第5話-電車の中で
電車に乗った真樹達は、席には座らず、乗ってすぐ、正面のドア付近に立っていた。
座席は既に人が座っており、座れるスペースが無かった。
しかし、立っている人は少なく、満員電車と言うほど人が乗っている訳では無かった。
「座るとこねぇな」
「うん、そうだね…」
2人が乗っている電車は快速急行で、中々駅には止まらない。なので、次に止まるのは、しばらく先なのだ。
立っている間、真樹達は日常会話をしていた。
「それでね〜、この前の野良犬がね、私の所に寄ってきてくれて、甘えてくれてね、それでね!」
「それで?」
「舌出して、しっぽフリフリしてくれたの、可愛かったなぁ…」
(同族に間違えられたんじゃね?)
りんかは犬のような、可愛い性格だ。恐らくその犬は、りんかの事を犬と勘違いして同族として、馴れ合ったのかもしれない。
「…可愛い」
するとりんかは、頬を赤らめた。
「か…可愛い?」
「うん、可愛いと思うよ、その犬」
「い…犬?」
りんかは、自分が勘違いした事に気づいたようで、顔が茹でダコのように赤くなり、焦った表情をしていた。
「わわわわ、私じゃないんだね!」
「いや、りんかも可愛いよ、子犬みたいで」
「こ、子犬〜?!」
少し笑みをこぼしながら答える真樹。しかし、りんかは頬を膨らませて、少し怒っているようだ。
「ち、違うもん!わ、私は子犬みたいじゃないかr…」
真樹はりんかの頭を少し撫でてみた。すると、
「ん…んふゅ〜…♪」
かなり上機嫌になった。うん、やっぱ子犬だな。
「むぅ…私は子犬じゃないもん、それに、私犬より猫派なの!」
(どうでもいい…)
正直、猫というよりかは、やはり犬だと思う。いつも元気ではしゃいでいて、何に対しても食らいつく、そんなイメージだからだ。
するとりんかは、いきなり手でグーを作り、猫のモノマネをした。
「私、猫だもん、に…にゃあ〜♪」
(…何だこの可愛い生き物)
りんかの『にゃあ〜』はとても可愛らしく、ずっとみていられる、そんな可愛さだった。
最初は子犬のイメージだったが、今の一瞬で、彼女のイメージは『子猫』になった。
しばらく可愛い雑談が続いたその時だった。
電車が急ブレーキで止まってしまった。
「きゃっ…」
「りんか!」
真樹は慌ててりんかを何とか抱き止めた。すると、ふわっ…と、りんかの甘い香りが強くなる。
りんかは、少し照れながら、真樹の名前を呼んだ。
「ま…真樹?」
「あ…ご、ごめん」
真樹は自分の体に密着していたりんかの体を離した。
(もう少し、りんかとくっついていたかった…)
真樹の頭にそんな考えがよぎった。
しばらくすると、アナウンスが鳴った。
『動物接触のため、車両を一時、緊急停止しております、お急ぎの所、ご迷惑をお掛け致しまして、大変申し訳ございません』
どうやら何かの動物とぶつかってしまったようだ。おそらく復旧まで少しかかりそうだ。
早めの電車に乗っているので、恐らく遅刻する事はないだろう。
「動物接触って…怖いなぁ…」
「まぁここ、森の近く通ってるし、仕方ないと思うよ」
真樹達の乗っている電車は、1部、森の近くを通っていて、線路と森の間にフェンスなどの障害物が無いため、たまに動物が森から線路に飛び出してきて、少し危ないのだ。
『安全ご確認できました。運転再開します』
「良かったー、動いてくれたな」
「うん、そうだね」
運転再開のアナウンスを聞いて、真樹とりんかは、ホッと一安心したのであった。
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あれからしばらくして、電車が途中の駅に止まった。
すると、座っていた人達が席を立って、途中の駅に降りた。ぽつりぽつりと席が空いた。
俺とりんかは空いた席に座った。偶然にも、2人分の席が空いたため、2人は並んで座った。
『次は、花生学園前、花生学園前』
「ん〜、少し眠くなってきたな…」
電車の揺れを感じていると、少し眠くなってきた。
「いいよ、少しの間寝てても、起こしてあげるから」
真樹は少し目をつぶった。目をつぶり、ウトウトしているが、少しだけ意識はあった。
「んふふ、真樹、可愛いなぁ」
真樹の顔がりんかの肩にもたれた。
(少しくらいもたれてもいっか…)
するとりんかは、真樹の頭をそっと撫でてあげた。
「さっきの頭撫でた仕返しと、電車が急停止した時に支えてくれたお礼だよ」
そう言って優しく撫でるりんか。瑞々しいひんやりとしている手、でもその手は何故か温かさを感じた。
「真樹…大好きだよ」
りんかは眠る真樹に対してそっと小声で囁いた。
--あとがき
どうもシシトウです!お久しぶりです、更新しました!5話、どうでしたか?りんかちゃん、相変わらず可愛いですよね〜(ニヤニヤ)
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君と過した半年の想い シシトウ @shishi10
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