第11話 エピローグ

「お母さん!」

「母さん!」


病室を訪れると、窓の外の紅葉を眺める母の姿があった。私達の大切な人は優しく「秋斗、春香」と一人ひとり名前を呼ぶ。嬉しくなって私は母の元へ駆け寄った。


「お母さん、お母さん、ごめんなさい。もうあんなこと言わないから。もうあんなこといわないから。」

「母さん、俺もごめんなさい。」

「いいのよ。お母さんの方もごめんね。心配掛けたね。」


すると病室の扉の向こう側でも騒音がすることに気付く。


『菅野さん、菅野夏季さんがお目覚めになりました。』


という、看護師の声とともに、バタバタと足音がしたと思ったら勢いよく扉が開いた。


夏季なつき!」

「お父さん!」

「父さん!」


声が重なる私と秋斗。それに思わずお互い吹き出して笑った。あぁ、可笑しい。この空間が幸せでたまらない。


「お母さん、聞いて。お母さんが眠っている間にいろんなことがあったんだよ。」


それは、小さい頃に戻ったかのように、お母さんと思い出話をこの綺麗な紅葉が見える病室の中で沢山語り合ったのだった。


―――・・・


「お母さん、お母さん、聞いてよ。秋斗ったら私に内緒で一人でお母さんのところ行ってたんだよ。寂しいと思わない?」

「春香、その話はもういいじゃんか。」

「だってー。」


そして春香と母さんは顔を見合わせて笑う。


「何がそんなにおかしいんだよ。」

「ベッツにぃ〜。」


ニヤける春香に対抗して俺も仕返してやる。


「母さん、春香は俺があげたプレゼント全部大事そうにとってあるんだよ?可愛いなぁ〜我が妹ながらに。」

「うわっ気持ち悪。」


するとガチャッと玄関が開く音がした。


「シュークリーム買ってきたぞ!皆で食べよ!」

「わーやった!お父さん大好き。」

「わっ春香一度にそんな持ってくなよ。」

「秋斗、食べ方汚い!」


再びやってきた騒がしい家族の楽しい日々。永遠なんてないけれど、しばらくはこのままがいいと、願う。カンパは今何処にいて、何をしているのだろう。もう一度会えるのなら、「久しぶり。」と、言い合いたいな



END

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