友達

「私さ、実は冷めちゃったの。だから、蒼君の事振ったんだよ」

「そうだったんだ。じゃあ、なんであの時ちゃんと理由を教えてくれなかったの?」

「だって、こんなこと言ったら、蒼君を悲しませちゃうと思って………。蒼君これから何もできなくなっちゃいそうだなって思ったから………。ごめんね。」

「………そっか。ううん、………大丈夫。俺の方こそごめんね。」

 ああ、俺はやはりだめな人間だ。別れる時まで凛に気を遣わせてしまうなんて………。きっと、付き合っていた時も凛は無理をしていたんだろう。ごめん、凛。

 俺は男として、いや、人間として最低だ………。


 ⏤⏤⏤ピッ⏤⏤ピピッ⏤ピピッピピピピ

 ⏤⏤⏤⏤⏤カチャ

 夢か………。準備しよう。

「え?」

 俺は涙を流していた。気づけばどんどん涙があふれてくる。学校休みたいな。

「頑張らないと、、」

 気持ちを切り替え、冷たい水で思いっきり顔を洗った。


* * *


「蒼~おはよう」

「おはよ」

 学校に着くと悠馬が声をかけてくれた。少し元気が出た。

「昨日ごめんな」

「………あ、」

 最初は何のことか分からなかった。少し考えて、電話の事だと分かった。凛のこと考えすぎだな、俺。

「ううん。急だったから。俺こそごめん」

「蒼、大丈夫?無理すんなよ」

「うん。ありがとう」


 (そういえば、今日は凛来てるのかな)

 凛の席を見ると、凛は座っていつものように友達と勉強をしていた。

 (よかった)

 なぜかは分からないが、俺は安心した。


 今日は昨日よりも授業に集中できた。1日で少し気持ちが落ち着いたのだと思う。

 だが、振られた理由が分からないことや、昨日の電話の事もあり、凛のことがすごく気になる。気にしないように頑張っても、気づくと凛のことを見てしまっていた。

 一方、凛は俺の方を1度も見てこない。いつも通りに過ごしているように見える。俺って、ダサいな。


* * *


 放課後。いつもはあまり話さない、クラスメイトの近藤たち(陽キャ集団)が話しかけてきた。

「蒼さ、西野となんかあった?」

「え?なんで?」

「いや、なんか今日気まずそうな雰囲気でてたからさ」

「そういうことか………」

 周りに何も思われないよう、いつものように生活することを心掛けていたが、やはりできていなかったようだ………。

「実はさ、別れたんだよね」

「え?マジで?どうしたのよ」

「それがさ、突然振られたんだよね」

 近藤たちとは仲が良くも悪くもない。だから、正直話すか迷った。でも、今俺は、話を聞いてほしい。慰めてほしい。そんな気分だった。

「マジか。蒼大丈夫?」

「うん、」

 本当は大丈夫じゃない。今にも泣きそうだ。

「それにしても変だな。西野が突然振ってくるなんて」

「それな。とりあえず蒼が原因じゃないでしょ。なにか理由がありそうだな」

 近藤たちはいろいろ考えてくれた。なんだか不思議な気分だ。

「もし蒼がよかったらだけどさ、俺らで探り入れようか?突然振ってくるなんて変だって」

「いいの?」

「おう!俺たちも気になるしな」

「ありがとう」

 近藤たちがこんなことまで言ってくれてとても嬉しかった。なんだか1歩前へ進めたような気がした。


 話が終わると悠馬がきた。

「今日も残るの~?」

「うん。勉強がんばらなと」

「俺も残る!」

「ありがとう」

 本当は家でゲームしてたいだろうに………。俺は心から悠馬に感謝した。

 そういえば今日は凛が学校に来ているのだった。凛も残っているのだろうか。周りを見ても凛は見当たらなかった。きっと友達と帰ったのだろう。

 俺は勉強に取り掛かった。


* * *

 

「疲れたあ~!でも結構達成感あるわ~!」

「でしょ?」

「うん。勉強するの、結構ありかも」

 俺たちは帰る支度をして、学校をでた。


「そういえばさ、さっき近藤たちと何話してたん?」

「ああ、凛とのこと聞かれたんだよ。俺ら気まずそうな雰囲気でてた?」

「まあ、ちょっとでてたかも」

「だよね」

「まあ気にすんなよ!」

「うん。ありがとう」

「それじゃ!」

「うん。おつかれ」

 悠馬は本当にいいやつだな。こう思ったのはこれで何度目だろうか………。

 

 俺は電車に乗った。今日は勉強に集中できたため、少し疲れがあったのかぼーっとしていた。

 すると視界に見慣れた顔が映った。

 (あれ?凛じゃん!!!)

 俺は直ぐに目をそらした。凛はスマホを見ていたためこちらに気づいていない。

 電車は満員だ。駅に止まる度、次々と人が乗ってくる。凛が人に押されて俺の近くまでくる。

 やばい、見つかる。見つかったらまずい、という訳ではないが、気まずい。

 凛はとうとう俺の前までやってきた。だが、俺に背を向けているため気づいていない。

 いい匂いがする。それに、色々なところが当たっている。付き合っていた頃は互いに気を遣って、電車に乗るときは少し距離を置いていた。だからこれほど密着しているのは初めてだ。

 体が熱い。心臓の音が自分にも聞こえてくる。色々な意味で凛にばれたらまずい。

 俺はスマホを開いて必死に現実逃避しようとした。もちろん上手くいかない。

 凛は満員電車で身動きが取れていない。転ばないように必死に立っている。なんて可愛いんだ。


 俺が降りる駅の一つ前で凛は電車を降りて行った。

 緊張がとけた。だが、まだドキドキは止まらない。凛はマジで最高だな。

 自分が変態のようで少し気持ちが悪かったが、仕方がない。俺も男だ。


 その後、家に帰ってご飯を食べ、お風呂に入り、少しだけ勉強をした。だが、どんな時も頭の中は凛の事でいっぱいだった。

 電話が掛かってくることを期待したが、掛かってこなかった。まあ今日は学校に

来ていたし、俺に用などないか………。

 その後ベットに入って、凛の事を考え………

 この辺りでやめておこう。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る