第50話 有名アイドルの歌姫が、まさかの寝取られ被害?!

 有名配信者ホットボンボンに、一つの相談が寄せられた。

 このホットボンボンという人物はネットではかなり有名な配信者で、彼が取り上げた出来事はニュースになることも度々あるほどだ。

 そんな彼の今日の配信タイトルは【有名アイドルの歌姫が、まさかの寝取られ被害?!】というものだった。



『同じラージュリア学園の学生ということはわかりましたが、どうしてAさんたちが相談をしてきたんですか?』


『だってエクシアって言ったらアイドルですよ? こんな相談できないと思うんですよ』


『そうだよね。だからってこのままじゃロサナさんかわいそうじゃないですか』



 ボイスチェンジャーで声を加工している匿名の相談者が言った。



『ティフってヤツすげぇ!』『お前が最強だ!』『ボイチャはずせ』『聴きづらい』

『SSランクソルジャーに敬意を示されるティフやば』『ソフィアが寝取ったって言えるか?』『ホジホジ』『アイドルじゃ相談できないだろうな』

『デカいネタきたな』『ボイチャ要らね』『ソフィアは微妙だが、ティフってヤツがセクハラしてるのは間違いない』



 最初この配信を見ていたのは一八万人ほどであったが、学園の中庭でシオンがティフに敬意を示している動画が流されると、そこから一気に視聴者は増えていった。

 SNSではこのことでコメントが溢れることになり、トレンドワードにはティフ最強、ロサナNTR、ソフィア寝取りという言葉がランクインすることになる。

 ここからソフィアやエクシアのファンもホットボンボンのチャンネルに流れ、視聴者数は一気に六〇万人を超えた。



『ソフィアさんのことはちょっと証拠とは言えないですけど、とりあえずティフさんにはメッセージ送ってみましょうか』



 ホットボンボンが言うと、コメント欄の流れが早くなる。



『SSランクソルジャーは?』『シオン・ティアーズとソフィア』『ソフィアにも送ってみろ』

『ソフィアとシオンに送れたらさすボン』『さすがにSSランクはやめとけ』



『バカヤロウ! SSランクソルジャーなんかに配信これるかなんて訊けるわけねぇだろっ』



 シオンに連絡できるようなアカウントはなかったが、ホットボンボンはコメントに言い返していた。

 視聴者は観ているだけではあるが、ホットボンボンからすればいきなりSSランクソルジャーに連絡などそうそうできることではない。

 この配信のことはシオンやソフィアが関係していることもあり、まだ配信が始まって数十分にもかかわらずニュースとなった。



『ディーナ、もう行く』


『シュティーナさんは一番不向きですから行くだけ無駄です』



 シュティーナが作ったグループチャットで、ディーナがシュティーナを止めた。



『シュティーナは余計面倒になるから動くな』


『シュティーナなら僕の方がいいでしょう』



 ヴァレリオとケネットが、ディーナに同意するようなコメントをしていた。



『まだ?』


『もう少し待ってください』



 シオンたちもニュースからこの件を知りディーナが裏で動いていたが、配信ではティフがビデオ通話で出てきていた。

 相談者からの内容と、証拠として流された動画をホットボンボンがティフに確認している。

 ティフは配信に上る前にいろいろ言われていたのか、すでに下を向いていて覇気などまったくなかった。



『よくあんなことさせられたよね?』


『シオン様のこともそうだけど、ソフィアの件もマジでクズ。第一歌姫のロサナの気持ち考えなかったの?』


『ティフさん、俺は貴族のことはよく知らないんですけど、ソフィアさんと身体の関係ということはないんですか?』


『あのようなことは言いましたが、ソフィアさんと身体の関係はないです』


『口ではなんとでも言えるよね。それを証明できるの?」


『もうアレ切るか、頭ハゲにするか選びなよ!』



 匿名の三人の女性たちがティフを責めるように口撃し、ティフは涙を流していた。



『ヒデェ』『実質一択なの草』『ソフィアの友だちになりたい』『俺シオン本人だけど、マジ切って謝罪して』『この相談者たちもヤバそうだけどな』『エクシアも呼べ』



『相談者、ちょっと待って。ディフさん、身体の関係っていうこと以外、この相談者たちが言っていることは認めるんですか? 証拠の動画はすでに見ているんですけど、なにか言い分があるなら聞きますけど』


『はい……そういうことがあったのは事実です』



 ティフが認めると、コメントの流れが一気に加速した。



『コイツヤベェ』『SSランクに敬意を示させるとか最強すぎ』『低ランクが草』

『ホジホジ』『貴族だからこんななの?』『ソフィアちゃんに種とかふざけんな!』

『これロサナもヤられてるだろ』『これは燃えそうだな』



 配信を見ながらソフィアがシオンの袖を掴んで、不安そうな目を向けてきた。



「誰かと関係なんてないから……」


「一緒に暮らしていますし、仕事のときはアイズさんと一緒ですからね。それにあの場には僕もいましたから、ちゃんとわかってますよ」



 シオンの返答を聞いて安心したのか、ソフィアはホッとした顔をしていた。



『本当だっていうことですが、そうなるとティフさんクズ過ぎるでしょ? ソフィアさんに対する暴言もヤバ過ぎ』


『ただヤりたかっただけでしょ? マジで女の敵。迷惑だから切っちゃってよ』

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