入隊

 僕の名前はカルム。

 日々軍に入ることを目指して鍛錬をしている。

 朝目覚めてすぐにランニングを始めてそれを終えた後は筋トレや素振り、座学などをしている。そして一日は終わる。

 軍の募集は年に数回あるがいくら面接に行って試験をしても受からないので最近はすっかり面接に行かなくなってしまった。次いくときは一回で受かると確信した時。もしそれで落ちてしまったらもう何か適当な仕事に就こうと思っていた。


 そして、そんな僕にとって今日は特別な日となる。

 


「……え?」

 僕は日頃のランニングをしていると安っぽい貼り紙を見つけた。


「騎士募集!身分、生まれ、経歴、忠誠心、腕前何も問わない!魔族を倒した数で金もやる。金目当てでも構わない!求めるのは戦う意思のあるもの。そんな奴は東大通りにある一番大きい建物に来い。」


 そんなことが雑に書かれていた。

 昨日はなかったため恐らくまだ募集しているだろう。

 僕は雑で簡略な貼り紙を何度も読み返した。

 読めない訳では無い、理解できない訳でもない。

 頭が追いつかないのだ。

 こんな雑な形ではあるがずっと目指していた夢の騎士になれるかもしれないのだ。

 このチャンスを逃す訳には行かない。

 僕はマラソンを中断し全速力で家まで戻ることにした。

 自分でも驚くほど早く家に着いた。

 家に帰った理由は僕がずっと素振りしていた愛用の剣をとるためだった。これは、僕が七歳の時に兄から誕生日に貰った大切な剣だ。七歳に貰った剣だが本当に切る事が出来るはがねの剣。この剣が僕のたったひとつで一番の宝物だ。

 騎士になったらこの剣を使うと貰った時から思ってたので当然これを持っていく。もうひとつの目的として、母と兄に話そうと思っていたのだが母と兄は仕事に行って今は家にいないので手紙に書き残しておこうと思った。


「うーん、どう書くか……、」


 ぱぱっと書こうと思っていたがなかなか言葉が思い浮かばない。

「よし、要件だけ伝えよう。」

 それから五分程度で書き終えた


「親愛なる母と兄へ。騎士団に入ってきます。しばらくは自由に帰って来れるのか分かりませんが心配しないでください。いつか帰ってきます。さようなら、ありがとうございました。」


 覚悟と感謝を込めた我ながらいい手紙だと思った。

 これでもう何もすることが無くなったのでそろそろ行こうと思う。

 幸い、目的地の東大通りにある一番大きい建物は心当たりがあるのですぐ着くだろう。

 早く行って損はないだろうし足早に向かおう。


 日頃の訓練のおかげで目的地の恐らく宿舎と思われる建物には案外すぐ着いた。

「……ふぅ。」

 深呼吸を一度大きくしてから建物に入る。

 ここから僕の英雄譚が始まる、そんな予感をしないわけには行かない。

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