36位だけど普通にこの位置をキープすれば将来は確実だしな!」
確かに、このクラスって一番上なんだっけ。じゃあ俺も将来有望じゃん。
「そういえば君の名前って何?」
背後に迫るあの女から質問される。
「石川進。あんたは?」
「私は伊藤美雷。よろしく」
挨拶として俺に手を差し伸べてくる美雷。
彼女の手をよく見てみるとさっきの俺のスマホの液晶の破片がパラパラと......。
「ああ、よろしくー」
俺は自分の手を出さなかった。それが人間のすることだ。しかも普通の女の子は手に着いたゴミは振り払う。そこで俺は彼女に言ってみることにした。
「あの、手になんか付いてますよ...。痛くないんですか?」
「痛いに決まってんじゃーん。よろしく」
そう言ってまた手を差し伸べる伊藤。
わざとやってんの? 俺何か悪いことしたかな? してないよね。
「よろしく」
俺は3分間手を出し続ける彼女に負け、しばしば手を握った。
「敬語はいらないから」
痛いが、柔らかいな女の子の手は。
なんだかプラマイゼロみたいだ。
「石川もやってみたら? あそこの魔法命中率上げるやつ」
「俺は魔法得意じゃないんだよ。あいつらみたいに立方体が動かないだけだよ」
「私の見て勉強した方がいいんじゃない?」
伊藤は例の難しすぎる機械の前に立ち、手をかざし魔力を流し込む。さっきの加藤のように大量の魔力があふれることもなく伊藤の魔力は静かに流し込まれる。
ビュンッ!!
そして目にも止まらぬ速さで立方体は加速し、見事奥の的のど真ん中に命中した。
それを見たクラスメイトは固まっていた。何が起きたんだ?と全員が思ったことだろう。
しかも驚くべきところは的に穴が開いてるということだ。あの的は旧極小核ミサイルで壊れないほど固いといわれている。教師の中でも壊せない人がいるらしい。
「いいいい、伊藤さん?! あなた今何をしたの?!」
慌てふためいて加藤が伊藤に声をかける。
「うるさい。ただ魔力を流し込んだだけ」
それを聞くと、加藤は膝から崩れ落ちた。
目にハイライトが入ってないぞ?! 救急車呼んだ方がいいだろこれは。
「流石だ伊藤。みんな彼女を模範とせず自分のペースでやれ! 彼女を目標にすると絶望が待ってるぞ」
そんな久本の助言は生徒たちには聞こえておらず必死に魔力の機械で訓練をやり続けた。
「終了! 一限目はここまでとする。各自教室に戻り二限目の用意をしなさい」
みんな一限目とは思えないほどに疲れ切っている。教室に戻るときも足取りはとても遅く、顔はやつれ、肩を貸しあってるやつらもいた。
「美雷ー! なんで私のとこ来てくれなかったのー? ずっと寂しかったよー!」
約半数を除いて、疲れ切っていた。と言った方が適切かもしれない。
「ごめん。ちょっと訓練に集中しちゃってた」
「すごかったね! 美雷の魔力! まさに別格! って感じだったわー! 誰も敵わない最強マスターの姿が完璧に見えたよ!」
伊藤と今井が話してるところに3人の男子が入っていった。
「初めましてー。俺13番の佐々木天鳳っていいます! 今井ちゃんから聞いてる通り、近くで見ると眩しいくらい可愛いね君。一年間よろしくね」
Aクラス13番 佐々木天鳳 ランキング10位。顔と性格が王子様ということで中学校ではモテまくっていた。らしい
「あまりグイグイいくと嫌われるぞ佐々木。後ろから失礼、俺は波多野悠馬と言います。さっきの魔法命中率は感動しました。以後お見知りおきを」
Aクラス25番 波多野悠馬 ランキング14位。大企業会社の社長の息子。昔から魔法や、上の人間としての在り方を教わってきたため、まだ学園に慣れていない。
「僕も自己紹介良いかな?えーと、八条優斗です。好きなことは、えーとゲームです。よろしく」
Aクラス26番 八条優斗 ランキング13位。いつも気だるげで女子から小動物みたいで可愛いと評判。魔法もなかなかの腕で両親がどっちもマスターであり、自分もならなければと強い思いを抱いている。
「よろしく」
そこから教室であの5人は集まり話しはじめた。
俺もあんな友達が欲しい!でも遅刻したせいで!作れやしない!
そんな俺に声をかけてきたやつがいた。
「石川進君だね。僕は後藤康太って言います。よろしく」
「よろしく」
「早速だけどさ、君このゲームやってる?」
そう言って後藤はスマホゲームの画面を見せてきた。
画面には『ストーリーオブスペース』と書かれている。
それはっ!? 宇宙を舞台に敵を倒していくハントゲーム!!
「もちろんやってるとも。もちろん」
すると後藤は顔を思い切り輝かせてこちらを見てきた。
「もしかして!このフレンドにいる石川進って人!君なのかい?!」
「いいえ違いますー。人違いじゃないですか? ゲームの名前本名でやってる人とかただのアホでしょー」
さっと後藤のスマホの画面を見てみるとプレイヤー名に後藤康太って書いてある....。
こいつ本名かよ....。この気まずい空気どうしてくれんのよ。
もう仕方ない!
「嘘だよ! それ俺だけどなんか文句ある!」
「そうか! やっぱり! じゃあさ! ここ教えてよ!」
キーンコーンカーンコーン
丁度いいタイミングで2限目のチャイムが鳴ってしまった。
「それじゃあまたあとでね! 石川君!」
無邪気だなー。良い子だなー。
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