第32話大賢者と姉
見慣れない公園から一歩出るとビルの並ぶオフィス街に出た。
といっても裏路地で、そこには居酒屋などの小さな飲食店が並んでいる。
「ここが現代なの?旦那様」
「この様な巨大な建造物…現代人とは巨人なのか?婿殿」
「ジャック君、アリス、なんか怖いよ…」
俺は3人を安心させる様に手を掴む。
すると警察官らしき人がこちらに近付いてくる。
そういえば今は夜中だっけ…補導されるのは非常にまずい。
そう思った俺は、アテのある場所に転移した。
転移先は暗い夜道の道路。
街灯も少なく、車も通行人もいない。
「この辺にいるはずなんだが…」
俺は周辺を見渡すが誰もいない。
すると足下にコツンと何かが…いや、誰かが当たる。
スーツ姿で乱れた黒髪、OLさんて奴だ。
「姉貴、酔いつぶれてんの?」
「ヒロじゃないの~、地獄から戻ってきたの~?ヒック」
ヒロというのは俺の転生前の名前。
ひろゆきだからヒロだ。
そしてこの女性は俺の姉貴。今は35歳位だろうか?
名は詠美子(よみこ)という。
「あのエロ親父ったら私のケツを触ったのよ~ヒック」
黙っていれば美人なのに勿体ないなぁと思いつつ俺は姉貴を担いだ。
「姉貴、家はどこ?」
「うーんとね~わかんなーいwwwぐははははw」
「仕方ない、記憶の精霊よ!」
俺は動揺しているメアの手を取ると姉貴の頭にも手をやり、
記憶の精霊を呼び出し姉貴の住所を探った。
「ここからそう遠くはないな」
俺は姉貴を抱きかかえると、姉貴の家へと急いだ。
―姉貴(詠美子(よみこ))の家
ガチャガチャ
ドアノブを弄るが当然ロックされている。
俺はまたメア達の手を握ると鍵開けの魔術を唱えた。
「ロックピック!さあ開いたぞ」
俺達は姉貴もろとも部屋に入る。
中は中々に広いが、女性の部屋とは思えない程汚部屋だった。
俺達は姉貴をベッドの上に寝かせると、起こさない様に掃除を始めた。
―3時間後
「ふいー、こんな物か」
「異世界のお掃除も楽しいね、ジャック君」
さすが家庭的で女子力の高いアリスだ。
ほぼ一人で部屋を片付けてしまった。
時間は朝7時。
姉貴が何時出勤かは知らないが起こして上げた方がよいだろう。
「姉上殿、起きて下さい」
御門先輩が姉貴の身体を揺する。
するとうとうとと半分寝ぼけ状態で目を覚ました。
「お姉様、おはようございます。」
今度はメアが朝の挨拶をする。
「レイゾウコでしたっけ?その中の物を使わせて頂きました」
アリスが冷蔵庫の食品を使いサンドイッチを作った。
姉貴は寝ぼけながらもそれを頬張る。
「おい、いい加減に起きろよ姉貴」
ぐにゃ~と姉貴の頬を引っ張る俺。
「はにふるのよ!(なにするのよ!)」
ようやく目が覚めたご様子。
さあ後はこの部屋を使わせてくれるよう交渉するだけだが…
「よう姉貴、俺だよ、ひろゆきだよ」
「ヒロ!?あんた死んだんじゃ―」
「確かに死んだけど、異世界に転生してたんだ」
「へぇーそうなんだぁ~て信じる訳ないでしょ!?何が目的?お金?それとも私の身体?」
「仕方ない、メア、魔法を見せてやってくれ」
「はい」
俺は証拠として魔法を見せることにした。
しかし俺のでは威力が高すぎるので、メアに最下級の魔法を唱えて貰った。
「いいですか、お姉様。バーン!」
メアが魔術を唱えると手から炎が現れた。
それを見た姉貴は目を丸くしていた。
「どうだ姉貴、信じたか?」
「う、うん…とりあえず会社行ってくるから自由にしていていいわよ…」
姉貴は見てはいけない物を見たかの様に脱力すると、ふらふらと家を出て行った。
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