第48話大賢者と妹(魔王)

「嘘だろ…」


新魔王のマーリンは傷こそついているが瀕死という訳ではない。

今彼女は俺の前でガン泣きしている。

肉体的ダメージより、精神的ダメージの方が大きかったらしい。

俺は恐怖しながらもマーリンに少し近付いた。


「な、なあ、負けたって事は俺達の勝ちって事でいいんだよな?」


逆切れして反撃されたらもう終わりだが、

俺はこの少女の勝負へのこだわりを期待して声を掛けた。

マーリンは涙ぐみながら俺の方を向き答えた。


「うん。だから私の事好きにしていいよ、お兄ちゃん」


「じゃ、じゃあ俺の仲間になってくれないか?」


「……」


やはりダメか…しかしこの沈黙嫌すぎる!

プレッシャーが半端ないぞ!?


「いいよ、お兄ちゃんのお嫁さんになってあげる」


「そうかそうか、そりゃよかっ…てえええええええ!?」


話が飛躍してないか?

俺は仲間って言ったよな?

なぜそうなる?


「ハ、ハーレムの一員でいいなら…」


「ハーレム?あ、本当のお兄ちゃんがやってた奴だね。沢山お嫁さんがいるんでしょ?」


「あ、ああ。それだよ…」


一々心臓に悪いなぁ…しかし前魔王の奴ハーレム築いてやがったのか。

まあ男の夢だもんな、ハーレムは。


「じゃあこの勝負は俺の勝ちって事でいいかな?」


「うん、いいよ」


少女はあどけない笑顔で答える。

四天王の内二人も仲間にしたし、魔王との勝負も一応勝った。

これで俺の名声は限りなく高くなったはずだ。

シルヴィア会長もこれで文句はないだろう。


「それはいいけど、今度は向こうから攻めて来るかもね。警戒すべき脅威だから」


「え、何それは」


「これだけの戦力を抱えているんだもの。大陸制覇位余裕でしょ、その気になれば」


シルヴィア会長がまたまた俺に難題を突き付けたのであった。

ハーレム王への道はまだまだ遠い…


―大賢者用寝室


「ふあああああああ、疲れた。今日はもう寝よう…ん?なんか布団の中がもぞもぞするぞ?」


まさか誰かが夜這いに来たんじゃないだろうな…

うーん、これこそハーレムの醍醐味。

俺はにやけ面で布団をめくった。


「あ、お兄ちゃん…寝ちゃうの?」


「(こいつは新魔王のマーリン!)」


「えへへ、一緒に寝ようと思って来たんだ。駄目じゃないよね?」


「(ここで断ったら大変な事になるぞ…)」


俺は意を決して答えた。


「い、いいよ…」


「やったあーーー!じゃあ何して遊ぶ?魔術バトル?チャンバラごっこ?」


「い、いやもう寝よう。良い子は寝る前は遊ばないんだ(この子の場合本気でやりかねないから困る)」


「ふーん、まあいいや、じゃあおやすみ…Zzzzzz」


この場を何とか凌いだ俺だったが、今後は何か対策を考えないと…


「ヒロ~、一緒に寝よ~」


酒臭いな…酔ってるな姉貴。

しかしこれは好都合。

物怖じしない性格の姉貴なら、マーリンをなだめて一緒に寝てくれる筈。


「という訳で姉貴、マーリンの世話係任せてもいいか?」


「OK牧場~。じゃあおやすみ~」


姉貴が俺のベッドに入るのを確認すると俺は床で寝た。

しかしこれからはそうはいかない。

今後マーリンには姉貴の部屋に行って貰わねば…しかし大丈夫かなぁ。

等と心配をする俺だった。

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