第6話 次にするべき事

「追わなくていいの?」

「ほっとけ。あいつはああなると人のゆうことを聞きやしない。昔っからそうだ。」


言い捨てて春香とは別の方向を歩く秋斗とカンパ。よどんだ空気の中外を歩くのはあまりいい気がしない。


「春香の後ついていけばいいじゃん。」

「お、心配してあげてるの?やっさしぃ〜。」


バカにしているのかはどうかはわからないが、カンパはニマニマと笑って俺の後をついてくる。それに俺は「はぁ〜」と溜息で返事をする。青々と生い茂る木々。風に揺れて葉をこすり合わせる音は、なんだか恐怖を募らせる。


「もう、やめればいいのに。」

「は?」


カンパが妙な事を言い出したので俺は信じられないとういうような目でカンパを見る。やめればいい?そんなのカンパが持ちかけた話を今更?何いってんの?


「だってそうだろ?最初からやる気もなさそうだったじゃんか。やめたって誰も君を咎めない。君のやっていたことは春香と僕以外誰も知らないんだから。友人も、父親も。」

「何が言いたい?俺が一言でもやりたくないとか言ったか?一言でも母さんが嫌いだとかいったか?それに春香を『キライ』だなんて思ってない。なんで謎解きの答えが『キライ』になった?そしてここはどこなんだ。お前は誰なんだ?お前は何を知っている。お前は俺たちの何を?」


怒りに任せて言葉を並べてカンパにぶつける。それでもカンパは憎く思うほどにへらへらしている。まるで先生に怒られているのに全く反省していないへらへらした生徒のようだ。俺はこいつと通じることはできない。そう感じると俺は「もう着いてくんな。」と言い残してカンパから離れようとする。が、それをカンパは許さなかった。


「いい事を教えよう。」

「いい。邪魔だ。どけ。」

「そう言わずに僕の話を聞きな。」


カンパは珍しく強引だった。さっきは言い合いを止めようともしなかったくせに。逃げ場を失った俺は大人しくすることにした。


「僕はカンパ・パープニュラ。仲直りの妖精さ。だから僕は仕事をしにここへ来たんだ。だから君と春香ちゃんのこと、家族の状況なんでも知ってる。仕事を始める前に情報収集をするのは基本だろ?」

「ま、まぁ。」


頷くとカンパは満足したように話を進める。


「人の本音は一つじゃない。君は沢山の本音に蓋をしすぎだ。『魔法の言葉』て、知ってるか?」


少し頭の中で考えると「知らない。」と短く答えた。


「言葉は人を幸せにすることができる。でも反対に、言葉はナイフにもなる。ようは使いようによって人の人生そのものも変わるんだよ。」

「・・・寒波は俺を試したのか?」

「試したのは僕じゃない。」

「おい。どこ行くんだよ。」


カンパが先を歩くのでそれを追う。カンパはこちらを振り向いてにこりと笑った。


「決まってるじゃん。手紙を復活させるよ。僕だって仕事を放棄するほどの悪い妖精じゃない。」


―――・・・


「これか?」


机の上に置かれた見慣れた謎解き。これで手紙が本当に復活するのだろうか。


「そういや試したのは寒波じゃないって言うんだったら誰が試したんだよ。」

「喧嘩させたのも狙い通りだったりしてねぇ〜。」

「おい。この校舎が生きてるとでも?」

「・・・。」


カンパは何も言わない。俺はその反応に「コワッ」と答えた。


〜仲直りの言葉〜


「この鍵を開ければいいのか?」


大きな箱には数字を合わせて開ける鍵がかかっている。そしてそのしたに鍵を開けるために必要であろう問題の紙切れが置かれている。問題の内容は『電話番号にかけろ』とのこと。


「救急車のイラストに右矢印『238』。パトカーのイラストに右矢印『?』。」


この「?」に入る答えが鍵の答えとなるのだろう。救急車の番号は「119」、右にある数字は「238」。パトカーの番号「110」、右に入る数字は...


「『220』だ。」

「電話番号にかけろ」は「電話番号2×」。答えが分かると早速鍵の数字を合わせてみる。

「開いた!」

「おめでとう。」


パカッと蓋を開けると中身にはまた紙が入っていた。またクイズだと思うと湧き上がっていた喜びがシュンと小さくなる。


「『き ん そ ね と』なんだこれ。」

「もしかしたら...」

「どうした寒波?」


カンパは顎に手を当てて考えるポーズをして言う。


「春香ちゃんも謎解きしてるだろうからそれと合わせるんじゃないか?」

「春香も謎解きしてるて?」

「喧嘩して二人を分かれさせてそれぞれ謎解きさせたかったんじゃないかな?」

「なるほど...やっぱこの校舎生きてる?」


というとカンパは「それより手紙を復活させないとぉ〜」と言って先を急いだ。


「こら待てはぐらかかしてんじゃないぞ!」

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