第56話大賢者と狙われたゼロ

ついに掟の大会が始まる。

だがその前に大会を仕切る主催の大司祭様がルール説明をする。

・各国が10人を選出し戦わせる

・試合時間は1時間

・場外に出たら敗北

・相手を殺したらその国は失格

・回復魔術・アイテム禁止

・浮遊の魔術・アイテム禁止

・転移の魔術・アイテム禁止

以上のルールで戦うバトルロイヤル式の戦いである。

巨大な円形のリングに選手の皆が集められる。

するとリングが空中浮遊し高く高く浮かび上がった。

リングの上には白いローブの人物達、恐らく賢者達が見受けられた。


「やっぱりあいつらもでるのか」


「狙いはゼロ君でしょうね。気を引き締めて」


俺の胸中をシルヴィア会長が語る。

まあ誰が相手であろうと場外に叩き落すだけだけど。

俺はシルヴィア会長との特訓を思い出し身震いした。

無論自信がついたので武者震い的なのもあるが、そのあのトラウマが…。

するとアリス達が俺の手をぎゅっと握って来る。


「心配しないでジャック君、私達がついてるよ」


「旦那様のタンク役、上手くこなしてみせるわ」


「婿殿は私が守る。安心してくれ」


彼女達の励ましで手の震えは止まった。

さあ大司祭様、試合を開始してくれ。


「では試合開始!」


大司祭様の宣言でついに掟の戦いが始まった。

すると出撃メンバー中半数はいるだろう大群が俺目掛けて突撃してくる。

俺はメア達タンクヒロインズの手を強く握ると割と本気目に魔術を唱えた。


「みんな吹き飛べ!フォース!」


俺は俺達のチームの周囲に衝撃波の魔術を唱えた。

その魔術で大量の選手たちが死なない程度に場外へ吹き飛ばされていく。

(無論全員ではないが)

俺が狙われるのはわかっていたからな。

これも作戦って奴だ。

一方で場外落ちした選手はビル10階相当の高さから落ちていく。

これは確実に死ぬ、と思ったところで転移の魔術が働き観客席に戻された。


そして各国の選手全員が俺を狙った訳ではなかった。

互いの国の動きを伺う者、長期戦に備え消耗を抑える者達等、

腹に一物を抱えている物も少なくなかった。


「雑魚はみんな吹き飛ばしたぞ!みんな試合再開だ!」


俺が号令を掛けるとタンク役以外のバビロニアの選手達が各所へ散っていく。


「くくく、せっかくの護衛に離れさせるとは、ゼロの賢者とは頭脳までゼロらしい」


白いフードを被った若い男が俺に挑発的な言葉を贈る。

そして配下である戦士や暗殺者達に俺への攻撃を命じた。

しかし…


カキン! 戦士の剣や暗殺者のダガーが弾かれる。


「防護魔術を施してあるんだよ、賢者っていうのは馬鹿なのか?」


「くっ!調子に乗るなよ!バーンフレア!」


若い賢者が中級の炎の魔術を放つ。

メア達を庇うように仁王立ちする俺。

普通の防護魔術なら貫通する位の威力はあったが、

俺の特製防護魔術にそんな物は通じなかった。


「くそっ、タンク役に攻撃対象を変更だ!お前達、行け!」


今度は若い賢者の号令で配下の戦士や暗殺者達がメア達に襲い掛かる。


「それも想定済みさ。みんな、フォーメーションBだ!」


「了解!」


俺の号令でメアは令と組み、アリスは俺と組んだ。

一人なら守りやすいからな。


「タンク役が賢者ゼロから離れたぞ!今がチャンスだ!あいつらを狙え!」


賢者達が令とメアに狙いを定める。

俺とアリスは若い賢者との戦いに集中していた。


「私達もなめられた物だな」


令が刀を抜く。

刃の向きを変えみねうちの準備に入った。


「まあこんな可愛い美少女が強いとかありえないでしょ」


メアが両手に魔力を込める。


「我々は国から選ばれた精鋭だ!貴様等小娘に負ける等―」


と戦士の一人が息巻いた瞬間、メア達は背後に回っていた。


「これでも一応学園での実技成績は良いのだがな」


「それに旦那様の補助魔法で身体能力やらなんやらも強化されてるしね♪」


「「はあああああああああああああああ!!!」」


メアの火球が戦士達を吹き飛ばし、令がそれを場外に吹き飛ばした。

配下の戦士達はもういない。

残るは若い賢者ただ一人である。


「くそっ、これだから低脳連中と組むのは嫌なんだ!」


「低脳って…一応お前の仲間だろ?」


「仲間?あんな奴等駒だよ駒!お前だってタンク役にしてるだろ!」


その言葉に苛ついた俺は、最大火力の最上位火炎魔術を、

若い賢者すれすれに当たらない様に繰り出した。


「ひっ…」


「次は燃やすぞ」


「で、でも殺したら失格になるんだぞ!?」


「知った事か」


「く、くそ!バーンインフェルノ!」


「失せろ!バーン!」


俺は若い賢者の最上位の炎の魔術を最下級の炎の魔術で相殺した。

そして若い賢者はその衝撃で場外に吹っ飛ばされていった。


「ありがとう、ジャック君」


「スカッとしたわよ旦那様」


「さすが婿殿だ」


さあ残るは強敵ばかり、今後どう戦うかよく考える俺だった。


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