第35話 三日目の朝
「……酷い顔だな」
「……お互い様でしょ」
唸るように言葉を交わすと遊馬はぐったりと席に着く。
雫の猛攻に耐えながらどうにか二日目を乗り切った。
だが、遊馬は既に限界だった。
三日分の弾丸を貯めこんで腹の中の弾薬庫は爆発寸前。
飢えた相棒は些細な事で反応し、止める間もなく起立する。
このままでは間違いなく怒張した相棒によって社会的死を迎えるので、昨日の放課後急遽
伸縮性に富んだボクサータイプのピッタリパンツは相棒を力強く拘束し、万一暴走モードに入った時も斜め四十五度に勢いを逃がしてもっこりを隠してくれる。
お陰で見た目の問題は解消されたが、今度は別の問題が発生していた。
サポーターショーツの中で相棒が起立すると気持ちよくなってしまうのだ。
禁欲によって相棒は普段よりも狂暴になっている。
サイズは一回り、硬度も一段階アップしてパンパンに腫れあがって熱っぽく疼く。
そんな状態でピッタリパンツに押さえつけられたらセルフ腹ズリ状態になってしまう。
激しく動こうものなら間違いなく暴発してしまうだろう。
学校でそんな事になったら破滅である。
分かっていても相棒の疼きは耐えがたく、ついつい身動ぎをして甘い快楽を貪ってしまう。
だが、達するわけにはいかないので余計に切なくなるだけだ。
完全に生殺しである。
煮えたぎるマグマのようなムラムラの捌け口を見つけなければ、今晩中にも禁を犯してしまうだろう。
早急にどうにかしなければ。
遊馬は授業そっちのけでこの状況を打開する方法を考えた。
†
『伏見。放課後ちょっといいか』
『無理』
ホームルームが終わった後にラインを送ると、素っ気ない返事が返ってきた。
今日も雫は遊馬をお昼に誘って誘惑していた。
ムラムラのイライラに加えて、二日連続でのけ者にされて青葉は拗ねているらしい。
『雫の事で怒ってるならあいつの思うつぼだぞ。雫は俺達が協力しないようにわざと俺だけ構って伏見を嫉妬させてるんだ』
『そんな事分かってるし! 分かってるのにムラムラすんの! 放置されてんのに超興奮しちゃうの! もうやだ、おかしくなりそう! 助けてよ!?』
向こうの席では憔悴した表情の青葉がガジガジと親指の爪を噛んでいる。
遊馬は同情した。
遊馬が授業中にピッタリパンツの中で勃起して興奮する新たな性癖に目覚めたように、青葉は放置プイレに目覚めたらしい。
雫に禁欲を強いるはずが、逆にこちらが開発されてしまっている。
『落ち着け伏見。気を確かに持つんだ。ムラムラをどうにかする方法を考えた。お前の力が必要なんだ』
ガタン。
青葉が立ち上がってこちらを向いた。
クラスメイトの奇異の視線で我に返ったのか、咳払いをして座りなおす。
『どんな方法?』
『今日ずっとそのことだけを考えてたんだ。それで、前に読んだとある漫画の話を思い出した』
『既に嫌な予感しかしないんだけど』
『まぁ聞け。山小屋の中で男達がラッコ鍋を囲むんだが、ラッコ鍋の匂いには催淫作用があって全員発情してしてしまうんだ』
『はぁ?』
『なにを言ってるんだと思うだろうが俺もその回を読んだ時は何を見せられているのかと思った。でも面白いんだぞ? 笑いあり涙ありの熱い話なんだ』
『それはいいけど、なんでBL漫画なんか読んでんの? そっちの趣味もあるの?』
『違う! 普通に少年誌でやってる漫画だ!』
『いや、だって、男達が発情する漫画なんでしょ……』
『発情するだけでチョメチョメはしない。男達はムラムラによるピンチをとある方法で解決するんだ』
『もったいぶらずにさっさと教えて』
『相撲だ』
『バカでしょ』
『大真面目だ』
『だったら余計にヤバいから。あたしは女であんたは男でしょ? 相撲なんか出来ないし、百歩譲ってしたとしても相撲じゃ余計にムラムラするだけでしょうが』
『相撲である必要はない。この話の本質はムラムラはスポーツで解消出来るという事だ。チョメチョメはベッドの上のスポーツという言葉もあるだろ? スポーツで真剣勝負をすれば身も心もスッキリするはずだ』
『本当に?』
『いやわからんが。やってみる価値はあると思う。どの道このまま家に帰ったら性欲を持て余して絶対に相棒を握ってしまう。スッキリしなくてもチョメチョメする気が起きないくらい疲れたらどうにかなるだろ。どうだ、試してみないか?』
『まぁ、あたしもこのままじゃしちゃいそうだし、やってみてもいいけど。スポーツってなにすんの?』
『なにがいいと思う? 二人で出来て身体が触れ合わない激しいスポーツがいいと思うんだが』
『……ヤバい。二人で出来る激しいスポーツってワードだけでムラムラしてきた』
『やめろ! ムラムラがうつるだろ! 余計な事を考えるな!』
『……ごめん。でも思わなかった?』
『思った』
『でしょ!?』
『いいから話に集中しろ!』
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