番外編 とある部屋にて
今回少し短いです。
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「何故だ……?」
入り口らしき扉の見当たらない暗い部屋の中で、黒いローブを着てフードを目深に被った人物は心底理解ができないといった様子で呟く。
「何故改良したばかりのシャドウモンスターロードの反応が消えた?あの辺りの魔法使いはまだ最近力を手にしたばかりの雑魚だけのはず。改良前のシャドウモンスターロードならいざ知らず、何故我が救世主より知恵と力を授かったこの私が心血を注いで一から構築し直した作品がこうも容易く……」
「あら。あれだけ自信満々に完成を待っていろ、と言っていたじゃない。失敗してしまったの?」
どこから現れたのか、ドス黒いドレスを身に纏った高校生ぐらいの年に見える女がローブを着ている人物に話しかける。
「お前か。どうやらそのようだ。しかし不可解な……新たな魔法使いのような反応は私の作品の付近には一切無かった。何故突然シャドウモンスターロードの反応は消えたのか調べねばなるまい」
「あら?魔法使いにやられた訳では無いの?」
「おやおや?誰かさんが手慰み程度に作ったシャドウモンスターを勝手に利用し始めたのは
「貴女まで来たのね……」
今度は赤黒い修道服に身を包んで、顔が札のようなもので覆われている女が現れた。
「我ら
「確かに私達幹部が複数集まることなど滅多にありませんが……私、つまらない冗談は嫌いです」
修道服を着た女が嫌そうな顔を隠しもせずため息をつく。しかしローブを着た人物はからかうように薄ら笑いを浮かべていた。
「これは手厳しい」
「フン、大体幹部自体数がそう多くも無い私達だけど、誰も彼もが自由すぎるのよ。あのマザコン坊っちゃんやここにいる私達三人、その他全員含めて。ね?」
「それは仕方のないことだろう。何せ我らの共通点といえば皆救世主様から何かしらの力を授かり、それぞれが叶えたい願いのためにしか動いていないというのだから」
「そうですね。私達やってることは傍から見れば何も変わらないんでしょうが、目的が見事にバラバラなんですもの。ふふっ可笑しいですよね」
三人が自分達幹部の現状を客観視して現状をひとしきり笑った後、ドレスを着た女が何かを思い出そうと首を傾げる。
「ねえ、そういえば2、3日前になんか謎のエネルギーを観測したって誰か言ってなかったかしら?」
「はて。そんな情報は私には来ていませ「それだ!!」……うるさいです」
突然大声を上げたローブを着た人物は、修道服の女の抗議を無視してブツブツと呟き始めた。
「……あぁなんということだ!私としたことが魔法使い以外による作品が消滅した可能性を失念していたとは!早速あのエネルギーの存在について調べようではないか!!」
ローブを着た人物は、急に大声を出したかと思うと再びブツブツと何かを呟きながら踵を返し何処かへと消えていった。
「あ〜あ。スイッチ入っちゃったわねー」
「そのようですね。さて。私の用事は済んでしまったのですが、あの人の進捗が無いと特にやることも無いんですよね~。何か話しておきたいこととかありますか?」
修道服の女はドレスを着た女に同意して、いつの間にか現れていた円形の机を囲うように置かれている椅子に座った。それを見て、ドレスを着た女も修道服の女の隣りに置かれている椅子に座る。
「そうね……あ!さっき私が言った謎のエネルギーの件なのだけど、妙なことになってるのよね」
「妙……とはどういうことでしょうか?」
「あっち側で変な記事を見つけたのよ。見る人によって発光具合の変わる奇妙な光が映った写真。ほらこれ、謎のエネルギーが発生した時間と場所がほぼ一致してる。偶然にしては出来すぎてると思うのよね」
ドレスを着た女性は、いつの間に取り出したのかスマホの画面を操作してニュース記事を見せる。
「まぁ。こんなことが起こっていたのですね。つまり、貴女はこの光の正体が例のエネルギー反応の正体だと思っている、ということでよろしいでしょうか?」
「まぁそんなところね。それにしても相変わらず世情に疎いのね。スマホぐらい買ったら?それぐらいできないわけじゃないんでしょう?」
「確かに買うことも可能ですね。ですが私は必要性をあまり感じませんので。貴女のように親切で世話焼きな方が居ますから」
「はぁ……もういいわよ。私は帰るわ」
ニコニコと微笑んでいる修道服の女に呆れるようにため息をついたドレスの女は、席を立つ。そして次の瞬間、この暗い部屋に残っていたのは修道服の女のみだった。
「あらあら。照れ屋さんですね。それでは私も教会に帰るとしますね。お先に失礼します。救世主様」
修道服の女が消えたその部屋は静寂に包まれた。しかし数秒後、先程まで火がついていなかった燭台に青い火が灯された。
「フ厶……気付いていたか……」
青い火が部屋をぼんやりと照らし出す。いつからそこにいたのか、部屋に置かれている椅子の中で一際豪華な物にあたかも最初からそこに居たかのように堂々とした佇まいで濃紺色のロングコートを着た人物が座していた。
「この程度では看破できるようになったようだな。だが他の二人は気付いていなかった様子。まだまだ強くなって貰わねば困る」
ロングコートを着た人物は組んだ脚に両肘をついて手を組み、思考に集中するように目を閉じた。
「魔法使い共はこのままでも問題無くどうにかできそうか。しかし彼女らが話題に挙げていた謎のエネルギー……彼女らが感知できている時点で魔素が使われているのは確か。まさか……いや、あれは……ありえないな」
その人物はフッと自らを嘲笑するかのように口の端をに笑みを浮かべる。そして先に居なくなった三人同様、闇に溶けるように姿を消した。
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