第16話 魅惑の舌使い
「ま、待ってくれ雫! それ以上はまずい!」
「ん~ふふ、んふふふふふふふ」
「ふぐぅっ!? く、咥えながら喋らないでくれ!?」
「んふ~、っぱぁ! 私は青葉ちゃんに満足させてもらってるから、その分い~っぱい遊馬君を満足させてあげたいの。だって、私の為にこんなヘンテコな関係を許してくれたんだもん! 遊馬君の為に練習したテクがいっぱいあるの! だから私の事は気にしないでご奉仕させて」
「き、気持ちはうれしい! けど、それじゃあ愛撫の練習が――」
「あむっ」
「ふぐぅ、た、耐えろ相棒……これまでの厳しいチントレを思い出せ……尻に力を入れて数学の問題を解くんだ……」
「ふ~? ふふ、ふふふふ~ふふ?」
「んぁ!? し、雫!? む、胸を触るのはやめてくれ!? お、俺は男で、ふぁぁあああああ!?」
「ふふふひひ~ひふふふふふんふふふいんふふ?」
「あいぼおおおおおおお!? ――ウッ」
†
「……笑ってくれ伏見。俺は、情けない男だ……」
昼食中にいきなり遊馬に話しかけられ、青葉は頬が引きつった。
周りにはクラスメイトのイケてる女子がいて、流行りのドラマの話しをしながら一緒にお昼を食べていたのだ。
みんな、なにこいつ? どういう関係? と怪訝そうにしている。
「ちょっと滝沢、後にしてくんない?」
一応クラスでは、青葉はさばさばしたクールなイケてる女子で通っている。遊馬の彼女と意味不明なただれた関係を持っているなんて絶対に秘密だ。
「伏見があんなに一生懸命愛撫の方法を教えてくれたのに、俺は一つも生かせずにいかされてしまっ――」
「滝沢ぁああああ!?」
人前で何言ってんだこいつは!?
慌てて立ち上がると、青葉は遊馬の口を塞いだ。
ハッとして周りを見ると、イケてる女子達が、え? 今愛撫って言った? と目を丸くしている。
「ち、違うって! ライブだよライブ。滝沢がゲーム配信やってみたいって言うから相談にのってあげたの。だよね、滝沢?」
「胸の触り方だって教えて貰ったのに、逆に俺が胸で――」
「もー! しょうがないな! お昼食べながらもう一回教えてあげるから、屋上行こうか!」
†
「ちょっと滝沢!? 人前ではそういうのなしって言ったよね!?」
「す、すまん……。朝からその事で頭がいっぱいで……」
「もう! しっかりしてよ! あの事がバレたら雫だって困るんだよ!?」
「すまん……」
「それで、なにがあったの?」
促され、遊馬は涙ながらに胸の内を語った。
青葉と付き合うようになってからも、雫は変わらず遊馬を求め続けた。性欲は青葉が満たしてくれる。けれど、遊馬に対する想いは遊馬でしか満たされない。そういう事らしい。
それはいい。遊馬だって雫としたい。こちらが先に果ててしまう不甲斐なさに目をつぶれば、雫との行為はいつだって最高だ。青葉に習った知識を実践し、愛撫の腕を磨く必要もある。
ところが雫は、性欲は満たされているからと一方的に遊馬を攻めるのだ。これがまたとんでもなく上手い。相棒の扱いは勿論、そんな所を攻めるのか!? というような所を触ってくる。昨日なんか、男なのに胸で感じてしまった。おかげで遊馬は自分は変態なんじゃないかと落ち込んだものだ。
思い出すだけで、胸の先がチリチリ疼く。そんな変化に、遊馬は本気で恐怖した。このまま胸をいじられ続けたら、女みたいに成長してブラが必要になるかもしれない。そんなことになったらおしまいだ。
「いやまぁ、男でもそこは感じるらしいから」
「雫もそう言ってた……。けど、恥ずかしいだろ!? 俺は男なのに、あんな女の子みたいな声をあげさせられて……」
「え、なにそれ。ちょっと興味あるかも!」
興奮した伏見が前のめりになる。
「真面目に話してるんだ! ふざけないで聞いてくれ!」
「ちょっと気になっただけじゃん。そんな怒んないでよ」
「ともかく、俺は一方的にやられてばかりなんだ。これじゃあいつまでたっても愛撫の腕が上がらない! どうすればいいと思う!?」
「どうすればって、普通にやめてって言えばいいんじゃない?」
「言っても聞かないから困ってるんだ! 雫は俺を気持ちよくさせる事しか考えてない。文句を言ったらキスで口を塞がれる! それで俺は頭が真っ白になって……くぅ……」
思い出すと、今度は腰が砕けそうになった。雫に大人のキスをされると、遊馬は魔法をかけられたみたいに力を失ってしまう。うっとり幸せな気持ちに満たされて、頭の中はお星さまでチカチカ。背中にはビリビリ甘い電流が走って腰はガクガクだ。相棒もそれは同じで、十分もキスをされたらそれだけで果てそうになる。
もしかして、雫はサキュバスなんじゃないかと不安になるくらいだ。
「あー……。本気で攻めに回った雫はあたしでも苦戦するから、滝沢じゃ手も足も出ないかもね……」
同情するように青葉は言う。
「けど、伏見はどうにか出来てるんだろ? どうしてるんだ?」
「どうしてるって、こっちもやり返すだけだけど。ちょめちょめってベッドの上でやる格闘技みたいなもんなの。主導権を握りたかったら相手よりも上手く攻めて感じさせて黙らせるしかないわけ」
「そんな……」
遊馬からすれば、ベッドの上の雫は最強無敵の大魔王だ。まともにやりあっても、勝てるビジョンなんか全く浮かばない。経験を積んでレベルを上げればまだどうにかなるのだろうが、雫はそれすらさせてくれないのだ。むしろ雫の攻めによって開発され、オスとしてのレベルが下がりそうだ。
「女の場合は何回でもイケるから、相手が攻め飽きたら交替みたいな事も出来るけど、男はそうもいかないしねぇ~」
「そんなの余計に不利じゃないか! こっちはライフが一つか二つしかないのに!」
「で、一方の雫はライフ無限のレイドボス。まぁ、そっちの方はあたしに任せて、滝沢は素直に気持ちよくして貰ったら?」
「そうはいくか! 俺にだって彼氏のプライドがある! いつまでも伏見に負けてばかりじゃ嫌なんだ!」
「へ~? もしかして滝沢、あたしに妬いてるんだ? 可愛いところあるじゃん」
「茶化すなよ! こっちは本気で悩んでるんだ!」
「わかってるって。だから今考えてるじゃん」
ん~っと伏見が首を傾げる。
遊馬は祈るような気持ちで答えを待った。
ほどなくして、青葉はポンと手を叩いた。
「じゃあさ、道具に頼ったらいいんじゃない?」
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