『天龍八部』を読んで
現代に書かれた武侠小説の名作です。北宋と周辺諸国を舞台に、四人の青年が、父世代の因縁や民族の悲願やどうしようもない運命に翻弄されながら、戦い抜く長編活劇です。
最初に登場する主人公、段誉は、武芸の心得もなく弱いくせに、道理を説こうとしては、力こそすべてとする武人たちに笑い飛ばされます。
現代からすれば、武人たちは暴力的すぎるし、段誉の方に肩入れしたくなります。鬱陶しいようでいて憎めないこの主人公は、偶然のなりゆきから最強の技を身につけて、戦いの運命に巻き込まれます。古典や技芸の素養など通じないのが常な中、貴人には通じて活路となるような場面が、印象的です。
また妹ヒロインが四人ぐらいいたことも印象が強かったです。
この作品には、逆境にあっても気高くある人物たちが登場します。自分は常に毅然と気高く振る舞うことができるだろうか、と考えると、教養を身につけ、ものごとに真面目に取り組まなければならないと、気持ちを新たにします。
この話では魅力的な人物が次々に登場し、だいたい死んでゆきます。諸行無常です。心に残るのが、主人公の一人・虚竹をめぐる物語で登場する、幼い見た目でありながらとても年老いた女の人です。スピンオフ映像作品が存在する、おそらく人気キャラクターです。
僕には、似たような性質の人物にまつわるエピソードがあります。
おぬしが大人になるまでに、「もうダメだ」と思うことがあれば、この鈴を鳴らすのじゃ。死ぬまでわらわと踊り続けさせてやろう。
その人とは、頻繁に会って話していたわけではありませんでした。
現在に至り、「もうダメだ」と思わなかった僕はあの人を忘れてもちもちと生き、「もうダメだ」と思った僕はあの人と踊り続けています。
※暴力や自棄を推奨はしません。
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