第25話大賢者と剣に転生した少女

「婿殿、剣を習う気は無いか?」


「どうしたんですか御門先輩突然に」


「いや、我々がタンクになれない時の緊急処置として使えた方が良いかと思ってな」


「なるほどなぁー剣かぁ(痛そうだし面倒くさいなぁ)」


「婿殿さえよければ、その、私が稽古をつけてやっても…ていない!」


俺は訓練なんてまっぴらごめんだ。

俺は楽して勝ちたいだけなんだ。

しかし先輩が言う事も最もだ。


「あ、そうだ。チートな剣を探して使おう。それが一番楽だ」


俺はさっそく錬金術師のマリーの元を訪ねた。

探すより作る方が楽だからだ。

答えはNo。

マリー曰く名剣は作れても使い手が未熟ではなまくら同然、らしい。

しかたない、探すか。


俺は御門先輩から逃げつつMPタンクになれる少女を探す。

丁度アリスを見つけると、頼み込みMPタンクになって貰った。

ネットワークと言う広域探査呪文を唱え目的の物を見つけると、

転移の呪文を唱えそこに向かった。


そこは人っ子一人いない森の中だった。

辺りを見回すと、その中心らしき所に台座に刺さった剣がある。

俺は剣に手をやるとそれを抜いた。

どうやら選ばれし者しか抜けないとかそういう類の剣では無いらしい。


「本当にこの剣チートなのか?」


「MP0とか…とんだゴミに拾われちゃったわ」


「アリス…何か言ったか?」


ありすは何も言ってないと首を横に振る。

無論女性の声だから俺でもない。


「私よ私、あなたの持ってる剣」


「剣が喋ったあああああああああああ!」


「ちょ、いきなり大声出さないでよね」


「ジャック君どうしたの?」


「剣が、剣が、しゃべったんだ!」


「???私には何も聞こえなかったよ?」


「え?」


「彼女に聞こえて無くて当然よ、テレパシーで話しかけてるんだから」


「テ、テレパシー???」


「私の名前は紫藤凛。リンでいいわよ」


「日本人ぽい名前だけどもしかして転生者?」


「まあそんな所ね。で、あなたが持ち主になってくれるのかしら?」


「一応そのつもりだけど…」


「あなたMPだけじゃなくて剣術もレベル0じゃないの。呆れたわ」


「うるさい!チャンバラは嫌いなんだよ!」


「ジャック君、誰とお話しているの?」


アリスが変人を見る目でこちらを見ている。

やばい、もう少し声を抑えなければ。


「しょうがないわね。私が代わりに戦ってあげる。その代わり」


「その代わり?」


「あの子、アリスと言ったかしら?彼女のMPが欲しいわ」


「アリスの?まあ頼むだけなら…」


「この剣にMPを注ぎこめばいいんだね?ジャック君の時みたいに」


アリスは快く了承すると剣に触れ、自身のMPを剣に注ぎ込んだ。

そのMPはジャック以外にはドス黒い暗黒のMPだった。

リンは思わず刀身を震わすと、アリスを自身から遠ざけた。


「きゃっ!」


「リン!何するんだ!」


「だってこの子のMPやばいわよ!?」


「リンって…剣に女の子の名前を付けたの?」


「ままてアリス、リンていうのは彼女の本名で―」


アリスは魔力の剣を精製すると俺に切りかかって来た。

俺は転生した剣、リンを振るうとそれを弾き飛ばした。


「え?俺がやったのか?」


「鈍いわね、私がやったのよ。しっかしこのMP黒くて重いわね…」


リンは俺に愚痴ると次はあらぬ方向に俺を連れて行った。

俺は周囲を見渡すといつの間にかゴブリン達に囲まれていた。

今のアリスにMPタンクになって貰える訳が無い、どうする俺!


「MP充電完了!さて、暴れるわよ!」


「え、おいおいおいいいいいいいいいいい!!!!」


「あなたは暴れなくていいの!体の力を抜いてリラックスしてて!」


俺はしかたなくリンに体を預けると剣であるリンがありえない速度でゴブリン達を切り倒していく。

あれだけいたゴブリンが今はもう1匹だ。


「さあ、あいつで最後よ!」


リンは自身である剣に魔力を込めると、青白く光る刀身でラストゴブリンを倒した。


「さーて、後はアリスちゃんにちゃーんと説明しないとね、ジャック?」


この後俺は小一時間掛けてアリスを説得した。

自ら戦えるチートな剣を手に入れたがなんとそいつは意思があり、MPが無ければなまくら同然。

貯蓄できる魔力量も普通の為本当にピンチな時以外は使わない方がいいだろう。

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