第2話 風鈴

毎年飾っている風鈴を箱から出して同じ場所に飾ろうと窓際へ持って行くと、歩夢と始めて旅行に行った時のことを思い出した。


京都でちょうど風鈴祭りをやっていると聞いて一緒に見に行ったんだっけ……。


初めての旅行で二人ともはしゃいでいて「すごい音だね」って笑い合ったのも覚えている。

「隼人!」

懐かしさに浸っていると、後ろから急に呼ばれ、振り返りざま手を滑らせて風鈴を離してしまった。

「……あっ‼︎」

ちょうど見ていた歩夢が声を上げた……。


「ごめん……」

二人で急いで階段を降りて見に行ったが、風鈴は物の見事に砕け散っていて、それが果たして風鈴だったのかも分からなくなっていた……。

「仕方ないよ。わざとじゃ無いんだしさ」

欠片を拾いながら寂しそうに歩夢が呟く様に言って

「また買えば良いじゃん」

そう俺に笑いかけた………。


俺はネットで調べ手作りの風鈴が売ってる店を片っ端にまわった。

独特の音を出す風鈴で、俺は少しでも似た音色を探した。


だってあれは………

京都で歩夢が作った風鈴だから………。


教わりながら一生懸命…歩夢が作った。

不器用なのを気にしていて、その手の事は一切やりたがらない歩夢が始めて自分から『やってみたい』って言って……。


不恰好な世界でたったひとつだけの風鈴………。


もちろん……そんな音を出す風鈴は見付かる訳もなく、俺は結局……手ブラで帰った。

「おかえり。どこ行ってたの?せっかくの一緒の休みなのに……」

歩夢が拗ねた様に睨みつける。

「ごめん……。風鈴…買いに行ったんだけど……」

俯いて謝る俺を

「そんな事だろうと思った」

歩夢が笑って抱きしめた。

「物ってのはね、壊れるためにあるんだよ?知らないの?」

ニッと俺を見上げて笑う。

「じゃなきゃ…誰も新しい物欲しがらないでしょ?」

「……でも…あれは……特別の……」

それでも落ち込む俺に

「じゃあ、次の長期休みは久々に京都行こうよ。それでまた作ろう?今度は一緒にさ。そしたら…また新しい思い出が増えるじゃん」

そう言って歩夢はキスをした。


結局お互いに仕事の調整をして京都に行けたのは九月も終わりになってからで…。


いつもの窓には少し時期外れの風鈴がふたつ並んで不恰好な音を奏でている……。




◇◇◇◇◇◇◇

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『創作BL版深夜の60分一本勝負』様のワンドロ・ワンライに初めて参加させて頂きました

(*´︶`*)❤︎

1箇所直しましたがほぼそのままです。

楽しかった〜♡




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