第37話 四日目

 勝負は引き分けだったが、お互いにヘロヘロになるまで身体を動かしたおかげで、腹に溜まったムラムラはかなり発散で来た。


 これなら残りの日数もなんとか耐えられるかもしれない。


 特に明日と明後日は休日で、禁欲プレイ最大の難所とも言えた。


 この感じなら大丈夫そうだが、もしヤバそうならまた卓球をしようとお互いに約束し、遊馬は帰宅した。


 久々に穏やかな気持ちで雫とラインをして、日増しに過激になるエッチな自撮りを拝領する。


『ずるい! また二人でいちゃいちゃして! 浮気だよ! 私は一人で必死に我慢してるのに!』

『雫に比べたらこんなの浮気でもなんでもない。大体、雫が俺達をムラつかせるのが悪いんだろ?』


 いつまでもやられてばかりの遊馬ではない。


 雫に攻められた事でその分遊馬も成長していた。


 もはやお互いに、浮気なんて言葉に大した意味がない事は分かっていた。


 だって常時浮気しているような物なのだ。


 むしろお互いに浮気をして、嫉妬させ合う事を楽しんでいる節さえある。


 近頃めっきり生意気になったドスケベ彼女をイジメるのはいい気分だ。


 雫だってそれを望んでいるとなんとなくわかった。


『あぁ! ひどい! 遊馬君の意地悪!』

『でも感じてるんだろ?』

『うん! 私も遊馬君に罵って欲しかったから。はぁ、早く禁欲プレイ終わらないかな。もう、濡れすぎてずっと尿洩れパットつけて生活してるよ』

『本当にどうしようもないメス豚だな』

『ぶひぃ! ぶひぶひ……。遊馬君もSの楽しさに目覚めてくれたみたいで嬉しいです』

『結局雫の掌か』

『だって変態なんだもん。変に隠すより、開き直って楽しもうと思って。じゃないと私達、きっとダメになっちゃうから……。ダメな彼女でごめんね?』

『いいんだよ。そんな雫が好きなんだ』

『私も。こんな変態を愛してくれる遊馬君が大好き』


 これ以上はまたムラムラしてきそうなので、その辺でラインは打ち切った。


 それに、疲れていて眠かった。


 半ば寝落ちのような感覚だ。


 それなのに、なぜか相棒がギンギンに勃起していた。


 爆発しそうな程に熱を持ち、耐えがたい疼きを発している。


 それで遊馬は、疲れマラという言葉を思い出した。


 極度に疲れていると、意味もなく勃起することがあるという。


 残念だったな相棒。


 俺はもうヘトヘトだ。


 気にせず遊馬は眠りに落ちた。


 †


 じゅっぽ、じゅっぽ、じゅっぽ、じゅっぽ。


「……んぁ?」


 奇妙な感覚と共に目が覚める。


 遊馬は全裸に大の字でベッドに縛り付けられていた。


「ど、どうなってるんだ!?」


 そして相棒がものすごく気持ちいい。


「ぷぁ。遊馬君起きた? おはよ~」


 開いた股の下に全裸の雫がいた。


 どうやら寝てる間に相棒をしゃぶっていたらしい。


「し、雫!? なにやってんだ!?」

「夜這い? 朝だから、朝這いかな?」

「禁欲プレイ中だぞ!?」

「そうだけど。遊馬君が青葉ちゃんとイチャイチャするから我慢できなくなっちゃった」


 こってり膨らんだ玉を揉み揉みしながら雫が言う。


「ダメだろ!? てか、こんな所家族に見られたらヤバイって!?」

「大丈夫だよ。遊馬君のお父さんもお母さんもお買い物でいないから。今この家にいるのは私と遊馬君の二人だけ」

「いやだから、禁欲プレイ中だぞ! こんな事したら伏見に怒られるだろ!?」

「そんなの勝手に怒らせとけばいいでしょ? 青葉ちゃんなんかただのセフレなんだから。二人で黙ってればバレないよ」

「そ、そうだけど……」


 雫の口からそんな言葉が飛び出すとは思わなかった。


 歪んだ友情だとしても、雫はちゃんと青葉の事が好きなんだと思っていた。


 だから遊馬だってこの関係を認めたのだ。


 それだけ大事に思っている友人を無下に扱えとは言えなかった。


 今にして思えば、優しさではなく問題から逃げただけだったのかもしれないが。


 なんにしろ、雫の言葉に遊馬は少し幻滅した。


 だってそんなの最低だ。


 青葉はあんなに本気なのに、雫は気のある振りをして都合よく弄んでいる。


 なのにどうしようもなくホッとした。


 雫にとって青葉はただの性処理用の肉バイブ。


 本命は間違いなくダントツで遊馬なのだ。


 そう思うと、どうしようもなく嬉しくて興奮した。


「ねぇ、いいでしょ? 馬鹿正直に禁欲してる青葉ちゃんに内緒で二人で死ぬほどちょめちょめしたら、最高に気持ちいいと思わない?」


 立ち上がった雫が尻を向け、雫自身を見せつけるように腰を揺らす。


 疚しさはあるが、それが快感を増す最高のスパイスになる事は分かっていた。


 大体、断る理由なんかない。


 元々雫は遊馬の彼女なのだ。


 それをあいつが横取りしたんだ。


 なら、今度は俺があいつから寝取ってやる。


 卑怯な寝取り女に義理立てする必要なんかない。


 だから遊馬は頷いた。


「まったくもってその通りだ。むしろ、その言葉を俺は望んでいた」

「悪い遊馬君」


 向き直った雫がゆっくりと相棒に腰を下ろす。


「お互い様だ――お、ぉぉおおっ」


 燃えるように熱く柔らかな雫自身に抱擁されて、遊馬は一瞬で果てそうになった。


「だ、だめだ雫! 気持ちよくて、もう出ちまう!?」

「はぁ? ダッサ。いくら何でも早漏すぎでしょ」

「え?」


 雫が青葉になっていた。


「裏切り者。今度はあんたを寝取ってやる。ほら、間女の中でいっちゃえよ!」

「やめろおおおおおおおおおおおお!?」


 †


「ぉおおおお!?」


 絶叫と共に跳ね起きる。


 夢だった?


 なんてホッとしている暇はない。


「ま、待て相棒! そ、それはまずい!?」


 相棒は完全に発射体勢に入っていた。


 なんなら秒読みを開始している状態だ。


 だ、だめだ! ここで出したら負ける! 終わってしまう!


 遊馬は必死に尻の穴を絞めて込み上げるリビドーに抗った。


 普通なら、一度こうなったらどうしようもない。


 どうあがこうが、ビュビュっと飛び出してしまうのが男という生き物である。


 だが、遊馬は例外を知っていた。


 早漏を直す為、雫の協力で強制寸止めプレイをしたことがある。


 相棒の首根っこを思いっきり締め上げて、物理的にリビドーを押し戻すのだ。


 めちゃくちゃ苦しい上にお腹が気持ち悪くなるのですぐにやめたが。


 今回もそれで凌げるかもしれない。


 そう思って相棒を握るが、すぐに無駄だと悟った。


 鋼のように硬くなった相棒は、うるせぇ絶対に出す! という断固たる意志で猛っていた。


 無理に封じようとすれば、込み上げたリビドーの圧力で爆散するだろう。


 もはや出てしまうのは仕方ない。


 せめて遊馬は男の尊厳を守ろうとした。


 高二にもなってパンツの中に男汁をお漏らしなんて恥ずかしすぎる。


 生憎近くにティッシュもないので、遊馬は相棒を握りしめてトイレにダッシュした。


「ふぉおおお!?」


 サポーターパンツが仇になった。


 ズル剥けリングによって剥き出しになった相棒がスベスベの生地によって刺激される。


 急がないといけないのに急げない。


 こうしている間にも、相棒からは先走りが零れていた。


 最悪皮で包んで第一波を受け止めるという方法もあったのだが、リングのせいでそれも出来ない。


「ふーっ、ふーっ、ふーっ……。頼む相棒……もう少しだけ耐えてくれ……」


 必死の想いでトイレのドアに手をかけるが。


「ぉ、ぉほ、おほぉ……」


 間に合わず、パンツの中に熱い物をぶちまけた。

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