第十六話 魔族との初陣 本当の撃破


 そして、白い蛇を見てみるとそこにはさっきまでの白い蛇ではなく、白色の表面に黒の斑点が付き、頭は白と黒の二股に分かれている。それに加え、二本の手を生やし、蛇というよりはトカゲのようになっている。

 さっきまでは生物としての蛇、という印象が強かったが今のあいつは異様な雰囲気を放つ魔族、でしかない。

 まさしく災禍。

 

「へへっ、あいつマジでやばいんじゃねぇか?」

「そ、そうだな。気をつけろよ。」

「ルーファスこそ緊張してるんじゃない?」

「してるわけねぇだろ。」


 ライアンやルーファスも少しビビっている。そんなこともあるんだな。

 


 その災禍はそんな僕たちのことはお構いなしに攻撃してくる。

 無鉄砲な突撃なんかではなく、二個の口から紫色の体液を飛ばしてくる。それも二個の射線を取ってくるため変に動きずらい。


「危ない!!」

 

 リファイが氷の薔薇を設置してくれたがすぐに溶かされ僕たちの方に貫通してしまう。


「シニスター!」


 ライアンの呼ぶ声に呼応してシニスターが斧を床に突き立て岩の柱を僕たちの足元に建てる。

 

 そのおかげで回避することができた。しかし、その狭い足場で避けることは難しくなる。


「全員固まるな!バラバラに逃げろ!」


 なるほど。体液の向かう方向を分散させて被害を減らすというわけだ。

 当然打ち合わせなしに位置にいる必要があり僕の位置は蛇を十二時の方向に設定した時の二時の方向にいることになる。

 

 僕がその岩の柱から飛び降りた時、地面から沢山の岩の柱が隆起する。シニスターが出してくれたのだろう。

 

 ただ、幸いにも蛇は僕の方は見ていない。蛇の正面にいるのはサラス。サラスは岩に隠れながら飛んできた体液を水の弾で撃ち落としている。両方ともサラスを見ている。サラスなら大丈夫だがこのままでは倒せない。僕がいくしかない。


 僕は体液に触れないように走り出す。

 途中から片方の頭が僕の方を向く。それは容赦なく僕に毒性の体液を吐き出す。 

 

 「それは避けれる!!」


 僕は目の前から飛んでくる体液をなんなくかわしながら近づく。

 しかし、僕は気づけなかった。

 

 今までサラスを向いていたと思っていたもう一個の首が僕を狙っていたのだ。その口から放たれる体液は僕の死角。


「ウォータースプラッシュ!!気にしないで行って!!」


 それはサラスが弾いてくれた。


 ――行ける。僕の剣が届く。

 

「キシャァァァッ!!!!」


 蛇は手を振り上げて僕を迎撃する。

 僕はそれに対して魔法矢で対応しようと思ったがその必要はないようだ。

 

 後ろから大きな一発の銃声が響き、蛇が振り上げた右腕は弾け散る。

 

 そして僕は黒の頭を目掛けて、



「おらぁぁぁぁ!!!!」



 銅の剣を抜いた。


「よっと。」


 そして僕の横でオッドくんが白の頭を切り裂いた。どうやら後ろから狙っていたようだ。


 黒の頭は床に落ち、白の頭は後ろから真ん中をくり抜かれて空洞ができている。 


「倒したよ。カルム。」


 オッドがそう声をかけてくる。


「あぁ、そうだね。……やった!やったよ!!みんな倒したよ!!」


 声が、感情が溢れてくる。嬉しいという言葉だけでは形容し難いほどの感情。


「やったじゃん!」

「やっと終わったな。」

「そんな喜ばなくてもいいだろ。」

「ルーファスだって真剣だったじゃない。顔がにやけてるわよ。」

「にやけてねぇ。」

「にしても骨が折れたな。」

「そうだな。少し休んで砦に着いたら祝勝会と行こうじゃないか。」


 僕たちは感動を共有し合い、車に乗り込んだ。

 乗り心地の悪い荷台の上だがさっきまでとは何かが違う。


 これからいく場所は戦場で世界の命運を決める場所だ。


 それでも僕たちならなんとかなるかもしれない。

 そんな気がした。

 


 

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