北野遥と担当の絵里

「うにゃぁ」

座布団を枕にして遥は昼のまどろみに抗うことなく身を落としていた。何事にも気だるげで一切やる気の感じられない彼女は、築70年以上ある安いボロアパートに住んで、ノート代わりの原稿用紙と愛用の万年筆、執筆用のノートパソコンともう訳程度のテーブルそして、大量の本という人間が生活してるとは思えない部屋に住んでいた。

「起きてくださーい!!!!!」

夢へ誘う睡魔を殴りつけるような声に遥はハットし目を覚ました。

「なんだ、絵里か…おやすみ」

「お休みじゃないです!」

黒いスーツ姿に身を包み、太い眉を逆八の字にするポニーテールの女性、絵里は、遥の担当編集者だった。初っ端から「先生!一緒に直木賞目指して頑張りましょう!」とか抜かす能天気んな奴。お節介な性格から遥の身の回りの世話までするようになって近所さんに「お手伝いさんみたい」と揶揄されていたが、絵里の性格上、その裏にあるちょっとした悪意に一切気付かずに元気に返事をしていそうだが…まぁいい

「何、原稿なら書けてな…」

「今日は編集者と作家の交流会がありますからね!今すぐ着替えてください!」

「そんなの知らな…ぐぁ!」

「さぁ!いきますよ!」

無理矢理服を脱がされて絵里にされるがままだった。

「ぎゃあああああああああ!」

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