第57話傭兵王女と力の賢者
俺は若い賢者を倒し周囲を見渡した。
すると大柄な白いローブを着た男が現れた。
こいつも賢者だと言うのか?
「俺の名はゲーティス、力の賢者と呼ばれている。お前がゼロか?」
「そうだけど…俺と戦う気か?」
「そのひょろい筋肉では俺に敵いそうには無いが仕方ない、戦ってやろう」
「仕方ないならあたいの相手をして貰おうか」
その声の主は傭兵王女のミーナだった。
―
ミーナは力の賢者の前に立ち塞がった。
力が有り余ってるとか強い敵と戦いたいとかそういう訳でもあるが、
一番の本心はゼロの役に立ちたいという気持ちからだった。
MPがないからタンク役にもなれないし、せっかくの力のチートの能力も、
せいぜいバビロニア国内のゴロツキを痛めつける程度だ。
最強の大賢者がいる国に外部から攻撃を受ける事はなかったからだ。
ミーナは力を持て余していた上にゼロの役に立てない事に不満を感じていた。
雇い主以前に恋人同然の好意を持ってる相手だ、なんとか役に立ってみたい。
そう願っていた。
そしてそのチャンスが目の前に訪れたのだ。
「ゼロ、あんたは下がってな。このデカブツはあたいが相手する」
「今度は女か。面倒だ、束になってかかってこ―」
「うらっ!」
ミーナは手持ちの大剣をバットの様に軽々と何度も何度も敵に叩きつける。
周囲の取り巻きは場外に吹き飛ばされ、力の賢者もガードに専念していた。
「これでも女だから弱いって?舐めんじゃないよ!」
「さっきの言葉は取り消そう。久々にやりがいのある相手にありつけた」
今度は力の賢者がその巨大な拳で素早く且つ強力なラッシュをミーナに振るう。
一方ミーナも大剣の腹でその拳を受け止めている。
要はさっきの逆だ。
そして力の賢者の拳はついにミーナの大剣を打ち砕いた。
「くっ!」
「終わりだな、女!」
力の賢者の拳がミーナに襲い掛かる。
しかしその拳をミーナは片手で軽く受け止めた。
「言い忘れたけどあたいは異世界人なんだ。力のチート持ち」
「俺の拳を止めただと!?」
「それにあんたの拳、魔術で強化してるんだろ?それでこれならあんたに勝ち目はないね」
力の賢者はフードを取り、その怒りの形相を現した。
「黙れ、メス豚ァ!!!」
「あんたじゃ相手にならないね」
ミーナは力の賢者の攻撃を軽くかわすと、みぞおちにワンパンを決めた。
「くはっ!?」
地面に膝を付き倒れ込む力の賢者。
「よいしょっと」
ミーナは力の賢者を持ち上げると場外にぶん投げた。
「(どうだいゼロ、少しは役に立てたかい?)」
ミーナはゼロに誇らしくガッツポーズをした。
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