第6話 銀の聖女候補
クライブは午後から、イフリート王との謁見があるらしく、早退した。私は彼がいなくった席を眺めている。今は彼のことを考えても、わたしのいつもの発作が起こらない。
どうしてだろう、一時的なものなのかな。
彼の事より、今はわたしのことを考えないと、追放されてしまったあとのことだ。お金をためないとね。
そして、放課後になった。そういえばタロー君のことすっかり忘れていたよ。
あははは、彼はいつも私に大層な挨拶をしてくれる変わり者だった。
でもいなくなると寂しいかもしれない。だけど、あまりにもウザイときがあったから、無視したり、護身術の授業で蹴ったり、顔面を殴ったことがあったかな。あちゃ、かなり殴ってたかも、ごめんね、タロー君。
「はぁ、はぁ、これって、ご褒美ですか」って言われてすっごく、キモかったから、ついね。
お見舞いにいくにも、そういえば彼のことは知らない。いつもまん丸眼鏡で黄金色の髪をしていた。オタクっぽい装い? この学園に通っていることから貴族だと思うけど、ダニアの森にどんな用事で行ったのだろうか。今度、先生に話を聞いてみよう。
わたしはあいかわらずのボッチで教室をあとにした。
学園での生活も慣れてきたことだし、今日はギルドに寄って行こうと思う。コンドルマークの看板が目印の冒険者ギルドへ。
うちの辺境伯領にあったギルドと内装はあまり変わらないけど、やはり城下だけあって、大きさは非じゃなかった。昔は覗くだけだったけど、学生になった私は登録することができる。
「こんにちわ、お嬢さん、当ギルドにご依頼でしょうか」
私がギルド内をうろうろしていたことで、それを見かねた受付の女性が声をかけてくれた。
「いえ、わたし、冒険者登録をしたいんです、いいですか?」
私は彼女にそう言うと、受付の女性が、魔法のペンと用紙を渡してくれた。
「代筆も可能ですが、お名前とスキルなど、依頼内容によってはそのスキルがないとお受けできないものがありますので」
「読み書きは大丈夫です、あと水晶球をお借りしてもいいですか、ステータスの確認をしたいので」
「はい、どうぞ」
この水晶球でステータスを確認したのは、わたしが辺境伯領を出るときだったかな、槍もほとんどカンストに近いし、何も上がっていないかもね。
念のために水晶球に手をかざしてステータスを確認する。
名前 エリザ・トレンド
クラス なし→???? new
得意武器 槍 75/99
スキル 必中、防御無視、必殺、連続
魔法 風new 光new
はい?
思わず、疑問符の声をあげてしまう。
悪役令嬢の私には絶対に習得できないはずのものがあった。どうして、闇ではなく、風と光の魔法を覚えているの?
覚えていたスキルは風の初期魔法の縮地、光の上級魔法、トータルヒールだった。
これらのスキルには見覚えがあった。どれもが、ヒロイン様しか扱えないスキルだった。風の聖痕、光の聖痕のスキル。
しかも光がMAXとかありえないんだけど、光の聖痕の継承者って、たしか、M
彼のイベントは後半になって四天王の一人と遭遇したヒロイン様が、性なる力を使って、いやいや、聖なる力を使って倒すところを彼は目撃してしまう。それから、彼は彼女を慕うようになる。彼を聖なる王子様に選んでしまうと選択肢で罵倒や叩く、鞭で打つなどの選択肢が発生する。それらを選んでしまうとなぜか友好度が上がる変態だった。
というか、なぜ、わたしが覚えているの? ま、まさか、銀の聖女候補、銀の、銀の、わ、わたしの髪の色は? うそ…………
「すいません、デスシーラ、ワイバーンの姿が分かるものはありますか」
「S級モンスターですね、そこの討伐クエストの掲示板の張り紙にのってますよ」
わたしは、掲示板に向かい、その張り紙を手に取り見た。
ふと、女子寮のリビングに置いてあった聖女速報を思い出した。
「そ、そんな…………わたしが、まさか」
そして、水晶球に新たなステータスが書き込まれた。
なし→銀の聖女候補と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます