第28話 それからの話
「って事がありまして。一緒にAV見たりお風呂に入ったりテイクアウト食べたりしつつ、なんだかんだ十回以上しちゃったの。やっぱりホテルっていいよね。好きなだけ暴れられるし、声も我慢しなくていいし、色んなお汁の心配もしなくていいし。って、青葉ちゃん、聞いてる?」
「ふぐぅうう! ふぐぅぅうう!? っぷあぁ!? ギャグボール噛まされてたら答えられるわけないでしょ!?」
「そうだけど。拘束プレイしてみたいって言い出したのは青葉ちゃんでしょ?」
「べ、べつにあたしがしたかったわけじゃないし! 雫を気持ちよくさせる為の研究だから! 攻められる側の気持ちが分からないと上手く攻めれないし……。もうわかったから拘束具外してよ!」
「だーめ」
「むがっ!? ふぐぐ!?」
「遊馬君がいっぱい頑張ってくれたからいつもより満足してるの。その分今日は青葉ちゃんを満足させてあげたいなって」
「ふぐぐぐ!? ふぐぐぐぐぐ!?」
わめく青葉の頬を雫が叩いた。
「煩いよ青葉ちゃん。家なんだから。近所迷惑でしょ?」
「ふ、ふぐぐぐ……」
反抗的な目は一瞬で大人しくなり、恐怖で涙ぐむ。
「はぁ、可愛い。ムラムラしちゃう。本当は青葉ちゃん、こういうのが好きなんでしょ? 私を攻める時、いっつも羨ましそうにしてるもんね。終わった後も物足りなそうだし。攻められたいなら素直にそう言えばいいのに」
「ふぐぐぐぐ! ふぐぐぐ――」
パンッ!
「煩いってば」
すすり泣く青葉の下半身に雫の手が伸びる。
「いやならどうしてこんなに濡れてるのかなぁ?」
「――っ!」
顔を背ける青葉の髪を引っ掴み、無理やり前を向かせる。
「前から思ってたけど、青葉ちゃんってどうしようもない変態だよね。しかもレズで寝取り魔。恥ずかしくないの?」
「ふぐ、ふぐ、ふぐぅぅ……」
「泣く程嬉しかった? さっきだって、遊馬君との惚気話を聞いて興奮してたし。むしろ青葉ちゃんの方が寝取られ好きなんじゃない?」
「ふぐぐ! ふぐぐぐ!?」
パンッ! パンッ! パンッ!
「煩いってば。何度言ってたらわかるの? それくらい子供でも分かるよ? あぁ、そっか。私に叩いて欲しくてわざと騒いでるんだ?」
「ふぐぐ、ふぐ……」
「そんなに叩いて欲しいなら望み通りにしてあげる。遊馬君が買ってきたアダルトグッズの中にバラ鞭があるの。本当は遊馬君にしたいんだけど、その前に青葉ちゃんで練習してあげるね?」
「ふぐぐっ!? ふぐぐぐ!?」
「いやならいいんだよ? 青葉ちゃんの嫌がることはしたくないから。勘違いだったら悪いし」
「…………」
「なんで黙っちゃうの?」
「…………」
「して欲しいんでしょ?」
「…………」
「黙ってちゃわかんないよ?」
「…………」
「して欲しいならここにきてお尻を出して」
嗚咽を噛み殺す青葉を前に、雫はゆっくりとファイブカウントと数えた。
残り一秒で青葉が動き出し、芋虫みたいに這って雫の膝の上でお尻を晒した。
†
「うぇ、えぐ、えぐ、ひっぐ……」
「青葉たん、よくがんばりまちたね~。痛いのはもう終わりでちゅよ~」
膝の上で丸くなって泣きじゃくる青葉をあやすように、雫は左の手で頭を、右の手で真っ赤に腫れたお尻を撫でた。
頭を撫でると青葉は気持ちよさそうに身震いをして、小さな尻を撫でると電流が流れたみたいにビクビクと腰を震わせた。
暫くの間、青葉は親指を口に咥えたまま、赤ん坊みたいに雫に身を任せていた。
十分程すると不意に泣き止み、俯いたまま雫の膝から起き上がった。
「満足した?」
女神のように慈悲深い笑顔で雫が聞く。
先程までサディスティックな冷笑を浮かべて鞭を振るっていた人間と同一人物とは思えない。
青葉は俯いたまま黙り込み、暫く経ってから微かに頷いた。
「よかったぁ~。勘違いだったらどうしようって不安だったから」
ほっとしたように雫が胸を撫でおろす。
青葉はキッ! っと顔をあげた。
「し、雫が悪いんだよ! 変なプレイばっかりやらせるから、あたしまで変態になっちゃったじゃん!?」
「変態プレイを始めたのは青葉ちゃんだと思うんだけど?」
純粋な顔で言い返されて、青葉は「うっ」と呻いた。
確かに特殊プレイを始めたのは青葉だ。
「……だって、滝沢よりも気持ちよくさせないと、あたしがいる意味なくなっちゃうじゃん……」
雫の本命はあくまでも遊馬だ。
青葉は性のピンチヒッターとして存在を許されているだけに過ぎない。
遊馬は早漏だし愛撫のテクも拙い。
けれど真面目で一生懸命だ。
性に対する好奇心も旺盛で挑戦的でもある。
雫と寝る度に遊馬の上達を聞かされる。
青葉は焦った。
だって、青葉に出来る事は遊馬にも出来る。
一方で、相棒を持たない青葉には、遊馬に出来る事が出来ない。
チョメチョメのテクで遊馬に抜かされたら、青葉はお払い箱だ。
そんな風に思って、青葉は遊馬の先を行こうとした。
遊馬がまだ手を出していないプレイを行い、よりハードなプレイを実践した。
幸い姉はエロ漫画家だ。
姉のいるマンションに行けば資料には事欠かない。
変態で中卒で引き籠りだが、両親よりも稼いでいる姉だ。
青葉なりに姉を尊敬していたし、なんだかんだお姉ちゃん子で懐いている。
そんな姉に相談がてら愚痴なんかを聞いて貰っていると、変態チックな事を吹き込まれる。
コミュ症で変態の姉は、青葉を使ってエロ漫画のネタを集めようとしている節がある。
青葉の事を案じているのは本当だろうが、隙あらば仕事に利用しようとしてくる。
職業病という奴なのだろう。
ともあれ、そんな諸々で、青葉はSMプレイに手を出した。
優しい遊馬には雫を叩くなんて出来ないだろう。
青葉だって心苦しいが、雫はドMなので喜ぶことは分かっていた。
姉のバイトで購入した道具を使い、縛って叩いて言葉攻めにする。
さっき雫にされたような事を、青葉だってやっていた。
攻められている時の雫のいやらしい顔ったらない。
最低のアバズレのド淫乱二股女とか言われて泣きながら興奮するのだ。
流石の青葉もドン引きだ。
……と、そんな風に思える感性を持っていたら、こんな爛れた関係に陥ったりはしていない。
全力で否定しても、内心では羨ましいと感じてしまう。
ギャン泣きする程暴力を振るわれ、心を抉られるような事実を突きつけられて、やめてと言ってもやめてもらえず、限界すれすれまで攻められた後に優しくあやされたい。
どう考えても変態なのに、絶対に気持ちいいと分かってしまう。
雫だけじゃなくて、あたしだって気持ちよくして欲しい。
そんな贅沢を言える立場でない事は分かっている。
でも、ムラムラするのだ。
身体ではなく心が満たされない。
ムラムラとは、ただ性器を刺激すれば満たされるというものではない。
それ程単純なら、姉のようなエロ漫画家はお役御免だ。
人は誰しもどうしようもない性の欲望を抱えていて、その捌け口を求めているのだ。
いや、そんな高尚な話ではないかもしれないが……。
自分はSだと思っていたが、違ったらしい。
雫に罵倒されて叩かれると、寝取り女の罪悪感が軽くなる。
その後に甘やかされると、自分だって遊馬のように愛されているんだと勘違いできる。
そんな風に思う自分こそ、浅ましく卑しい本物の変態だと思う。
でも、心が苦しい。
そして、実際にやって貰ったらマジで最高に気持ちよかった。
これは完全にハマってしまった。
いつも優しい雫に罵倒されるのは脳が破壊される程辛い。
鞭で叩かれたお尻はジンジンと熱を持って、巨大な性感帯になったようだ。
「そんな事ないよ。青葉ちゃんの事だって、私はちゃんと好き。そうじゃなかったら、付き合うなんて出来ないよ」
巨大なおっぱいで包み込むように、雫が青葉を抱きしめる。
気持ちは嬉しい。
でも、どっちかを選べと言ったら、雫は間違いなく遊馬を選ぶだろう。
泣きながら地面に頭を擦りつけて詫びつつも、結局は男を選ぶのだ。
まぁ、男女がどうという事ではなく、愛と友情の差なのだろう。
だから青葉もどっちが好きかなんて聞かなかった。
そんな事をしても、お互いに辛いだけだ。
……ていうかあたし、雫に開発されちゃってない!?
雫が青葉の手に負えなくなってきている。
そっちの方が大問題だ。
――――――――――――――――
一応気を使っているとはいえ、まだ警告が来てない事に驚いています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。