第十七話 居住区


 僕達は蛇を倒した後、車に乗った。


「カルムくん、やるじゃないか。」


「ラヴァさん……!めっちゃ怖かったです……。」


「そうかそうか!!まぁ、初めてはそうだよな。」


「そういや、サザナミはどうしたの?すごい傷負ってたみたいだけど。」


「あぁ、彼女は少し休んでから砦の宿舎にくるつもりのようだよ。」


「あら、なら心配はいらないわね。」


「そういえばサザナミ……さん?ってなんなんですか?」


「うーん、そうだなぁ。どこから説明しようか。じゃあ生物的な話でもしようか。」


 サザナミと呼ばれるラヴァによく懐いている白い龍。


「サザナミは独立種と呼ばれる分類なんだ。古代種、準古代種、独立種の並びだな。独立種ってのは魔族ではあるんだが魔族領に生息していない上に魔王の傘下にも加わっていないまさしく独立している種族って訳だ。その中でもサザナミは『恩龍』と呼ばれている。『恩龍』ってのはどうやら恩に重きを置いている種族で良心からの恩をくれた生物に忠誠を誓うらしいんだ。」


「だからあんなに懐いてるんですね。」


「まぁ、そうだな。付き合いも長いしなぁ。十八に出会ったから今年で十六年目か?」


「めちゃめちゃ長いじゃないですか。出会いってどんなのだったんですか?どんな恩を上げたんですか?」


「どんな恩って……恥ずかしいからあんまり言いたくはないけど……まぁ、出会ったのは魔族領だな。サザナミは魔族どもに誘拐されてたんだ。そこをまぁ俺が助けたっていう感じだな。」


「誘拐ですか?なんでそんなことしようとしてたんですかね?」


「詳しいことはわかんねぇが俺はあの時サザナミしか救えなかった。他の恩龍もいたんだが、ちょいと手強くてな……。」


「なるほど……。じゃあ一緒に死地を体験したからこその友情の深さがあるんですね……。」


「ま、そんなとこだろうな。」


「サザナミくんはラヴァには特別懐いているがそもそも人懐っこいんだ。軍にいたときはみんなから愛されていたよ。」


「あぁそうだったな。」


「あ!みんなそろそろ着くわよ。」


 ルレアの声を聞いて僕も前方をみる。煉瓦れんがを基調とした高い壁や見晴らし台。そして大きな宿舎。人が十人住むには少し大きすぎるぐらいだ。


「よし、ついたぞ。降りてくれ。」


 ウィリアムに促されて僕たちは車を降りる。


「やっと着いたー。ちょっと酔ったかも……。」


 オッドくんのその呟きに反してウィリアムは容赦なく、


「会わないといけない人物がいるからその人のところにまずいくぞ。オッドは少し我慢してくれ。」


 会わないといけない人……。お偉いさんがいるのだろうか。こんなところに?この土地を持っている貴族の人だろうか。


 僕たちはウィリアムについて行き、一番大きな宿舎に入って一番奥の部屋に向かう。中の構造は入ってすぐの右手側に階段があり、二階に上がれるようになっている。

 そして階段を無視して進むと部屋があり、大きな机と沢山の椅子があることでここで食事などをするというのが容易にわかる。ソファなどもありここがみんなの生活区域なのだろう。


 奥の扉に近づき、


「失礼します。」


 とウィリアムがノックをして部屋を開ける。


 中に入ると事務用の机が真ん中にあり他にはあまり中身が入っていない本棚や小さな冷蔵庫などがある。

 そして机に座っている男が口を開く。


「ようこそ、私はここの管理を任せれたローズだ。これからよろしくな。」

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