第2話 遅刻

ピピピピ!ピピピピ!ピピピピ!


朝のアラームが鳴り響く。


「進!朝よー!起きなさい!」


一階から母親の声が聞こえてくる。


まだ眠い...もう少し寝よう。


「進!遅刻するよ?早く起きなさい!」


二階に上ってきて部屋の前で起こしてくる母親。


「入るわよ!」


そう言って部屋のドアを開ける。


「まったくいつまで寝てんの!」


うるさい。めちゃくちゃうるさい...。


「わかった!起きる!」


そう言ってバッ!っと布団を放り投げる。


「最初からそうしろ!私もう行くから、あんたもしたくしなさい。初日から遅刻なんてやめてよ?つーか、やめろよ?マジで」


といって顔を鬼にする母。


朝早くからその顔ができる母さんはすごいなー。


「ていうか!そこで一緒に寝てるアホ二人も起こしといて!朝ごはん用意してあるからさっさと食ってさっさと行け!」


と言いドアを力強く閉め出て行った。


「..........」


この二人どうしよう....。とりあえず起こすかー。


「ゔん!ゔゔん!ゴガァァ!!」


タン絡んで声でない。水飲みに行こう。


「よいしょっと」


自分に覆いかぶさってる邪魔者二つを押しのけて一階に行く。

そこには食卓に座って新聞を読んでる父親がいた。


「おはよう進。学校間に合うのか?今日初日だろう?」


声が出ないので無視して冷蔵庫から水を取り出す。


「ねえねえ無視ってやばくない?どういう神経してるのかな?父親!俺父親!おっかしーなー」


親父....


コップを取り出し、水を注ごうとする。


それを親父は引き止める。


「おいおいその水おいしそうだねー。俺にも頂戴よ」


ゴクゴクッ


俺が持っていた2リットルの天然水を横取りし、飲み口に口をつけてすべて飲み干す。


いや何してんねん。俺の水......。


「ぷはー!美味しかった!こんなうまいもん初めてだ!さあ!朝食を取ろう進」


背中を押され椅子に案内される。


「っ?!」


驚くべきことに朝食に水がついていた。


ありがたやー。


「おっ!これもしかしてさっきの水かー?飲んじゃお」


ゴクゴクゴクッ


マジか......。


「今日はやけに静かだなー!いつもはうるさいのに!」


俺は時計の針を指さす。


「ん?時計?」


親父は振り返った瞬間、顔を変えて家を出て行った。


出ていく瞬間親父の口から「終わった.....」と聞こえた。


バシャッ!


ガラガラガラーペッ!


顔を洗い、うがいをして朝の用意をする。


歯磨きを済ませ、朝食をとる。


自分の部屋に戻り、新品の学校の制服に着替える。


「おー。なかなか似合ってる」


そしてあの二人を起こしに行く。


「おーい!起きろ!俺の部屋で寝るな」


そういうと、「うぅ」と虚ろな声を上げて起きた。


「なんでお兄ちゃんの部屋に私いるの?」


「お前が来たんだよ」


「そんなわけないでしょ!ぶっ飛ばすぞ!」


と蹴ってくる。


俺はそれを颯爽と避けることなくあたり、後ろにふっとんだ。


ドゴォォォ!!


「何やってんの。明里」


そのでかい音でもう一人の妹が起きた。


「お兄ちゃんが私を夜に部屋に連れ込んで!私を襲おうと!」


「そういえばなんで私兄さんの部屋にいるの?もしかして私も襲おうと.....?」


二人から威圧的な視線を向けられる進。


ここは何を言っても怒られそうだ。ならここは一旦距離を取って、無視する!!


そのまま進はふらーっと部屋を出ていく。


「「待てやゴラ!!!」」


うわっ!妹二人がゴリラにしか見えない!!


「何回目だこの野郎!!」

「しばかれてーのか?!」


妹たちよ.....戦闘でお兄ちゃんに勝てるとでも?


「はぁー、かかってきなさい小さき者たち」




ボコ!バキ!グシャ!ドガ!!


「行こう由良」

「うん」



とまあこんな感じで今の時刻が9時ちょうど。


「確か始業式の開始時間が9時2分だったっけな」


2分ってめっちゃ微妙だな。


「とりあえず急がないと母さんに殺される」


俺は命の危機を感じながら急いで家を出る。-


その時、俺は重大なことに気づいた。それは登校時に電車を使わなければいけないことだ。自宅から学校までの距離は数10キロある。歩いていては間に合わないというわけだ。それも2分では。


必死に走り、改札を通って駅のホームで電車を待つ。


備え付けの電子時計を見てみると、そこには9時5分と記されていた。


「遅刻確定だな。母さんごめんよ、でも殺しはしないでくれ」


次の急行電車に乗れば学校には9時30分に着く。始業式には間に合わなかったけど、そのあとのクラスの行事とかには間に合うと思う。

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