第28話 メインシナリオ崩壊 その1
????視点。
すべては四天王でも最弱が、エリザに殺されてしまった事が原因だった。そのせいで、メインシナリオが大幅に変更されてしまったのだ。
私はヒロインとしてこの乙女ゲーの世界に転生した。やったー! と喜べるはずがなかった。理由はあれだから……
だけどせっかく乙女ゲーの世界に転生したのだから、イケメンキャラやサブキャラ達を見てみたい。こっそりと木陰の陰から覗くだけにして関わらないようにすればいいじゃないかと考えた。
こちらの世界の父の仕事の関係で辺境伯領による事になった私は、聖なる王子様の一人、エストとエストルートのラスボス(ダークエリザ)、他ルートではただの中ボス的存在のエリザの子供時代の姿を一目見ようと、両親に頼みこみ、エリザが滞在する別邸のある辺境伯領の村に私は訪れた。そこで、世界観を崩壊させるほどの、衝撃的な事件が起きた。
「ふんふんふん~♪」
白シャツでミニスカを着込んだ残念な美少女を見つけてしまったのだ。しかも、その少女は木の枝を持って鼻歌を歌いながら歩いていた。
でも、どうしてだろうか。彼女をどこかで見たことあるような……そんな気がする。そこで村の人に彼女のことを聞いてみた。彼女は無欲の聖女と言われているらしい。名はエリザだと言う。
思わず、はぁ~? と、言葉がこぼれそうになった。
あの子供時代からヤンダークな貞〇さんのエリザがおかしくなってる。彼女は転生者なのだろうか。でもこのゲームのメインイベントを知っている人なら、聖女になることは、アレになることだから、彼女は、よほどのドMか淫乱で変態かもしれない。
クライブとミカエルならまだまっしなはずだけど……、いや、ヒロインがドSかレイプ魔に変貌するからまっしではないかもしれない。ヒロインが鞭で打つか叩くか襲いかかるの選択肢しか選べない、というか存在しない時点で普通じゃない。
並木道に歩いていたクライブに唇を奪うとか、飛びかかるとか、胸を押し当てるとか、友好度が上がるにつれて、人気の無いところに誘って、クライブに馬乗りになって着衣のまま行為に及んだり、隙を見たら襲いかかるとか、どう考えても聖女でなく、性女じゃないかしら、まともな恋愛ができる雰囲気ではないわね。自分はさすがにお断りかな。
この二人は何もしなければ大丈夫かと思うけど、エストとエイリアスだけは絶対にダメだから、あれだからね。
私は両親に頼み込み、この世界でスカウト系のスキルを家庭教師から学んだ。隠密系スキルを使用して気配を消すことで、このゲームのキャラ達をこっそり覗き見しようかと思った。便利なスキルが数多くあるから、役にたつかしね。ヒロイン補正のおかげもあって、すぐにスキルを学ぶことができた。
私は残念なエリザをその日、ストーキング、いやいや、尾行することにした。私は見てしまった。エリザが四天王でも最弱と対峙し木の枝で瞬殺していた決定的瞬間を──
私は四天王でも最弱をギルドの張り紙で見だことがあった。ネームもそのまま、最弱で討伐対象に登録されていた。この世界の人間は違和感を感じないのだろうか。そのネームで登録とかネタキャラとしか思えないんだけど? 最弱は完全にMOBにしか見えない容姿だった。よくゲームで出てくるドラキュラの格好をして襲いかかってるポーズをした街の外を歩いているとエンカウントして出現するモンスターだった。コピペしてペーストするだけでABCが量産されそうなアレね。
エリザルートぐらいでしか現れない四天王で、エストルートでエリザの身体を乗っ取ることでダークエリザとして降臨するのだが、もちろんエリザのグラフィックだった。
ミカエルルートだとグラフィックなしで聖なる王子のミカエルが襲われそうになった所をヒロインが瞬殺して、わたしの犬に手を出すなんて火傷するわよ。と、嬢王様に変貌したヒロインが台詞を残して、そのヒロインの姿をミカエルが頬を赤くして見上げるグラフィックのみで、四天王でも最弱のグラフィックがまったくもってなかった。他のルートだと、いつのまにか、四天王は残り三体ということになっていた。
私はエリザの起こった出来事の一部始終をスマホンで撮影した。そして、帰り道、私は冴えない丸眼鏡をかけた男とすれ違った。彼は私の気配に気づいたようだ。まだ覚えたての隠密では、ある程度の実力者には私の存在がばれてしまうようだ。さらにスカウトを極めるにはあの人に師事するほかないだろう。新しくアップデートで追加されたエルフィン一族の長の彼女に……
「あなたはこの山にどのような用事で、ここは邪気が強いので、危険ですよ。ですが、今は、おかしいですね。邪気が薄くなっているようです」
「すいません。ここには父の仕事で訪れたのですが、女の子が一人、山の方に入ってしまったので、危険だから止めようとして、後を追いかけてしまったのですが、それで、私は見てしまったんです。その少女が四天王でも最弱を倒したところを──」
「そ、それは、本当なのですか?」
「スマホンで証拠があります」
「できれば場所と動画を見せていただけませんか」
そして、私は教会の人間に動画を見せて、最弱を倒した場所まで案内した。
これは好機だと思った。その日から私は、エリザポジになろうと画策した。実家や寮、学園にいるとき以外は、スカウトスキルを使用して前髪を前にたらした貞子なエリザの恰好に変装した。また私は両親に頼み込み、聖女速報の雑誌を発行した。聖女信仰が根強い国であり、無欲の聖女は聖女候補ではないが、かなり話題になっていたらしい。両親も彼女を応援したいという思いから、了承してくれた。
定期的に辺境伯領の村に訪れて、彼女の情報を記事にした。全てがうまくいっていると思っていた。だけど、そううまくはいかなかった。メインイベントが全くもって進んでいなかったのだ。まずヒロインの同級生になるミカエルが学園に来なかった。その席に座っていたのは、なぜかタロスという山で出会った冴えない丸眼鏡の男だった。そのミカエル本人は、教会の神父見習いとして、日夜、神に祈りをささげていたのだった。
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