第二話 模擬戦(1)皇女 対 水魔法使い

 訓練場に着いた。

 訓練場には二十本程度のかかしと同じく二十個程度の的があった。

 他には特に目立ったものもなく広さは少し大きい家が建てられるぐらいの広さだ。

 そこで教官らしき男が前に立った。


「よぉ。俺の名前はウィリアム。そして、聞いてるかもしれねぇが、お前らには今から模擬戦をしてもらおうと思う!どんな戦い方をするとか今は関係ない!対戦相手は適当なやつと戦ってもらう。」


と言うと周りの志望者は近くの人と話し、戦うか、みたいな雰囲気になっている。

 僕は……隣の男の人しかあてがないわけで、その人も恐らく僕しかないだろう。

 なら戦えばいいじゃないかと思わそうだが、何分怖いのだ。人を殺したことがある人とない人では分からないが覚悟とかが違うだろう。当然僕は殺したことがないのでそこに有利が働いてしまう。


「坊主、やろうぜ。」


 最悪だ。そんなことを考えていると誘われてしまった。


「……はい、いいですよ。」


 僕はしょうがないので承諾した。

 一戦ずつ行うようで僕と男は前から三番目に並んだ。


「よーい、はじめ!」


 すると、すぐに一番目の戦いが始まった。

 どんなもんなのか見てみると女性対女性のようだ。

 向かって右側の女性は水魔法を使っておりもう片方はレイピアを一本かまえ、腰にはダガーと予備のレイピアがあった。


「こりゃあ、レイピアの嬢ちゃんが勝つな。」


 戦いが始まって間もないというのにいきなり断言してしまった。


「水魔法は単体で戦うもんじゃないし、ましてや相手が素早い剣使いだったら尚更勝率は薄くなる。あの姉ちゃんは腕自体は悪くないが、運が悪かったな。」


 隣の男がそう言った途端、レイピアの女性はものすごい速さで突撃し、それに対して水魔法で壁を作る。そのまま上から水の矢を落とすが壁に穴を開けた上に、矢を回避、そのまま首元までその剣を持っていき、寸止めした。

「すごい…!」

 思わず声が出てしまった。


「終わりだ!一戦目にふさわしい戦いご苦労。では二人はそこら辺で待機していてくれ。二戦目始めるぞ。」


 二戦目の二人が出るまで感想を話していた。


「あの剣士の人、強かったですねあれは……ウォルク流ですよね。」

「ああ、ウォルク流は素早い動きと変則的な動きが特徴だから相手が水魔法使いどうこうじゃなく、レイピアに有利なやつが来ても大概、負けるだろうな。」

「そんな強かったんですか?」


 単純な疑問をぶつけてしまった

 あの剣士は強かったが不利対面で勝てるかと言われたら必ず勝てるほど強くはないというのが僕の見立てだった。

 ただ、この男は不利対面でも勝てると言ったのだ


「あの嬢ちゃんの強みはレイピアだけじゃない。剣をもう二本持っていただろう?」

「はい、同じようなレイピアとダガーですよね。でもなぜ?レイピアは予備、ダガーは牽制程度だと思ってたんですけど。」


 実際、名が売れた剣士でも予備の剣を持っている事はよくある事だ。

 剣が何かしらで折れてしまったらどんなに強い剣士でも戦えなくなってしまう。

 体術が出来れば話は別だろうがそんな人はあまりいない。


「もうちょっとちゃんと見ろ、坊主。あのレイピアは予備なんかじゃねぇ。あの嬢ちゃんは二刀流もできるんだよ……。微妙に長さが短かった。短いレイピアだけで戦うのはかなり難しい。だが、二刀流となれば話が違う。あの抜いていないレイピアは言わば、防御と追撃用だ。レイピアの突きで生まれた隙に本来は素早く戻して防ぐのだが戻すこと前提の突きが強いとは言えないだろ?そこであのサブのレイピアだ。あれがあることで全力で突いた後にも二本目でガードができる。そして追撃の使い方だが、相手が何かしらの方法で突きを防いだとする。避けたにしろ、武器や防具で防いだにしろ、隙が生まれる。ただ、本来はその隙に合わせて、突いた側も隙がある分、その隙は無かったことにされる。ただあの嬢ちゃんの場合は違う。二本目により、その隙の間にもう一発叩き込まれたら避ける術がない。俺でも初見でこられたら危ないだろうな。そういうことだ。」


 ……すごい。

 たしかにウォルク流は流派とついているがその内容は「独特な動きで初見殺しをする」という内容だ。

 二刀流レイピアはそれに沿っている……。

 あの一瞬の試合であそこまで武器と持ち主の戦い方を分析し、解説している。

 この男の人殺しは路地裏とかそういうのだと思っていたがここまで頭が切れるとなるとそういうわけでもなさそうだ。

 そんな男の推理力を推察していると二戦目が始まるようだ。

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