終章:どんなに辛くても

耳に踏み切りが閉まる音が聞こえてくる。

それは規則正しく、軽快な音を立てている。

俺は黄色の点字ブロックから片方の足を踏み出した。

怖さなんてなかった。あとは勢いをつけて飛び込むだけ。

周りの声が遮断された。もうこの世界には俺だけだ。

ー光羽。

俺は光羽を救えたかな。生き抜くための術を伝えられたかな。

ー笑人。

俺はやるべき事はやった。そっちに逝ったら褒めてくれよ。

小さくため息をつくと、電車がホームに勢いよく入ってきた。

この電車は通過電車だ。飛び込んだら一瞬で命が潰える。

そろそろだな。俺がこの世界から消えるのは。

光羽が生きるーこの世界から。

ー大好きだよ。光羽。


俺は闇に自ら飛び込んだ。

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たとえ、どんなに辛くても @trump_magic

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