第30話大賢者と無敵のボス

俺達が4階に辿り着くとそこには何もなかった。

外から見た高さ的に10階位はある様に見えたのだが…

等と考えていると天井から声がする。


「これ以上君達を進ませてもクリアされるのは時間の問題だからね。色々と省かせて貰うよ」


「じゃあここのダンジョンコアをくれ。そしたら出て行く」


「それはできない相談だ。その代わりこの迷宮のラスボスである僕が相手をしよう」


ダンジョンの中央にあるエレベーターらしき場所が稼働する。

しばらく待っていると全身鎧に身を包んだ不気味な騎士が現れる。


「彼は僕の代役だ。彼を倒せばダンジョンコアをくれてやろう」


「その勝負乗った!バーン!」


俺は不意打ちで炎の魔術を放つ。

不気味な騎士は一瞬で灰になった。


「さあ、勝負はついたぞ!ダンジョンコアをくれ!」


「くくく、それはどうかな?」


灰になったはずの不気味な騎士はなんと灰を自身でかき集め元に戻ったのだ。


「くそっ、バーン!」


俺は何度もそいつを灰にしたが不気味な騎士は瞬時に自己再生していく。

そして段々と俺達との距離を詰めていった。

そいつは次の俺の魔術を避けると後ろにいたメアを剣で串刺しにする。


「や、やめろ!」


次はアリス、そして御門先輩も抵抗虚しく倒れて行った。


「ヒール!」


俺は重傷だったメアから先に治療した。

当然アリスと御門先輩も回復する。

俺は気絶した3人の手を掴むと再び魔術を唱えた。

灰になる不気味な騎士。

俺はそいつが自己再生する前にそいつの灰をポーションの空瓶に詰め込む。

これを繰り返しようやく不気味な騎士を完全に瓶詰めにすることが出来た。


「アイスコフィン!」


俺は絶対零度の魔術を唱えるとその瓶をカチンコチンに凍らせた。

ただ凍らせた訳ではない。

絶対零度で凍らせたのだ。

壊す事も溶かす事もできない、最強の牢獄だった。


「俺は今無茶苦茶機嫌が悪いんだ、さっさとダンジョンコアを寄越せ」


いつもの陽気さは消え完全にシリアスモードに入った俺。

自分の恋人が殺されそうになったんだ。

怒るのも当然だろう。


「わ、わかった!」


ダンジョンマスターはエレベーターを通じてダンジョンコアを渡す。

俺がそれを取るとダンジョンは消え、俺達は入り口前に戻されていた。


「悪かったみんな、俺が油断してたから…」


「旦那様は悪くないわよ。それに無事倒してくれたじゃない」


「婿殿、あやつは只者ではなかった。それだけの事だ」


「ジャック君、責任感じてるんならこれからデートにいかない?」


「え?」


アリスが場に合わない発言をする。

恐らく本気だろう。


「ちょっと待ちなさいよ!それなら旦那様、私行きたい所が―」


「婿殿、疲れたであろう。温泉で一緒に背中でもななな流さないか?」


「もう勘弁してくれ…」


笑いながら帰路につく俺達だった。

いつまでもこんな日が続くといいなぁ…

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