第36話大賢者と現代からの帰還

俺達は公園に隠してあった、次元移動装置「ゲート」を起動させると、

輪の中の鏡面の様な水面の様な空間に手を伸ばした。

さあいよいよ異世界に戻る時が来たのである。

余計なお荷物も一緒だけどな!


「失礼な。誰のおかげでここで生活できたと思ってるの?」


この女の名は詠美子、35歳。

俺の転生前の姉である。

現代では彼女に色々世話になった為、異世界行きを断る事ができなかったのだ。


「いざ行かん、異世界へ!」


俺よりも先にゲートを潜り抜けた姉貴。

その姉貴が見た物はまるでRPGの世界の様な中世時代のファンタジーな街並みだった。

そこはバビロンの中央広場である。


「なにこれ…すっごーい…」


どうやら姉貴は言葉も出ない様である。

まあ当然の反応だろう。


「で、あんたはここで何やってるの?冒険者?」


「一応国王やってるけど」


「ふーん、国王ねぇ…国王!?王様って事!?」


ふふん、見直したか。

俺はこの姉貴を見返してやれてようやく満足できた。

しかしそれもすぐに打ち砕かれる事になる。


「ていう事は私は王族になるのよね?やったー!」


自分の事しか考えていない姉だった。


―マリーの錬金術工房


「こらー、待ちなさーい!」


「待てと言われて待つ奴はいませんよ!」


工房に行くと錬金術師のマリーがポーション使いのフィールを追いかけまわしていた。


「おいおい何が原因か知らんが喧嘩はよせよ」


しかし事情を聴いて俺の顔つきも変わる。

どうやら機械に効くポーションを頼まれてフィールが作った所、

機械特攻の爆弾ポーションを作ってしまったらしい。


「全面的にフィールが悪い、謝れ」


「ご、ごめんなさい…」


「私もあなたの能力を考えず頼んじゃって悪かったわ」


「よしこれにて一件落着だな」


「早くお城に行きましょう旦那様、お背中流しますわ」


「(御城かぁ…どんなに巨大な建物なんだろう)」


期待に胸を寄せる姉貴だったが、それは打ちのめされた。

そこはただの温泉宿だったのだ。


「あ、でも温泉はいいわね。美容にも効きそうだし」


「詳しくは知らんけど勝手に入ってていいぞ」


「何言ってるの?あなたも入るのよ、一緒にね」


「ええええええええええええええええええ!?」


絶叫したのは俺ではなくメア達だった。


「お姉様、幾らご姉弟とはいえ不健全です!」


「メアに同感です。姉上は恥じらいという物はないのですか?」


「お姉さんは私達と女湯に入りましょうよ…」


詰め寄る3人に物怖じせず姉貴が答える。


「大丈夫だって、水着着てるから。あの子の裸も子供の頃から見慣れてるし」


「で、でも…」


「そんなに気になるならあなた達も一緒に入ったら?」


「え!?」


等と皆が議論してる間に俺は速攻で風呂に入ろうとする。

すると姉貴が俺の肩を掴んでこう言った。


「終わるまで待ってなさい。逃がさないから」


「あっはい」


最強の賢者でもこれは勝てない、そう思った。

無論この後無茶苦茶流しっこした。

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