第26話 裏切られた思い
デートの日がやってきた。
思えば普通のデートなんか久しぶりだ。
駅前で待ち合わせる。
五分前に着いたのだが、雫の方が先に来ていた。
チャラついた大学生にナンパされていたので適当に追い払う。
楽しみ過ぎて雫は三十分前に来てしまい、その間にしつこくナンパされていたらしい。
ただでさえ可愛い上に、最近は普通にしてても女の色気がムンムンしているので、仕方ないと言えば仕方ないのだろう。
なんて納得出来るわけもなく、ぷりぷり怒る雫と一緒に、遊馬もナンパ野郎の文句を言った。
雫は爽やかな水色のワンピースで、性欲モンスターとは思えないくらい清楚に見えた。
そのギャップがエロ可愛い。
二人で仲良く手を繋ぎ、映画館に向かう。
雫と寝るようになるまでは、遊馬はあまり手を繋がなかった。
当時は雫の事を初心で清楚な女の子だと誤解していたから、嫌われたくなくて相棒が興奮するような接触は避けていた。
今は何の心配もなく、自然に手を繋げる。
チョメチョメだってしているのだから、手を握っただけで以前のように簡単に興奮する事はない。
……と言いきれればよかったのだが。
やっぱり大好きな雫と手を繋いでいると、相棒はちょっと反応してしまう。
雫も普通に雑談しながら、ねっとりと愛撫するように繋いだ手で掌を揉んだり、指先で求めるようにかりかり引っかいたりしてきた。
仕返しに遊馬もやり返す。
手を繋いで街中を歩いているだけなのに、なんだかいけない事をしているような気分になった。
でも、悪い気分じゃない。
普通に楽しいし幸せだ。
特に約束はしていないが、デートが終わったらいっぱいチョメチョメしようねと誘われているみたいで嬉しい。
上映時間までは三十分程あった。
雫は早めに映画館に行って、パンフレットを買ったり上映中の映画のチラシを一通り貰ってあれこれ喋るのが好きなのだった。
そして遊馬も、そんな雫が好きだった。
以前はそれだけだったが、今はそこに悪戯のような愛撫が加わった。
さり気なく雫が胸を当てたり、お尻を撫でたりしてくる。
遊馬は相棒を宥めながら、同じようにこっそり雫に触れた。
人目のある所でそんな事をするのは、悪いことをしているみたいでドキドキする。
シアタースペースに入ると、雫のお触りは激しさを増した。
ひざ掛けを目隠しに使い、お尻や太ももなんかをサワサワしてくる。
悪戯な小人みたいな手はどんどん近づいてきて、最終的にはお腹の下をカリカリひっかいた。
遊馬もやり返したかったが、平静を保つので精一杯だった。
映画が始まると雫の悪戯はピタリと止まって、そんな事はなかったみたいに映画に熱中していた。
面白い映画だったが、遊馬は切ない気分だった。
いけない事なのに、もっと雫に触って欲しい。
薄明りの中で、腫れた相棒がむず痒く熱を帯びていた。
映画が終わったらそのまま商業ビルのレストラン街で遅めの昼食をとった。
紅葉のお陰で懐は必要以上に温かい。
普段は入れないような高い店で奢りたい気持ちもあったのだが、バイトの事がバレると怒られそうなので、結局いつものファミレスに入った。
雫は映画に満足したようで、興奮しながら感想や解釈を熱っぽく語った。
一方で、テーブルの下では真っ白い生足が別の生き物のように遊馬の足に絡んでいた。
遊馬はたまらない気分だった。
残りの予定をすっ飛ばして今すぐホテルに行きたい。
でも、そんな事は恥ずかしくて言えなかった。
もどかしいけれど、そんな風にじらされるのは嫌ではない。
遊馬も平静を装って会話を続けた。
二人で芝居を演じているような気分だった。
食事が終わると買い物が始まった。
もうすぐ夏休みだね~なんて喋りつつ、雫に付き合って女物の服屋に入る。
色んな女性がいたけれど、一番かわいいのは雫だった。
しかもドスケベの変態彼女だ。
そう思うと余計に興奮した。
雫の服を一緒に選び、試着に付き合いながら、隙あらばいちゃいちゃした。
長い買い物だった。
雫は挑発するようにエッチな服を選んで見せた。
そんな服人前で着られないだろ、なんて笑い合いつつ、二人だけの時なら着て欲しいと思った。
雫が意味深な薄笑いを浮かべて、お尻がはみ出しそうなホットパンツを籠に入れた。
どっちが払うかで少し揉めて、ちょっと強引に遊馬が出した。
雫の為にお金を使えば、その分だけ後ろめたさが減る気がした。
その後は夏休みには海に行きたいね~なんて話しつつ、水着を売っている店に入った。
あれこれと夏休みにやりたい事を話しつつ、お互いに水着を選び合う。
ビキニなんか履いたら、遊馬君はすぐポロリしちゃうね、なんてからかわれた。
わぁ、これ、全然隠れてないね!
そう言って雫が手に取ったのは、ほとんど紐みたいな水着だった。
裸だって見た事があるのに、想像したら喉が鳴った。
でも、別にそんなエッチな水着じゃなくても雫なら十分エッチだと思った。
見るだけ見て、結局水着は買わなかった。
このテンションで水着を選んだら、とんでもない物を買ってしまうとお互いに分かっていた。
それでもいいと遊馬は思った。
エッチな水着の一つや二つ、喜んで買ってやるのに。
海では無理だが、ベッドの上で着て欲しい。
その頃には遊馬の頭は完全にピンク色だった。
もういいだろ?
ねだるような視線を向けても雫は知らん顔で、下着屋さんを見たいなんて言い出すのだ。
それで、今度は急にエッチになって、遊馬君はどんな下着が好みなの? なんて聞いてきた。
なんだっていい。
どうせ脱がすんだから。
お猿さんになりそうな自分を必死に抑えて上辺を取り繕った。
紐みたいな下着、スケスケの下着、大事なところが丸出しの下着、こんなに色んな下着があるんだと遊馬は驚いた。
頭の中では、下着姿の雫がファッションショーを開催している。
長すぎる買い物が終わると夕方になっていた。
二人でアイスを食べて、いよいよホテルだと遊馬は思った。
「それじゃあ、今日はこの辺で」
「え? なんで?」
ショック過ぎて、遊馬は思わず言ってしまった。
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