第48話 二人目のSSランクソルジャー
ニュースの速報は、スーベリア国の記者会見で公表されたことだった。
その内容はソルジャーランクを見直し、SSランクソルジャーをスーベリアでも認定したというもの。
シオンに続く二人目のSSランクソルジャーということもあり、当然このことは注目が集まることになった。
このこともありシオンや他のSランクソルジャー、歌姫たちが後日王宮に集められた。
「先日スーベリアで認定されたソルジャーは、イクセル・ルンドグレン。
元Sランクソルジャーであり、魔法属性は水属性となっています。
シュティーナさんと同じように、Sランクソルジャーのなかでは最強の一角と目されていたソルジャーです」
ディーナがどのようなソルジャーであるかの報告を終えて席につき、クラリス女王が直接的な質問を投げた。
「みなさんの意見を訊きたいのですが、そのイクセルというソルジャーはクィーンと戦えるほどですか?
もしそれが可能なのであれば、今後の戦略が変わってきます」
クラリス女王が投げかけた質問を、ほとんど間をおかずに返答したのはケネットであった。
「彼がクィーンと対峙するのは無理でしょう。魔力量や魔力コントロール以前に、クィーンとの戦闘では重力の影響をどうするかというのが前提になりますから」
「まぁそうなるよな」
それにヴァレリオが同意し、ローランド所長がつまらなそうに口を開く。
「今回スーベリアでSSランクになったのは、Sランクソルジャーでは収まらないというところが尺度になっていたからね。まったく馬鹿げたパフォーマンスだよ」
「どういうことですか?」
クラリス女王に補足したのはディーナだ。ローランド所長はディーナが動いたので、任せることにしたらしい。
ディーナであれば、ローランド所長の言ったことを理解していると思っているようだ。
「ソルジャーランクとは対アスラで決まるものです。DランクのソルジャーはDランクのアスラと戦えるだけの実力があるからDランクであるということです。
ですが先日のスーベリアのSSランクについては、他のソルジャーと比較していたようです。
これはSSランクソルジャーを持つことで、パワーバランスを取りに来ている政治的な側面があると見た方がいいということです」
「そんなことのために、ソルジャーランクを利用するんですか?」
ソフィアはつい口に出していたが、これに答えたのはローランド所長だった。
「ソフィアさんはなかなか察しがいい歌姫だけど、ちょっとこういうことには純粋で
確かにこんなことなんだが、シオン君のソルジャーランクを明かしたことでSランクソルジャーの派遣をこの前取り付けたよね?」
「あ……」
「そういうことさ。でも私はね、シオン君の歌姫にはこれからもこんなことって言う存在でいてもらいたいけどね」
ローランド所長が言うとクラリス女王を始め、他の者も表情を崩して空気が緩んだ。
ソフィアはみんなの視線が集まって、赤くなって恥ずかしそうにしていたが。
「シュティーナは彼と同等的に見られていますがどう思いますか?」
クラリス女王に問われ、シュティーナはいつものように答える。
「歌姫、いたら、私の方が強い、と思う。例えば、ソフィアいたら、間違いない」
「え?」
「それは興味深いね。今まで歌姫を置いてくれなかったけど、ソフィアさんならいいってことなのかな?」
シュティーナの答えが意外だったようで、ローランド所長が身を乗り出して訊き返していた。
元々シュティーナは一人で完結している珍しいソルジャーであるため、研究心に触れた答えだったようだ。
これにはローランド所長だけではなく、その場にいた全員が驚いた顔をしているが。
「――必要なら」
「え? シオン?」
「備えとしてソフィアさんがよければ、僕は悪くないと思いますよ。シュティーナさんはソフィアさんお気に入りみたいですし」
「あくまでメインの第一ソルジャーはシオン君で、備えで第二ソルジャーにシュティーナ君はいいんじゃないかな」
「シュティーナ。その場合、あなたはクィーンとの戦闘は可能になりそうですか?
あなたは実際にクィーンのいたバトルフィールドを経験していますから、そこからの見解を聞かせてください」
少し興奮気味なローランド所長を遮り、クラリス女王が訊ねた。
「よくて時間、稼ぎ程度。それくらい、クィーンの影響、大きい」
「そうですか。そうなると他国のSSランクは戦力として見るのは、対クィーンでは無理ということですね。
ではローランド所長、シオンさんのことをお願いします」
「わかりました。今回集まっているのはこっちがメインなんだけど、ある程度SSランクバトルフィールドの影響の推測が立ったと思う。
ただあくまで推測の域は出ないから、そこは前提として聞いてほしい」
その場にいる全員がローランド所長に注目していた。
「先日のSSランクフィールドの出撃で、シオン君の魔力回復量は落ちている。これは間違いない事実だ。
前回は意識を取り戻すのに三週間、魔力が全快するのにさらに一ヶ月。
今回は意識を取り戻すのに一ヶ月半、このままでいけば魔力はおよそ二ヶ月で全快という感じじゃないかな。
私たちはシオン君の特性を知ったのは遅く、すでに一度戦闘をしたあと。
だから元になるデータがないから確かなことは言えないけど――――」
ローランド所長が一度シオンに目をやり、そのまま続けた。
「もう魔法を使った戦闘はそう何度もできないと推測している」
(ローランド所長も僕も同じ考えになったみたいだな。そうなると――)
「あと二回の戦闘がギリギリというところかな」
「ローランド、はっきりしないな。二回までなら大丈夫なのか?」
ジョルディ総督がせっつくような感じで訊ねた。
「まぁ可能性の話ではあるけどね。ただ二度目の出撃をさせた場合、シオン君はもう意識を取り戻せない可能性もあり得ると思われる。
今回の戦闘、シオン君は魔法を極力抑えて戦闘していたよね?」
「そうですね」
「魔法の使い方によっては変わってくる。それを考えると、次シオン君が魔法を使うのはクィーンのいるバトルフィールドということになるんじゃないかな?」
「なるほど、わかりました。あと一度が限界ということですね。魔法を使わなければ、通常のバトルフィールドへの出撃は可能ですか?」
「それは問題ないでしょう。身体強化は魔力消費が少ないですし、検証結果で影響はほとんどないという結論になっていますから」
クラリス女王は一度大きく息を吐いて、シオンへと向き直った。
「シオンさん、あと一度だけ、私たちを助けてください」
「わかりました。僕もそのつもりで準備をします」
「ありがとうございます。総督も、他のSランクの方々もそのつもりでお願いします。ソフィアさん、シオンさんのことお願いしますね」
「はい……」
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