第14話 謎の女、代田真希

「新―、遅いじゃん。何やってるの……ってDQ?」


 戻って来た奏が真希の姿を見て、驚きの声を上げる。


「おぉ奏。こちらDQこと代田真希さんだ……って、あれ?」


 俺が紹介しようとすると、真希を無数の飛龍が取り囲んでいた。そしてそのまま、そのうちの一頭のドラゴンの爪に掴まり、真希は空高く舞い上がった。真希と飛龍の群れが見えなくなるまで、五秒とかからなかった。


「こ、これもムーサイ独自の転移エフェクトなのか?」


「いや、こんなオプションないよ。なんなのあの子? 私が来た途端逃げ出して……」


 本当になんなんだ? 顔も名前も晒しているなら、奏を避ける必要もなさそうだが。


「まぁそれより、この動画見てくれないか? DQとコラボしてみた」


 さきほどアップロードされた動画に、ムーサイ上でアクセスする。


「え、マジで? 基本ソロしかやらないあのDQが? さすがは新。才能を見出されたのかもね」


「なんで俺が見いだされる側なんだよ。俺だってなぁ、コロナを怖がりさえしなければ、今頃パリのコンセルヴァトワールで無双してたはずなんだ!」


「ハイハイ、いつものね。しょうがないよ。時期が悪いんだし」


 俺は思わず恨み言を吐いてしまったことを反省した。奏はいつも広い心で受け止めてくれはするが、いつまでもそんな思考でいたら性根が腐ってしまう。


「っていうか、すごい再生回数になってるよ。5分で5000回、1000いいねがついてる」


「それってすごいのか?」


「初速としてはかなりすごいほうでしょ。やっぱり、DQの知名度と新の技術があれば、人気は堅いって」


 実際そうなのかもしれない。


 こんな方法は邪道かもしれないが、これで有名になっていくというのもアリだな。リアルのヴァイオリニストはもうお払い箱になりそうだし。


 俺はいつしか、真希との再会を望むようになっていた。

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