第47話大賢者と新しい魔王
「魔王国を属国にか…悪くない話だな」
「ほっ、これで肩の荷が下りたわい―」
四天王が一人、魔導士ジェロームが安堵したその時である。
「冗談じゃないわ!」
「ぎゃあああああああああ!?」
強力な魔術の炎がジェロームを焼き尽くす。
それを放ったのはまだ年端もいかない少女であった。
「人間との戦争をやめたら殺し合いができなくなっちゃうじゃない!」
物騒な台詞を吐いたこの少女こそ一億年生きた吸血鬼にして
新魔王のマーリンである。
その姿はあどけないお人形の様な金髪の少女であったが、
溢れんばかりの魔力をかもしだしていた。
近くにいた魔王の臣下の話によると彼女は非情に残忍且つ好戦的な性格で、
その魔力は四天王が束になってかかってもかすりもしない程であると言う。
「という訳で遊びましょ、大賢者のお兄ちゃん♪」
新魔王マーリンは雷の槍を手に持つとそれを何本も投げて来た。
俺は浮遊の魔術を唱えると、MPタンクのヒロイン達と一緒にマーリンに急接近する。
「これだけ近付けばその魔術はつかえないだろう!」
「今度はチャンバラごっこだね!負けないんだから!」
マーリンは異空間から血で出来た剣を取り出した。
こちらも転生剣リンを構え万全の態勢をとる。
「いくぞ!」
「はあああああああああああ!」
しかし突撃したのはマーリンのみ。
意思のある剣であるリンは自分だけでも動けるので、
俺が動く必要はないのだ。
「今だ!みんな頼む!!!」
俺がヒロイン達に合図すると皆が恥ずかしがりながら俺に抱き着いて来た。
そして皆が俺の顔にキスをした。
接触による魔力供給と興奮による魔力増強の合わせ技である。
普段の魔力では勝てないと悟った俺はこの一撃に賭ける事にした。
「決めちゃってよ、旦那様!」
「婿殿ならやれる!」
「ジャック君、頑張って!」
「ゼロ君…いえ、なんでもないわ」
「私まで巻き込まないでよね!剣だけど生きてるんだから」
「うおおおおおおおおお!悪しき魔王よ!滅びろ!!!」
俺は渾身の魔力を振り絞り魔術を唱えた。
属性とかそういう細かい事を超越した、
超純粋且つ超強力な魔力砲がマーリンに直撃した。
大賢者の全力である。
これでダメなら人類は終わりだろう。
魔王城の瓦礫に生き埋めになったマーリン。
瓦礫は動かない。
俺達の勝利が今確定した。
「やったあああああああああ!!!勝ったぞ!!!」
俺は柄にもなく大声で勝利宣言をした。
周囲のヒロイン達は気絶している。
「やったぞ、メア、御門先輩、アリス、シルヴィア会長、リン。俺達は勝ったんだ!…ん?」
ガシャ…
今物音がしなかったか?
いや、まさか、まさかな…
「ええええええええええええええええん!!!負けちゃったよぉおおおお!」
「嘘だろ…」
新魔王マーリンはまだ生きていた。
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