第10話 対決オークジェネラル

 帰り道、ダニアの森から一瞬――


 紫色の閃光のようなものが見えた。


「うん?」


 また同時に誰かの悲鳴のようなものが聞こえた。胸騒ぎがした私は様子を見にダニアの森へと踏み込んだ。


 進んでいくうちに私は、紫色の結界ようなものに囚われた。これは、まさか、ユニークモンスターとエンカウントしたの? 


 このフィールドに囚われると、戦闘不能になるまで出ることが出来ない。森を進んでいくうちに、巨大で緑肌をもつ、牙と豚のような鼻を持っているモンスターが見えてきた。立派な赤い鎧をつけ、手には巨大なグレートソードを持っていた。


 オークジェネラル? しかも通常のタイプではなく変異種だった。火の耐性無効の鎧と武器も特殊なものをつけていた。


 オークジェネラルから一人の少女を守るようにして、剣や槍をもつ兵士のような恰好をした者たちが前へと出た。


 オークジェネラルは、兵士達に向けてグレードソードを振るう。その破壊力は絶大だった。彼らのうちの一人がその衝撃で吹き飛ばされた。また一人、また一人と兵士は倒れていく。少女は地面に座り込み呆然としていた。



 そして、最後の兵士が倒されてしまう。少女に向けてオークジェネラルのグレードソードが振り下ろされようとした瞬間、駆けつけた私は、スキル「縮地」を使いオークジェネラルの目の前に突然と姿を現した。そして私はグレードソードを薙ぎ払う。


 私が突然現れたことに、オークジェネラルは多少驚きのようなものがあったが、すぐさま、私に向けてグレードソード振り向けてきた。ヘイトが少女からわたしに移ったようだ。わたしは少女に視線を移して、はい、邪魔。


「て~い!」


 わたしは少女の服を片手で掴み、少女を遠くへと突き飛ばした。


「ふぇ?」


 と少女は可愛らしい声をあげていた。


 隙を見せたわたしに、オークジェネラルは赤い闘気を纏い力をためだした。ソードスキル、強打を使うようだった。グレードソードを両手で握りしめ力を込めた一撃が今まさにわたしに振り下ろされようとしていた。


 これはとってもまずい。薙ぎ払うときっと、壊れちゃう、わたしの大切なオジ槍が、だから、咄嗟に落ちていた兵士の槍とオジ槍を交換し薙ぎ払う、兵士の槍に微かだけどヒビが入る。やはりリアルだと、かなりの衝撃が腕にきてしまう。足がふらつきよろめきそうになった。


 初心者エリアのユニークモンスターにしてはかなり強い。ゲームの中での出来事だけど、このモンスターを初心者エリアで見た記憶がない。これほどのモンスターが出たら運営にクレームが入ってしまう。


 わたしはオークジェネラルの攻撃を受けずに躱していく。槍の熟練度をかなり底上げしたと思う。だから、そんな私が初心者エリアで少し苦戦するだなんて、ゲームとリアルはやっぱり違うかもしれない。だけど、この程度の雑魚なら私の敵じゃない。


 オークジェネラルの連撃が止まった瞬間、心臓に向けて突きをいれる。


 わたしのスキルが発動する。必中、防御無視、必殺(ダメージ3倍)、連続(3回攻撃)。


 オークジェネラルの心臓とは別に身体に二点の空洞が開く。同時に兵士の槍も折れてしまった。


 オークジェネラルは、その場を微動だにしない。数舜して、ドシンと地面に伏した。


 今日は本当に疲れた。


 そ、そんなー。


 地面に落ちている残骸を見て私は嘆いた。お弁当が潰れちゃったし、野菜も粉々だし、もう散々かもしれない。冷蔵庫に何かあったかな。もやし? ため息をついた後、私はオジ槍を拾う。


「あの、ありがとうございます、あなた様は?」


 少女は、ふらつきながらも私に礼を言う。気を失い倒れていた兵士たちも次々と立ち上がってくる。私は兵士の姿を見て、真っ青になった。折れてしまった兵士の槍を見る。


 そういえば、高そうな槍、折っちゃったよ。弁償はゆるしてください、わたし、本当に貧乏なんです。


「縮地」


 わたしは何も言わずこの場を去った、というより逃げた。そして、ギルドに依頼の報告を終えてから私は寮へと戻った。 

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