第八話 模擬戦(5)ライアン 対 リファイ

「さぁ、再会だ。そして一つ確認だがお前たちは仲間だ。殺し合うな。わかったな?」

 と、言って次の組が前に出るように催促する。


「さぁ行こうか。」

 リファイがライアンの手を引こうとすると、ライアンは強く手を弾き飛ばし、スタスタと先に歩き出す。


 リファイも遅れてゆっくりと定位置に着く。


「よし、準備はいいな?よーい、初め!」


 その声と同時にライアンは槍を構え、


「開装!!」と叫ぶ。

 その声に応じて手に持っている槍の穂先が機械音を立てて三つに分かれる。

 

「ライアンくん、準備は終わったかい?」


「あぁ!待たせたな。ゲイボルグ!!」


 ライアンは手に持っているその槍を投擲する。

 その速さは投げることを事前に予知していない限り避けることの出来ない神速。

 それに対してリファイは表情を崩すことなく、


氷野薔薇フローズンローズ!!」


 さっき、僕を防いでくれた物と同じように聞こえたが実際にみるとさっきのとは違って地面から氷の薔薇の茎が生え、大きな棘と小さな薔薇の花が神速の槍を包み込む。

 しかし、その槍はまだライアンの支配下にあるのかライアンが力を込めるたびに勢いは増していく。

 ただ、リファイの薔薇も時間が経つにつれてどんどん本数を増やして最初は三本だった氷の薔薇も既に六本になっていて槍の半分以上を包んでいる。

 

 お互いにこの勝負勝った方が勝ち、負けた方が負ける。そんな攻防になっている。

 

 そして、勝敗はある時点を機に明確に決まる。

 

 ――リファイの薔薇が砕け始めたのだ。

 氷という特性上柔軟性には限りがある。槍が進むごとに捻じ曲げられていき、そのまま砕け散る。

 薔薇があれから増えて八本にまで増えたが砕け始めてからは指数関数的に今や残り二本。

 

 ――残り一本。


 ――そして、全てが砕け散り、リファイは降参という意味で両手をあげる。

 それを見たライアンは胸に槍が刺さる直前に槍の勢いを止める。


「試合終了!!」


 二人はお互いにそれぞれの歩き方で近づく。

「いい槍だった。ありがとう。私は君に特大の賞賛を送るよ。」


「ふん、俺もヒヤヒヤしたよ。いい魔法じゃん。ありがとな。」


 そう言って握手をする。


「全員終わったな。次の指示をするから一度あの部屋に戻ってくれ。では後ほど。」


 そう言ってウィリアムは何か紙の資料を見ながら建物に入っていく。

 そしていつの間にかライアンとリファイが合流しており、ルレアが口を開く。


「みんなお疲れさま。ここにいてももう何もないし私達も行こっか。」

 


 歩き出してすぐに

「ラヴァ大丈夫かな……。」

 と、オッドが心配そうに話す。

 確かにあれから少し経ったがまだ帰ってきていない。シニスターの顔をチラッと見てみるとさっきよりかは心配そうな顔をしているがまだ他の人よりかは心配してないような表情をしている。みんなもチラッとシニスターの顔を見て僕と同じ感情を抱いた雰囲気があったがリファイに勝つ実力を持つライアンが「詮索するな」と言ったこともあり、触れれない様子だ。


 すると子供なりに空気を読んだのかわからないがオッドがこっそり僕の服をひっぱって

「ねぇ、帰ってこなかったら後で二人で様子見に行ってみよ。」

と、言ってくる。


「うん。いいよ。いこっか。」

と、いうとオッドは暗かった顔を少し明るくした。


 そのままみんなでは特に何も喋らないまま会議室に着く。

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