第十二話 魔族との初陣 ルレアサイド
「魔族だ!!戦うぞ!」
私がゆっくり寝ているとウィリアムさんの叫び声で飛び起きる。周りの人たちはみんな目を覚ましていて各々準備をしていた。
私も急いで準備をする。
と言っても特に準備するものはない。レイピアもダガーも腰に刺さっている。
私はそれもあって五番目ぐらいに飛び降りる。
いの一番に出ていったルーファスは右側に行った。それを見た私もそっちに行こうと思ったがライアンくんが左に行ったのが気になる。そっちに行ってみよう。
私が左側に行った頃にはライアンくんが猿のような魔族二体と交戦していた。
一対二で厳しそうにも思えるが、後ろ側から来る敵も見ることもせずに槍の柄で突いて距離を取ったりして、私含め他の誰ものも踏み入る余地なんかないと思えた。
では残りの敵は報告によれば八体。内訳は小型が五体。大型が三体。
おそらくこの反対側にもいるだろうから明確な数はわからないが、今目の前にいるのはライアンが対峙している猿二体と奥にいる異形一体。それよりも奥にいる大型の蛇が一体。
と言うことはおそらくあちら側に大型が二体、小型が二体いるのだろう。あっちにはウィリアムさんもいるんだ。大丈夫だと思う。
私がやるべきことは奥の異形を倒すこと。私が一人であれを倒してサラスとリファイさんとラヴァさんにやってもらう。
「ねぇ!私があの異形をやるからあなたたちは大型をやってくれない?」
私はそう宣言と指示を飛ばす。戦場では勝手な行動は命取りになる場合がある。
「いいや、あれは僕が受け持つよ。あれはスライムの上位種、ダッドスライムだ。あれに君の剣は効かないからね。だから僕に任せてくれないか?」
ダッドスライム……聞いたことがないけど、戦場にいたことのあると言ったリファイは見たことがあるのかな。
「まぁ、そういうことなら任せるわ。」
別に反論する余地も理由もない。ここは従って問題ない。
「リファイさん?私もお供させてもらってもいいかしら?」
サラスがリファイに提案する。魔法が効くということで名乗り出たのだろう。
「あぁ、いいとも。僕と君は相性がいい。是非とも組もうじゃないか。」
「えぇ、よろしく。」
サラスとリファイであれを倒すことでまとまったようだ。
「では、俺とルレアくんであのデカイのをやるということでいいかい?」
「えぇ、そうしましょ。」
そして私とラヴァで奥の大きい白蛇を相手することに決まった。
「俺があいつを凍らせる!二人はその隙に奥に抜けろ!
そういうとリファイはすぐに目の前のダッドスライムを氷漬けにした。
「行きましょう!ラヴァさん!」
私は走りながらどう攻略するかを考える。あの白い蛇は体に黄色い斑点模様がある。そんな毒々しい大蛇なんか一種類しかいない。古くから存在している準古代種、『白の災禍・
なんでそんな奴がここにいるのかは知らないが、目の前にいるからには殺さなければならない。
目は赤く、口からは唾液を垂らしながら細く長い舌を出している。完全に私たちを舐めている。
「ルレア様。こいつは私たち二人では倒せません。リファイとサラス、ライアンの撃破を待ちましょう。我々の役目はそれまでこいつの注意を引いて彼らに影響が出ないようにしましょう。」
ラヴァがそう告げてくる。私はてっきり二人で倒せると思っていたが、あのラヴァがいうならそうなのだろう。それにしても、冷静に周りが見えているなんてラヴァも成長したんだな。
「うん、わかった。ラヴァはまだあれは呼ばないのか?」
「あー……厳しくなったら呼びます。」
「了解した。じゃあ、開始するぞ。」
私が巨大な毒蛇に近づくと、蛇は予備動作なしに紫色の体液を口から飛ばしてきた。走ってる途中だったため避けることができた。が、それを避けたラヴァの位置を予測したのか、尻尾を薙ぎ払われている。それにラヴァは槍を構えて防御するが防ぎきれていない。勢いのまま遥か後方に飛ばされてしまった。
私一人になった蛇は愉快に笑っているように見えた。
時間を稼ぐだけ、その命令が何よりも難しく感じてしまう。
そんな私の後ろ向きな気持ちを見透かしたのか、蛇は尻尾で大きく地面を打ち、口を大きく開けて突撃してきた。
私の目的は時間を稼ぐこと。そして、リファイとサラスをこの蛇から守ること。
私は走り出した。蛇が二人の反対を向くように回り込む。
あいつの移動速度は信じられないぐらい早い。追いつかれるかもしれない。その時は、みんながなんとかしてくれるだろう。
二秒ぐらいした時には既に蛇との距離は近く、持ってあと二秒かと思った。
しかし、後ろから『ドンッ』という蛇が尻尾を叩いた音がした。蛇の方を振り向くと、さっきと同じ手法で加速していた。その結果、私と蛇の距離はゼロ。かわすにも間に合わない。
「サザナミィ!!!!」
後ろでラヴァの声が聞こえた。その瞬間、空から耳を塞ぎたくなるような甲高い鳴き声と羽ばたく音が聞こえる。
直後、蛇の首が白く大きな龍に噛まれ、空中に連れていかれる。
「助かった……!」
そんな光景を見ていると後ろからラヴァが到着する。
「あっちゃー、あいつ派手にやってんなぁ。」
ラヴァがそう呟く。私はあの蛇をサザナミに任せて三人の様子を見る。
ライアンくんをみるとちょうど最後の一体にとどめを刺しているところだった。
リファイとサラスは余裕そうだが決定打に欠けているようだった。
「バブルラング!!」
「吹雪!」
そんな声が聞こえる。サラスがバラバラにしてリファイがそれを凍らせるが氷を割られ、また合体して元通りとなっている。
「ルレアー?これどうしたらいいと思うー?」
いや、私に振られても……。
「ごめーん!わかんない!!」
と、答えるしかない。
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