第19話 俺と寝取った奴とやり手のギャル

「っすねー。お客さんの予算だとこの辺がいいんじゃないっすかー」

「り、理由を聞いてもいいですか?」

「安くて人気なんで」


 ギャル店員のやる気のない返答に、遊馬は向こうのローションコーナーを物色している青葉に視線を向ける。


 だったら自分で選べ! と拗ねてしまった青葉は、遊馬の視線に気づいてもぷいっと顔を背けるだけだ。


 青葉が怒るのも当然だが、遊馬の気持ちにもなって欲しい。性のライバルと同じバイブというのはなにかこう負けたような気分になる。青葉と同じバイブでは面白みがないし、奇襲作戦も効果半減だ。


「彼女さんがいるんなら本人と相談したらいいとおもうんすけど」


 青葉に視線を向けながらギャル店員が言ってくる。

 あれだけ騒げば青葉が女だという事はバレるだろう。

 それで勘違いしたらしい。


「いや、あいつは彼女の友達みたいなもんで、俺が初心者だから付き添いを頼んだんですけど、怒らせちゃったみたいで」

「彼女のセフレっすか」


 眠そうな顔でいきなり言われ、遊馬の心臓が跳ねた。


「ざっくり聞こえてたんで。お兄さんも大変っすねぇ」

「ま、まぁ、そんな感じで……」

「よかったら相談乗りますけど。仕事なんで」


 そう言われてもと思いつつ、他に頼れる相手もいない。アダルトショップの店員なら言ってしまっても問題ないだろう。そう考え、遊馬は掻い摘んで現状を語った。


「ヤバ。それなんてエロゲっすか。じゃーお兄さん、バイブだけじゃダメっすよ」

「そ、そうなんですか?」

「そうっすよ。彼女さんは淫乱ドスケベのラブラブチュッチュモンスターなんすから。そんなバイブ一本じゃ太刀打ち出来ないですって。逆に武器を奪われて利用されちゃうかも」

「た、確かに……。でも、それじゃあどうしたらいいんですか?」

「そこでプレイの力っすよ」


 ギャル店員が人差し指を立てる。


「プレイ、ですか?」

「プレイっす。上手く使えば早漏彼氏のお兄さんでも淫乱彼女さんをコントロール出来ますよ」


 ちょっと引っかかる物言いだが、悪気はないのだろう。

 ギャルという事で納得しておく。


「く、詳しく教えてください」

「もろちんっす。プレイってのはセックルにおいて行動制限みたいなもんす。プレイによって制約を課して相手の行動を制御するんす。例えば赤ちゃんプレイ」

「ど、どうしてそれを!?」

「ほぇ? お兄さんも好きなんすか? いーっすよね赤ちゃんプレイ。自分もパイオツカイデーのチャンネーのビーチクに吸い付いてバブりたいっす」


 ただの藪蛇だったらしい。


 でも、こんな可愛いギャル店員でも赤ちゃんプレイが好きなんだと思うと、遊馬はちょっとホッとした。恥ずかしさはあるが、本音では遊馬も嫌ではないのだ。


「プレイを課す事でお兄さんはバブちゃんになって彼女さんのいいなりっすよね? なら逆に、お兄さんもプレイを課して彼女さんをいいなりにさせたらいいんす。エッチな彼女程効果的っす」

「……つまり、俺がママになると?」

「パイオツの代わりに愛棒吸わせちゃったりしてー。って、なんでやねん!」


 ギャル店員がノリツッコミを入れる。


「今のお兄さんじゃ逆転されるのがオチっすよ。もっと拘束力の強いプレイにしないと」

「と、いいますと?」

「そのままズバリ、拘束プレイっす」


 そう言うと、ギャル店員はエプロンから手錠を取り出した。


「拘束プレイだって言ってこれをつけて、一方的に攻めちゃえばお兄さんでも逆転される心配はないっすよね?」

「確かに……。でも、そんなに上手くいきますか?」

「もろちん! 健気な早漏彼氏が小道具まで用意してお願いしに来るんすよ。これで断る奴は淫乱じゃないっす」

「なるほど……」


 ギャル店員の言葉には説得力しかなかった。こと、エッチな事に関しては雫は好奇心の塊だ。隙あらば遊馬の性癖を開発しようとしてくる。今は完全攻めモードだが、青葉の話では元々はMでされるのも大好きという事だ。拘束プレイだってすんなり受け入れてくれるだろう。


「うん。いけそうです! ちなみにその手錠、おいくらですか?」


 値札を見せられ、遊馬はちょっと焦った。


「結構しますね」

「痛くないように内側がシリコンになってるんで。可愛い彼女の為を思えば安い買い物っすよ」

「た、確かに……」


 チョメチョメ中の雫は暴れ牛のように乱れる。

 安物の手錠なんかして怪我でもさせたら大事だ。


「予算を聞かせて貰えればその中でいい感じに揃えますけど」

「お願いします」


 即答した。なんと言ってもギャル店員はその道のプロだ。

 青葉と同じかそれ以上に頼りになるだろう。


「じゃーバイブはこれでローションはこれでー。お兄さんチントレしてるんすよね。じゃあオナホとかいいんじゃないっすか?」

「なんですか、オナホって」

「人類のエチチが生んだ人工チョメチョメっすよ。早漏のお兄さんにはいい練習になるんじゃないっすか?」

「確かに! それもお願いします!」

「まいどあり~」


 そんな感じでどんどん買う物が増えていく。


 ギャル店員の後ろでは青葉が必死に両手でバッテンを作っているのだが、お買い物に夢中になった遊馬が気付く事はなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る