帰り道

「お疲れ~」

「おう」

 やっと学校が終わった。しかし今日は疲労感が襲ってこない。なんだかふわふわした気分だ。考えすぎて頭がおかしくなったのだろうか。


「………今日は帰るのか?」

 悠馬が遠慮気味にきいてきた。

 俺は昨日まで凛と付き合っていて、放課後は教室で凛と自習していたのだ。今日は確かに帰りたい気分ではあった。

 

 だけど、

「ううん、自習してく」

 家に帰ると何もせずに、ただ凛の事を考えてしまうと思った。だったら勉強に没頭していたほうがいい。それに、いつものように自習していれば凛が現れるのではないか、そんな妄想に浸っていた。


「そっか、じゃあ俺も一緒に残ろうかなあ~」

「いいのか?お前いつもすぐ帰るじゃん」

「おん。なんか今日は勉強したい気分だわ!」

「ありがとう」

 その後、悠馬が一緒にいてくれたこともあり、落ち着いて自習することができた。俺は本当にいい友達を持ったものだ。今度ジュースでも奢ろう。


* * *


「マジ疲れたあ~!蒼いつもこんな時間まで残ってんの?偉すぎ」

「うん。来年受験だし」

 学校は毎日7時に閉まる。だから塾に行っている人からしたら大したことはないと思うが………。

「悠馬マジでゲームしかしてないだろ」

「え?あたりまえじゃん。だから今日はめっちゃ学んだわ!俺天才かも!」

「それはよかった」

 もう少し勉強したほうがいいと思うが………。まあいい。俺は悠馬のこうゆうところが好きでもあった。


「じゃ、また明日」

「うん。今日はありがとう」

「おう!」

 俺たちは学校の最寄り駅で別れた。悠馬はバス、俺は電車だ。

 一人になると急に孤独感が襲ってきた。昨日までは凛と一緒に電車に乗って帰っていたのに。

 この時間帯の電車はそこまで混んでおらず、席がポツポツと空いている。その光景が、俺に寂しさを感じさせているような気がした。俺はスマホに集中し、必死に気を紛らわせた。昨日までは一瞬だった乗車時間は、今日はなんだかとても長く感じた。


 最寄りからは歩きだ。暗くて肌寒い。俺は温かいものを飲んで落ち着きたい気分だったため、コンビニでホットコーヒーを買って帰ることにした。

 コーヒーを飲むと本当に心が落ち着いた。家に着いたらご飯を食べて、お風呂に入って………。いつも通りの日常を送ろう、そう思った。


「ただいま」

「おかえりなさい。ご飯できてるわよ」

「おお!カレーじゃん!」

 俺はスライスチーズをたっぷりのせて、お腹いっぱいになるまでおかわりした。

 今日1番に幸せな時間を過ごした。



 

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