第49話 女子会の羞恥拷問
スーベリア国で新たなSSランクソルジャーが認定されてから、その動きは他国にも広がっていた。
他にSSランクソルジャーを認定した国はザイオンとフィンの二国で一人ずつ。
ザイオンとフィンの公表もスーベリアとそう変わらない時期であったため、スーベリアと同じように以前から動いていたのだと思われる。
これは大きな出来事ではあったのだが、ソフィアにとってはこれよりも無視できないことがありカフェで相談をしていた。
カフェは個人経営だと思われるお店で、置かれているも物などかなりこだわっているように見える。
落ち着く雰囲気ではあるが、どちらかというと重厚感を感じさせるビンテージといった雰囲気。
すべての席のイスがソファになっており、一つのテーブル席の空間はかなり広い。
棚などのインテリアでそれぞれ独立した空間が作られているので、業界人などがビジネスなどで御用達にしているカフェだ。
シュティーナはいつもと変わらない表情で、ユリアは楽しげにしている。
アイズは至って真剣な顔をしていた。
「好きになっちゃったんですね」
ユリアが言うと、ソフィアは顔を赤くして下を向いてしまった。
最初この場にはソフィアとアイズの二人であった。ソフィアがアイズに話があるとこのカフェに来たのだが、その理由はシオンを好きになってしまったこと。
ソフィアは芸能活動をしていることがあったのと、アイドルとして見ているファンもいたので、アイズには話すべきだと思ったからだ。
そしてどうすればいいのかという話にまで発展したのだが、そこで二人よりもシオンのことを知っているシュティーナとユリアに相談したというのがこの場の経緯であった。
「なるほど。ならディーナさんも呼びましょうか」
「え? ディーナさんもですか?」
(どうしよう……ディーナさんがこのこと知ったら)
「ディーナさんは一番シオン様と接点を持つ機会が多いので、味方にできれば一番強力な助っ人になりますから。
――――――今ソフィアさんたちと一緒にいるのですが、シオン様のことでご相談したいことがあるのですが。
はい。カフェのアイルにいますので、お待ちしていますね」
(あ、これはディーナさんも来るかんじ)
ソフィアはディーナに対して不安を感じていた。
ディーナがシオンを第一に考えて動いているのは、これまでのことからソフィアも理解している。
それはシオンがラージュリアだけではなく、人類にとって重要なソルジャーであるからというのは間違いない。
そんなディーナにこのことがシオンの邪魔になると判断されたら、という不安をソフィアは感じていた。
「なんか女子会みたいな感じですね? シオン様についての相談と言っていましたがなんでしょうか?」
「ソフィアさんがシオン様に好意を持っているので、ディーナさんにご助力いただきたいと思いまして」
ユリアが言うと、それを聞いたディーナがソフィアを真っ直ぐに見てくる。
怒っている感じは受けないが、恋バナという雰囲気でもないように見えた。
「本気なんですね?」
ディーナの話し方は基本的に無駄が少なく、意味のない言葉はほとんどない。
それだけに話し方は直接的であり、少し冷たい感じも受ける。
今の服装は軍服ということもあって、それがなおさらソフィアを緊張させていた。
「……はい」
「――――わかりました。なにができるのかはわかりませんが、私も協力しましょう」
(――――!)
ディーナは表情を変えず、いつも通りの口調でなんでもないことのように言う。
だがそれがシオンを好きになってもいいのだとソフィアに思わせた。
「ソフィアいいこ。大丈夫」
そんなソフィアの頭をシュティーナが撫でていると、ディーナが一度飲み物を口にして話し始めた。
「ソフィアさんなら大抵の男の人ならすぐ落とせるでしょうが、シオン様はちょっと手強いかもしれません」
(お、おとす⁉」
「ディーナさん、どうしてそう思われたのですか?」
「シオン様はご自分の能力のことを常に考えています。それが理由で第一歌姫を置こうとなさらないくらいですので。
それはそのまま男女の関係にも通じると考えるのが妥当でしょう」
「そういうことですか。確かにそう言われると」
ユリアが納得していたが、ソフィアもディーナに言われてハッとしていた。
実際ソフィアは歌姫として断られているのもあり、ディーナの見解はかなり正確なような気がしていた。
「とはいえ、シオン様も年頃の男の人です。女性に興味がないわけではないようです。
今までに何度か私の胸元を見ていることがありましたので、女性を意識はしていると思われます」
(ディーナさんと比べられちゃうと、ちょっと自信ないかも……。
鎖骨とか綺麗に浮き出てて
脚なんて肉感があるのに細いってどういうこと?)
「ソフィアさんはシオン様を押し切って歌姫になられたことを考えれば、十分可能性はあると思います。
問題は能力のことが最終的に壁になるでしょうが、ここも今は可能性が見えていると思います。
大事なのは、やはり意識させることでしょうね」
「どう、やって?」
「たとえばキスとかでしょうか」
「っ――――!」
「ソフィア?」
アイズがソフィアを見て声をかけた。他のメンバーは気づいていなかったが、いつも側にいたアイズは微妙な反応に気づいたようだ。
そんなアイズの様子を見て、他のメンバーの注意も向いてしまう。
だがソフィアからは恥ずかしくてとても言えなかった。
「現状の情報を整理することは大事なことです。ここの情報次第で段階というものがかわります。
なにか話しておかなければいけない情報はありませんか?」
「……はい」
「本当にありませんか?」
ディーナがソフィアに問い詰める。完全になにかあるとわかっているようで、これは最終的にはバレるパターンだとソフィアは思った。
ソフィアは顔がどんどん熱くなっていくのを感じながら、言葉を絞り出すように白状する。
「あの……キ、キス…………一度しちゃいました」
(自分で言うなんて恥ずかし過ぎる。こんなの、羞恥拷問みたいなものだよ)
ソフィアは下を向いて、消え入りそうな声で白状した。だがそこに追撃が行われる。
「ソフィア、詳しく」
シュティーナに言われ、ソフィアにこれを回避する道はなかった。
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